以前の研究まとめでも何度か紹介しましたが、近年、世界中で「若年性大腸がん(Early-Onset Colorectal Cancer: EOCRC)」の増加が大きな問題となっています。
従来、大腸がんは中高年に多い病気と考えられてきました。
しかし現在では、40代以下、さらには30代で診断されるケースも増加しており、その背景として「食の欧米化」や「超加工食品(Ultra-Processed Foods: UPF)」の影響が強く疑われています。
今回紹介するのは、2024年に医学誌「Cancers」に掲載された世界的大規模研究と、2023年に発表された超加工食品と大腸がんリスクに関するシステマティックレビュー&メタ解析です。
これらの研究では、加工食品中心の食生活や西洋型ライフスタイルが、大腸がんリスク増加と関連する可能性が示されました。
特に、超加工食品摂取量が最も多い群では、大腸がんリスクが約26%高かったと報告されています。
これらは主に観察研究であり、「超加工食品が直接大腸がんを引き起こす」と断定したわけではありませんが、食習慣とがんとの関連性において一定の信頼がおける結果となっています。
以下に研究の内容をまとめます。
参考研究)
・Association between ultra-processed food intake and risk of colorectal cancer: a systematic review and meta-analysis(2023/07/06)
世界的に増加している若年性大腸がん
2024年に発表された研究では、1990〜2019年までの約30年間における大腸がん発症率が解析されました。
研究チームには、Harvard Medical School関連研究者らが参加しており、EU15+諸国と世界全体の大腸がんデータが比較されています。
その結果、50歳未満の若年層で大腸がん発症率が著しく増加していることが明らかになりました。

特に男性では、1990年から2019年にかけて発症率が約75.9%増加し、女性でも27.7%増加していました。
この傾向はアメリカだけではなく、イギリス、カナダ、オーストラリア、フランス、ドイツ、スウェーデンなど、多くの高所得国で共通して確認されています。
研究者らは、その背景として「西洋型ライフスタイル」の影響を強く疑っています。
「超加工食品」と

今回の研究で重要なのが、「超加工食品(UPF)」という概念です。
超加工食品とは、単なる加工食品ではなく、人工甘味料、乳化剤、香料、着色料、保存料など、多数の工業的添加物を含み、高度に加工された食品を指します。
代表例としては、以下の者が挙げられます。
・ポテトチップス
・清涼飲料水
・菓子パン
・インスタント食品
・加工肉
・冷凍ファストフード
・エナジードリンク
研究では、「NOVA分類」という食品分類システムが使われました。 (PMC)

NOVA分類とは、食品を「どれだけ加工されているか」で4段階に分類する国際的な分類法です。
浙江病院のメタ解析が示した結果
2023年に発表されたシステマティックレビュー&メタ解析では、46万2292人、大腸がん1万8673例を含む7研究が統合解析されました。
メタ解析とは、複数研究を統合し、全体としての傾向を分析する研究手法です。
単独研究よりエビデンスレベルが高いと考えられています。
その結果、超加工食品摂取量が最も多い群では、大腸がんリスクが26%高いことが示されました。

研究では特に、加工肉、糖質飲料、ファストフード、高脂肪食品などが関連食品として挙げられています。
また、先進国で関連性がより強くみられたことも特徴でした。
なぜ超加工食品が問題視されるのか
研究者らは、超加工食品が以下のような経路で大腸がんリスクに関与する可能性を指摘しています。
①腸内細菌叢の変化
代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(肥満が主な原因)からくる腸バリア機能不全について言及した研究の一部抜粋 腸内細菌叢(Gut Microbiome)とは、腸内に存在する細菌群のことです。
超加工食品中心の食事では、食物繊維不足、添加物過剰、糖質過多などによって腸内環境が悪化する可能性があります。
腸内環境悪化は、慢性炎症、免疫異常、発がん促進と関係する可能性が指摘されています。
②慢性炎症
超加工食品の摂取量が多い人ほど、多くの健康問題リスクが高い傾向が一貫して見られた(特に心血管疾患)という旨のアンブレラレビュー 慢性炎症とは、弱い炎症状態が長期間続くことです。
超加工食品には、過剰糖質、トランス脂肪酸、一部添加物などが多く含まれることがあり、これが炎症促進に関与する可能性が指摘されています。
炎症が長期化すると、DNA損傷が蓄積し、がん発生リスク上昇につながる可能性があります。
③肥満との関連
IARCによる肥満とがんとの関連性に関する報告書 超加工食品は一般的に高カロリーで満腹感が低いため、過食を招きやすいとされています。
肥満は現在、大腸がん、乳がん、肝がん、膵臓がんなど複数がんのリスク因子として知られています。
実際、世界保健機関(WHO)関連組織(IARC)でも、肥満とがんの関連性は強く警告されています。
近年の研究でも関連が続々報告
近年は、若年層に特化した研究も増えています。
2025年に報じられた研究では、超加工食品を1日9〜10サービング摂取していた若年女性では、大腸ポリープ(腺腫)のリスクが45%高かったと報告されました。
つまり、「超加工食品 → すぐがん」ではなくても、“前がん病変”との関連性はかなり疑われ始めている状況です。
ただし完全な証明ではない点は留意すべき点です
現在の研究は、「関連性はかなり強く示唆されている」という結果がでた一方で、「完全に証明された」とまでは言えない段階です。
理由としては、主に以下が要素が変数として影響を与えるからです。
・食事研究は自己申告誤差が大きい
・運動習慣の影響を完全除去できない
・喫煙や飲酒の影響が混在する
・遺伝要因を完全に分離できない
研究者ら自身も、「さらなる大規模前向き研究が必要」と慎重な表現を用いています。
それでも“方向性”はかなり一致している
重要なのは、別々の国・研究者が行った研究でも、かなり似た結果が繰り返し出ていることです。
現在の研究群では、超加工食品が多い、食物繊維が少ない、肥満率が高い、運動量が少ない傾向が見られる社会ほど、大腸がん、若年性大腸がん、心血管疾患、糖尿病などの慢性疾患が増える傾向がみられています。
2024年のアンブレラレビューでは、超加工食品が32種類の健康悪化と関連していたと報告されました。
アンブレラレビューとは、多数のメタ解析をさらに統合する、非常にエビデンスレベルの高い大規模なレビュー研究です。
今回の研究群は、「ある食品を食べたら必ずがんになる」と示したものではありません。
しかし、超加工食品依存、野菜不足、食物繊維不足、運動不足、肥満などが長期的ながんリスクに関与する可能性は、かなり強く示唆されています。
特に若い世代では、「まだ若いから大丈夫」と考えがちですが、現在は40代以下の大腸がん増加が世界的問題になっています。
そのため、血便、慢性的腹痛、原因不明の体重減少、排便習慣変化などが続く場合には、年齢に関係なく医療機関受診が重要というのは言わずもがなです。
日常生活で意識したいポイント

現在の研究を踏まえると、以下のような生活習慣は大腸がん予防に役立つ可能性があります。
・超加工食品を減らす
・野菜・豆類・全粒穀物を増やす
・食物繊維を十分摂る
・適度な運動を継続する
・肥満を防ぐ
・過度な飲酒を避ける
・喫煙を控える
ただし、極端な食事制限を行う必要があるわけではありません。
研究者らも、「完全排除」より、“全体として食事バランスを改善すること”
が重要だという意見が多数見られます。
個人的には、病気でないなら多少甘いもの程度を食べる分には良いかもしれないと考えています。
問題なのは病気の傾向があるにも関わらず、悪食を続けることです。
日々の積み重ねが慢性疾患を呼び起こすと同時に、健康的な食事が病気を遠ざけるものです。
知っていれば治せますが、知らないと苦しみ続ける……。
この研究まとめが誰かのためになってくれと嬉しいものです。
まとめ
・超加工食品摂取量が多い群では、大腸がんリスクが約26%高かった
・若年性大腸がんは世界的に増加しており、“食の欧米化”との関連が疑われている
・ただし現在の研究は主に観察研究であり、因果関係の完全証明には至っていない
・一方で、食事とがんおよび慢性疾患との関連性は以前と高いままである




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