近年、アスリートから一般のフィットネス愛好者まで、多くの人々の間で注目を集めている新しいトレーニング法があります。
それが「ゾーン2カーディオ(Zone 2 cardio)」と呼ばれるものです。
ゾーン2は、運動の強度や運動時の心拍数の目安を表した指標で、ゾーン1を「非常に軽い運動(最大心拍数50〜60%)」、ゾーン5を「非常にきつい運動(最大心拍数90〜100%)」とした際の、2番目に当たります。
ゾーン2は、最大心拍数の60〜70%程度の強度で運動することを指し、会話ができるていどのジョギングやサイクリングのような軽い運動を指します。
脂肪燃焼や持久力の向上、心血管の健康維持に優れた効果を発揮するとされています
カーディオは、「cardiovascular(心臓血管の)」という言葉に由来した、心臓や肺の機能を高めるための「有酸素運動」のことです。
このゾーン2カーディオには、脂肪の効率的な利用から慢性疾患の予防、さらには持久力の強化やケガのリスク低減まで、さまざまな健康効果が報告されています。
本記事では、科学情報プラットフォームであるHealthの記事を参考に、ゾーン2カーディオが、身体にもたらす影響を4つの項目で紹介します。
参考記事)
・4 Things That Happen to Your Body When You Do Zone 2 Cardio(2025/10/23)
参考研究)
・What Is “Zone 2 Training”?: Experts’ Viewpoint on Definition, Training Methods, and Expected Adaptations(2025/02/26)
1. 脂肪を効率的に燃焼し、エネルギーを節約する

ゾーン2カーディオは、体は主に脂肪を燃料源として利用し、より効率的にエネルギーを生み出す仕組みを整えることができます。
アメリカ・ユーロス・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のスポーツ医学フェローであるKimberly Burbank医師は、「このレベルの運動を続けることで、細胞内でエネルギーを生み出す構造であるミトコンドリアの数が増加し、脂肪燃焼の効率が高まる」と説明しています。
ミトコンドリアは細胞の“発電所”とも呼ばれ、エネルギー代謝の中心を担っています。
そのため、この機能が強化されることで、より長時間の運動にも耐えられる体へと変化していくのです。
さらに、ゾーン2カーディオを継続すると、高強度運動時に必要となる糖質(炭水化物)を温存できるという利点もあります。
これにより、後半のスプリントや筋トレなどの激しい活動に備え、エネルギー切れを防ぐ効果が期待されます。
2. 慢性疾患の予防に役立つ

ゾーン2カーディオは、他の運動と同様に、長期的に取り組むことで糖尿病や心疾患などの慢性疾患リスクを軽減する可能性があります。(Glucose, exercise and insulin: emerging conceptsより)
特に注目されているのが二型糖尿病の予防効果です。
Burbank医師によると、ゾーン2カーディオは骨格筋によるグルコースの取り込みを活性化させる働きがあるといいます。
これは、筋肉が血液中の糖を取り込んでエネルギーとして利用する過程であり、この機能が高まることで、インスリン感受性の改善が見込めます。
つまり、体がインスリンに対してより敏感に反応し、少ないインスリン量でも血糖値をコントロールできるようになるのです。
さらに、クリーブランド・クリニックの運動生理学者であるChristopher Travers氏は、ゾーン2カーディオには心臓機能の強化にも効果があると指摘しています。
具体的には、運動中に血流が促進され、体内での赤血球の生成が増加するとされています。
赤血球は筋肉や臓器に酸素を運ぶ重要な細胞であるため、その量が増えることで持久力の向上と代謝機能の改善が同時に得られるのです。
3. 持久力を高め、長時間運動に強い体を作る

Travers氏は、「ゾーン2カーディオは、持久力を高める最も効果的な方法の一つであある」と強調しています。(Is the VO2max that we measure really maximal?より)
これは、このトレーニングによってミトコンドリアの数と効率が同時に向上し、体がより長時間の活動を持続できるようになるためです。
Burbank医師も、「ミトコンドリア機能の改善により、体はより多くの酸素を効率的に利用できるようになり、結果として疲れにくくなる」と述べています。
ただし注意点として、Burbank医師は「ゾーン2だけに偏った運動は、高強度の活動(スプリントや重量トレーニングなど)への適応力を下げる恐れがある」と警告しています。
特に、長期間にわたって中強度のみを続けた場合、VO2 max(最大酸素摂取量)の低下やスピード能力の減退につながる可能性が指摘されています。
したがって、理想的にはゾーン2カーディオを他の強度の運動と組み合わせて行うことが推奨されます。
4. ケガのリスクを抑える

ゾーン2カーディオは、筋肉や関節への負担が比較的少ないことから、ケガのリスクを軽減できるという利点があります。(What Is “Zone 2 Training”?: Experts’ Viewpoint on Definition, Training Methods, and Expected Adaptationsより)
高強度トレーニングやジャンプ動作を含む運動に比べ、衝撃が小さいため、筋肉や腱へのダメージが蓄積しにくいのです。
ただし、Burbank医師は「強度が低いからといって、時間や頻度を過剰に増やすことには注意が必要」と指摘しています。
ゾーン2を長時間続けすぎたり、毎日行いすぎたりすると、使いすぎによる障害(オーバーユース障害)が起こる可能性があります。
代表的なものとしては、シンスプリント(脛の痛み)、腱炎(tendinopathy)、膝蓋大腿疼痛症候群(patellofemoral pain syndrome)などが挙げられます。
このため、適度な休息を取り入れながら計画的に行うことが重要です。
ゾーン2カーディオを生活に取り入れる方法
Travers氏は、「持久力、脂肪代謝、心血管の健康を改善したい人にとって、ゾーン2を取り入れるのは非常に良い選択である」と述べています。
この運動では、全身を使ったリズミカルで一定の動作を、比較的長い時間持続することが理想的です。
また、Burbank医師によれば、自分がゾーン2の範囲に達しているかを知るには、「主観的運動強度(Perceived Exertion)」を目安にするのが分かりやすいといいます。
10段階中3〜4程度、つまり「息は上がるが会話は可能」なレベルが目安です。
たとえば早歩きで息がやや弾んでも、まだ会話が途切れずにできる程度であれば、ゾーン2に該当します。
1回のセッション時間は、通常30分前後が目安ですが、トレーニング目的によっては最大120分程度まで延長しても構いません。
また、Burbank医師は「週2〜3回のゾーン2運動を推奨し、その合間に筋力トレーニングや高強度トレーニング(HIITなど)を組み合わせるのが理想的」と話しています。
このバランスの取れたアプローチにより、筋肉・骨の健康、そして無酸素能力の維持が同時に叶うとされています。
まとめ
・ゾーン2カーディオは最大心拍数の60〜70%で行う中強度の有酸素運動で、脂肪を効率的に燃焼させる
・継続することで糖代謝・心血管機能が改善し、2型糖尿病や心疾患のリスクを減らす可能性がある
・筋力トレーニングや高強度運動と併用することで、より健康的で持久力の高い体を作ることができる

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