人工甘味料を多く摂取している人は、認知機能の低下がより顕著な傾向にある

科学
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ヨーグルトや炭酸飲料などの加工食品に広く使われている低カロリー・ノンカロリー甘味料について、新たな研究が注目を集めています。

砂糖の代替として広く普及してきたこれらの人工甘味料が、脳の健康に思わぬ悪影響を及ぼす可能性があるというのです。

 

2025年9月3日に医学誌「Neurology」に掲載された最新の研究によれば、人工甘味料を多く摂取している人々は、認知機能の低下がより速いペースで進む傾向があることが明らかになりました。

 

以下に研究の内容をまとめます。

 

参考記事)

New Study Links 6 Artificial Sweeteners to Faster Cognitive Decline(2025/09/15)

 

参考研究)

Association Between Consumption of Low- and No-Calorie Artificial Sweeteners and Cognitive Decline(2025/09/03)

 

 

人工甘味料と脳の加齢の関係

 

ブラジル・サンパウロ大学医学部によるの研究から、人工甘味料を最も多く摂取している人々の脳は、実際の年齢よりも約1.6年分早く老化していることが示唆されました。

 

この研究では、平均年齢52歳のブラジル人成人12,772人を対象に、食生活と認知機能の関連が8年間にわたって追跡されました。

 

参加者は研究開始時点で、過去1年間の飲食習慣について詳細なアンケートに回答しました。

 

研究者たちは特に以下の7種類の人工甘味料に注目しました。

• Aspartame(アスパルテーム)

• Saccharin(サッカリン)

• Xylitol(キシリトール)

• Erythritol(エリスリトール)

• Sorbitol(ソルビトール)

• Tagatose(タガトース)

• Acesulfame K(アセスルファムK)

 

被験者は摂取量に応じて3つのグループに分けられました。

• 低摂取群:約20mg/日

• 中摂取群:約66mg/日

• 高摂取群:約191mg/日(ダイエット炭酸飲料1缶程度に相当)

  

その後、参加者は言語流暢性テスト、単語記憶、情報処理速度などの認知機能検査を定期的に受けました。

  

  

認知機能の低下と甘味料摂取量

結果から、以下のような傾向が見られました。

• 中摂取群では、記憶と思考力の低下が35%速く、言語流暢性の低下は110%も速い

• 高摂取群では、記憶と思考力の低下が62%速く、言語流暢性は173%速く低下していた 

    

つまり、人工甘味料の摂取量が多いほど、認知機能の衰えが顕著であることがわかりました。

   

さらに重要な点として、この関連は60歳未満の人々で特に強く見られたことです。

   

これは、若年~中年期からの甘味料摂取が、脳の加齢を早めるリスクを持つ可能性を示唆しています。

  

研究を主導したのは、Claudia Kimie Suemoto医師は、「人工甘味料入りの炭酸飲料を飲んだからといって、すぐに記憶障害が現れるわけではない。しかし長期的に摂取を続けることで、脳の老化が加速し、結果的により早期または重度の認知障害リスクを高める可能性がある」と述べています。

 

 

特定の甘味料はより危険なのか?

研究では、7種類の人工甘味料すべてが同じように影響するわけではないことも明らかになりました。

  

Tagatose(タガトース)は認知機能低下との関連が見られなかった一方で、残りの6種類は明確に関連していました。

 

ただし、研究チームのClaudia Suemoto医師は「特定の甘味料が他よりも悪いという証拠は得られなかった」と述べています。

 

 

なぜ人工甘味料が脳に影響するのか?

 

今回の研究は関連を示したにすぎず、人工甘味料が直接的に認知機能低下を引き起こすと証明したわけではありません。

 

ただし、専門家たちはいくつかの仮説を示しています。

   

テュレーン大学医学部のRebecca Solch-Ottaiano博士は、「腸内細菌叢の構成は食事に大きく影響される。人工甘味料の過剰摂取は腸内環境を乱し、炎症を促進する可能性がある」と述べ、腸内環境の悪化が脳機能にも影響する可能性を指摘しています。

  

また、神経科医で栄養学の専門家でもあるDavid Perlmutter医師は、「炎症や腸内細菌の変化は、脳内の免疫細胞であるミクログリアを活性化し、炎症性モードに切り替えることがある。その結果、アルツハイマー病やパーキンソン病などの認知症リスクが高まる可能性がある」と指摘しています。

 

 

糖尿病患者におけるリスクの高さ

今回の研究で特に注目されたのは、糖尿病を持つ人々におけるリスクの高さです。

  

人工甘味料は糖尿病患者が砂糖の代替として摂取することが多いですが、その一方で糖尿病自体が代謝や腸内環境に負担をかけています。

 

Perlmutter医師は「糖尿病によってすでに炎症が高まっている状態に人工甘味料を加えることで、脳内の炎症反応がさらに強まり、認知機能の低下を促進する可能性がある」と説明しています。

 

 

専門家の提言

研究の著者や専門家たちは、人工甘味料の摂取をできるだけ減らすことを推奨しています。

  

ただし、それは単純に「砂糖に戻すべき」という意味ではありません。

 

砂糖の過剰摂取もまた認知症や多くの健康リスクと結びついているためです。

  

Perlmutter医師は「本来の目標は“甘さ全体を減らすこと”にある。加工食品を減らし、食物繊維を多く含む全食品を食べることで腸内細菌を守り、脳の健康を支えることが重要」と強調しました。

  

今回の研究は、人工甘味料が脳の健康に与える潜在的なリスクを示した大規模調査として注目されています。

 

ただし、因果関係が完全に証明されたわけではなく、さらなる研究が必要です。

 

  

まとめ

・人工甘味料の多量摂取は認知機能低下と関連し、特に60歳未満でリスクが顕著でした

・糖尿病患者ではリスクがさらに高くなる可能性が指摘されている

・完全な因果関係は未解明であり、今後の研究が求められている

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