アルコールや砂糖入り飲料が髪の健康に影響する?──世界規模で行われた17件の研究レビューより

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私たちの食生活は、体重や生活習慣病のリスクだけでなく、見た目の印象を左右する髪の健康にも大きな影響を与えている可能性があります。

 

2025年8月にポルト大学が発表した研究によれば、鉄分やビタミンDを適切に摂取することが髪の成長と関連している一方、アルコールや砂糖を多く含む飲料の摂取は脱毛と関連していることが示されました。

 

栄養と毛髪の関係についてはかねてから議論されてきましたが、今回のレビュー研究は、どの栄養素が特に重要であるかをより明確に描き出しているものとなっています。

 

今回はそんな毛髪の研究がテーマです。

 

参考記事)

Alcohol and Sugary Drinks Could Be Thinning Your Hair, Study Finds(2025/09/05)

 

参考研究)

Assessing the relationship between dietary factors and hair health: A systematic review(2025/09/05)

 

 

世界規模で行われた研究レビュー

 

研究では、世界中の17件の研究を対象に分析が行われ、合計61,332人、年齢は7歳から77歳までのデータが含まれていました。

 

そのうち97%が女性参加者であり、これは結果の一般化に一定の制約があることを意味しています。

 

研究の焦点は、「脱毛(alopecia)」や加齢に伴う自然な抜け毛に置かれました。

 

そして取り上げられた栄養素や食品群として、ビタミンDが最も頻繁に調査されており、その他にも鉄分、タンパク質、大豆、アブラナ科野菜(ブロッコリーや芽キャベツなど)、アルコール、砂糖入り飲料、サプリメントなどが含まれていました。

 

その結果、アルコールや砂糖入り飲料の多量摂取は脱毛リスクの上昇と関連し、逆にビタミンDや鉄分の十分な摂取は脱毛の抑制や発毛と関連していたことが分かりました。

 

 

栄養と髪の健康の関係

この研究結果について、クリーヴランドクリニックに所属する管理栄養士のJulia Zumpano氏は、「栄養摂取は脱毛において重要な役割を果たす。今回のレビューは、どの栄養素が特に毛髪にとって重要なのかを明確にする一助になる。」と述べています。

 

一方で、カリフォルニア大学ロサンゼルス校・デイヴィッド・ゲフィン医学部臨床栄養学部門長のZhaoping Li氏は、この研究の限界を指摘しています。

 

大半の研究が横断研究であり、ある時点のデータを集めたに過ぎないため、因果関係を証明できないのです。

 

さらに、研究デザインや解析方法が多様であるため、包括的なメタアナリシスを行うことは「不可能」であると研究者自身も述べています。

 

また、参加者の大多数が女性であるため、この結果が男性にも当てはまるかどうかは不明です。

 

この点は今後の研究で解明が求められています。

 

 

アルコールや砂糖入り飲料はなぜ髪に影響するのか?

 

アルコールや砂糖入り飲料が脱毛に直接関与する仕組みはまだはっきりしていませんが、専門家たちはいくつかの仮説を挙げています。

 

Zumpano氏によれば、これらの飲料は腸内環境や栄養素の吸収に影響を与える可能性があり、その結果、毛髪の健康に必要な栄養素が不足する恐れがあるといいます。

 

例えば、ビタミンDは毛包を形成する細胞の生成に必須であり、鉄分は毛包に酸素を届ける重要な役割を担っています。

 

アルコールや砂糖飲料を多く摂取する人は、これらの栄養素を十分に摂取できない傾向があるかもしれません。

 

また、栄養学的に見逃せないのは、今回の研究で直接的に髪の成長との関連が示されなかった食品群でも、毛髪の強度を支える可能性があるという点です。

 

Zumpanoは、ビタミンC、大豆製品、そしてブロッコリーや芽キャベツといったアブラナ科野菜が髪の健康維持に役立つ可能性を強調しています。

 

これらは食物繊維、タンパク質、ビタミンA、ビタミンC、葉酸など、毛髪だけでなく全身の健康に必要な栄養素を豊富に含んでいます。

 

 

専門家の見解と実生活への応用

髪の健康は、遺伝やホルモン、ストレスなど多くの要因に影響されますが、「栄養は髪の健康の基盤である」という点については専門家の意見が一致しています。

 

Zumpano氏も「必要な栄養素が不足している場合、それは脱毛の強い要因になり得る」と述べています。

 

ただし、今回のレビューが示すのは関連性であり、因果関係ではないという事実を忘れてはなりません。

 

アルコールや砂糖入り飲料を摂取したから必ず脱毛する」ということではなく、「摂取量が多い人は脱毛の傾向が強い」という観察結果にととどまる点には注意が必要です。

 

 

今後の研究に必要なこと

今回のレビュー研究は、毛髪の健康と食事の関係について重要な示唆を与える一方で、まだ不確実な点も多く残されています。

 

今後は以下のような点が研究課題となるでしょう。

・縦断的研究(長期間の追跡調査)による因果関係の解明

・男性を含む多様な集団での検証

・栄養素の摂取量の具体的な基準を明らかにする試み

 

髪の健康を守るためには、アルコールや砂糖入り飲料の摂取を控え、ビタミンDや鉄分を意識的に摂取することが有効と考えられます。

 

ただし、食事だけで全てを説明できるわけではないため、生活習慣全体を見直すことが大切です。

 

 

まとめ

・アルコールや砂糖入り飲料の多量摂取は脱毛リスクの上昇と関連していた

・ビタミンDや鉄分の摂取は発毛や脱毛予防と関連していた

・今回の研究は横断研究が中心であり、因果関係を証明するものではないため、今後の検証が必要

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