茹でる?焼く?揚げる?じゃがいもの調理法が糖尿病リスクに与える影響とは

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じゃがいも畑を視察するフリードリヒ大王

  

歴史上、その豊富な栄養価と耐寒性でヨーロッパの食生活を支えてきたじゃがいも。

  

地面を掘り返さないと(より地獄に近い)収穫できないことや、じゃがいもの芽の毒(ソラニン)によって中毒症状を引き起こすことなど、諸所の理由で悪魔の食べ物とも言われてきた過去もあった作物でもあります。

  

現在では様々な調理方法の確立や栽培の手軽さで人気となっており、そのように忌み嫌う感覚はないでしょう。

  

そんな歴史において見方がガラっと変化したじゃがいもですが、その食べ方については少し気になるニュースがあります。

  

ハーバード大学の研究員Seyed Mohammad Mousavi博士らの研究によると、じゃがいもの調理方法によっては、ニ型糖尿病の発症リスクが大きく変わる可能性があると指摘されています。

  

具体的には、マッシュポテト、焼きじゃがいも、茹でじゃがいもなどの形ではリスク増加は見られなかった一方、油で揚げたじゃがいもではリスクが高まる傾向にあるという結果が示されました。

  

さらに、じゃがいもを全粒穀物に置き換えることで、糖尿病の発症リスクをさらに下げられる可能性があると報告されています。

  

今回のテーマはそんなじゃがいもの食べ方についての研究です。

 

  

参考記事)

Boiled, Baked, or Fried? How You Prep Your Potatoes Could Raise Your Diabetes Risk(2025/08/07)

 

参考研究)

Total and specific potato intake and risk of type 2 diabetes: results from three US cohort studies and a substitution meta-analysis of prospective cohorts(2025/08/06)

 

 

フライドポテトはリスク増、他の調理法は影響なし

研究チームは、過去、十数年にわたり続けられてきた3つの大規模追跡調査のデータを用いて、延べ205,107人の健康データと食生活を最大36年間追跡しました。 

 

調査では、参加者がフライドポテト、焼きじゃがいも、茹でじゃがいも、マッシュポテトをどのくらいの頻度で食べるかを定期的に記録し、それらとニ型糖尿病の新規診断件数が比較されました。

 

その結果、週3回フライドポテトを食べると、二型糖尿病の発症リスクが約20%増加することが判明しました。

  

Total and specific potato intake and risk of type 2 diabetes: results from three US cohort studies and a substitution meta-analysis of prospective cohortsより

【じゃがいもの調理法と二型糖尿病のリスク】

・総じゃがいも摂取量(一番上)

摂取量が増えるにつれ、二型糖尿病リスクもやや上昇します。ただし、その傾向は比較的穏やか

  

・焼き・茹で・マッシュのじゃがいもについて(真ん中)

リスク推移はほぼフラットで、摂取量が増えても糖尿病発症リスクには統計的な有意な変化が見られません

  

・フライドポテト(一番下)

明確に上昇傾向を示し、週3サービングの増加でリスクが約20%増

 

 

全粒穀物への置き換えでリスク減少

さらに研究では、じゃがいもを全粒穀物に置き換える効果も検証しました。

 

具体的には、週3回分のじゃがいもを全粒小麦パスタ、全粒パン、ファッロ(古代穀物の一種)などに置き換えると、ニ型糖尿病の発症率が約8%低下するという結果が得られました。

Total and specific potato intake and risk of type 2 diabetes: results from three US cohort studies and a substitution meta-analysis of prospective cohortsより

 

特に、フライドポテトを全粒穀物に置き換えた場合には、発症率が約19%低下する可能性が示されました。

 

アーサイナス大学の健康科学助教授であり管理栄養士の Alyssa Tindall 博士は、「食品の栄養成分は、調理や加熱方法によって変化する」と述べ、中でもフライドポテトの場合、高温での揚げ調理は油の脂肪分を増やすだけでなく、トランス脂肪酸や有害化合物を発生させる可能性があると指摘しました。

  

Mousavi 博士も同様に、「フライドポテトは非常に高温で揚げられることが多く、研究期間の大半ではトランス脂肪を含む油が使われていた。この過程で酸化が進み、炎症を引き起こす物質が生成される。これがニ型糖尿病の発症に関与している可能性がある」と説明しています。

  

これに対し、焼く・茹でる・マッシュにするなどの調理法では、そのような有害成分の生成はほとんど起こりません。

 

また、じゃがいも自体には食物繊維やカリウムなどの有益な栄養素も含まれており、揚げない形で食べる場合には、むしろ食事の質を高める可能性があるとされています。

 

 

全粒穀物の利点

フランス国王ルイ16世にじゃがいもの花を献上するパルマンティエ(農学者)

 

じゃがいもを全粒穀物に置き換えることによる大きな利点は、その豊富な食物繊維にあります。

  

Tindall 博士は「全粒穀物は血糖値の上昇を緩やかにする作用があり、炭水化物(ブドウ糖)の吸収を遅らせることで血糖コントロールを助ける」と説明します。

 

血糖値の急上昇を防ぐことは、糖尿病のみなら認知症やその他の生活習慣病予防において重要な要素です。

 

米国国立糖尿病・消化器・腎疾患研究所(NIDDK)は、糖尿病予防のための食習慣として、以下のような実践を推奨しています。

• 高カロリー・高脂肪・高糖分の食品を控える

• 炭酸飲料やスポーツドリンク、ジュースなどの加糖飲料を避け、水を選ぶ

• トランス脂肪酸、飽和脂肪酸、添加糖の少ない食品を選ぶ

• 揚げ物よりも焼きや茹でなどの調理法を選ぶ

 

Mousavi 博士は「揚げ物を減らし、焼く・茹でる調理法を増やし、炭水化物源として全粒穀物を選ぶといった小さな変化が、長期的な健康に大きな違いをもたらす」と述べています。

  

  

まとめ

・フライドポテトを週3回食べると、二型糖尿病の発症リスクが約20%増加

・焼き・茹で・マッシュポテトはリスク増加が見られず、全粒穀物への置き換えはリスク低下に有効

・調理法の工夫と炭水化物源の選び方が、糖尿病予防において重要

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