「長く眠りすぎると死亡リスクが増加」――最新研究が示すその理由とは

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睡眠は、心身の健康を維持するために欠かせない行動です。

 

睡眠不足が脳や心臓、精神状態、さらには肌や性機能に悪影響を及ぼすことは、すでによく知られた事実です。

 

しかし、オーストラリアのシーキュー大学の報告によれば、「眠りすぎも健康に悪い」という内容が発表されました。

 

研究では、一晩9時間以上の睡眠は、むしろ短時間睡眠よりも死亡リスクを高めるかもしれないという結果が示唆されています。

 

今回のテーマとして、以下に研究の内容をまとめます。

 

参考記事)

A Study Found Too Much Sleep Increases Risk of Death. Here’s Why.(2025/07/26)

Sleep becoming major health issue for Australians as insomnia and sleep apnoea on the rise(2025/06/08)

 

参考研究)

Imbalanced sleep increases mortality risk by 14–34%: a meta-analysis(2025/03/12)

 

  

睡眠は健康の基本的な柱のひとつ

 

栄養、運動と並び、睡眠は健康の三本柱の一つとされています。

 

睡眠中には、覚醒時の身体機能を支えるためのさまざまな生理的プロセスが進行します。

  

たとえば筋肉の修復、記憶の定着、感情の整理などが代表的です。

 

オーストラリアの非営利団体「Sleep Health Foundation」は、成人の理想的な睡眠時間を一晩あたり7〜9時間と推奨しています。

 

もちろん、遺伝的に「ショートスリーパー」とされる人もいて、7時間未満の睡眠でも健康に生活できるケースもあります。

 

しかし、多くの人にとって7時間未満の睡眠は短期的・長期的に悪影響を及ぼすとされています。(Short- and long-term health consequences of sleep disruptionより

 

翌日の疲労感、気分の落ち込み、集中力の低下、ストレスの増加などの短期的な影響に加え、長期的には心血管疾患(心臓発作や脳卒中)、二型糖尿病、うつ病、不安障害、がん、そして早死にといった深刻なリスクの上昇につながることが、数多くの研究で示されています。(Behavioral and Physiological Consequences of Sleep Restrictionより

 

このように、睡眠不足が健康に悪いことは確実ですが、睡眠が長すぎるという点についてはどうなのでしょうか?

 

 

「睡眠時間が長すぎると死亡リスクが増す」――その根拠とは?

今回の研究では、過去の79件の追跡研究のデータがレビューされました。

 

これらは、被験者を少なくとも1年間以上にわたって追跡し、睡眠時間と健康・死亡リスクの関係を調べたものです。

 

その結果、睡眠時間が7〜8時間の人に比べて、7時間未満の人は死亡リスクが14%高いことが確認されました。

 

本調査にて睡眠に関する研究を集めたメタ分析結果の一部(Imbalanced sleep increases mortality risk by 14–34%: a meta-analysisより)

  

睡眠不足による結果は、従来の知見と一致しており、大きな驚きはありません。

 

一方、注目すべきは、睡眠時間が9時間以上の人では、死亡リスクが34%も高まるという結果です。

 

これは、短時間睡眠よりもはるかに高いリスクであり、多くの人に衝撃を与えるものでした。

 

実はこの傾向は過去の研究でも指摘されており、2018年に発表された別のメタ分析では、74件の研究データを統合した結果、9時間以上の睡眠で死亡リスクが14%増加することが示されていました。

 

さらに、長時間睡眠はうつ病、慢性痛、体重増加、代謝異常などの疾患とも関連があることが示唆されています。

 

  

「長く寝ること」自体が原因ではない?

   

このような研究結果を耳にすると、過度な睡眠が「死を招く」と思ってしまいがちですが、ここで重要なのは、これらの研究はあくまで「相関関係」を示しているに過ぎないという点です。

 

つまり、「長時間眠ること」が直接の原因となって死亡リスクを高めているのではなく、もともとの健康状態やライフスタイルが影響している可能性があるのです。

 

たとえば、慢性的な疾患を抱える人は、身体の回復のために多くの睡眠を必要とすることがあります

 

また、薬の副作用や症状の影響で、ベッドで過ごす時間が長くなることも珍しくありません。

 

さらに、高血圧や喫煙、肥満といった既存の健康リスク因子は、睡眠の質を悪化させ、結果的に睡眠時間を延ばす要因にもなり得ます。

 

つまり、長く眠っているから病気になるのではなく、病気だから長く眠っているという可能性もあるのです。

 

このように、長時間の睡眠は、健康悪化の「結果」であり「原因」ではないという点に留意する必要があります。

 

 

最適な睡眠時間とは?

では、私たちは一体どのくらい眠るのが理想的なのでしょうか?

 

睡眠時間には個人差が大きく、一概に言えるものではありませんが、基本的には成人では7〜9時間が理想的な範囲とされています。

 

年齢によっても必要な睡眠時間は異なり、10代の若者では8〜10時間が推奨されており、就寝や起床時間も遅くなる傾向にあります。

一方で、高齢者は若い頃よりも眠りが浅くなったり、途中で目が覚めやすくなったりしますが、必要な睡眠時間自体が減るわけではありません

 

そして最も重要なのは、「量」よりも「質」と「安定性」です。

 

良質な睡眠を確保し、毎日ほぼ同じ時間に就寝・起床することが、健康維持には極めて重要とされています。

 

 

今できる「睡眠の質」を高める生活習慣とは?

多くのオーストラリア人(日本人も同様です)は、実際には推奨される睡眠時間を確保できていません。

 

したがって、私たちが注目すべきは「寝すぎていないか」ではなく、「どうすれば十分な睡眠をとれるか」にあります。

 

良質な睡眠を得るためには、以下のような生活習慣が勧められています。

・日中に太陽光を浴び、身体を適度に動かすこと

・就寝・起床時間を毎日ほぼ一定に保つこと

・就寝前1時間はスマートフォンやテレビなどの画面を避け、リラックスできる時間を確保すること

・寝室は静かで暗く、快適な温度に保つこと

 

もし、何の理由もないのに毎日10時間以上眠っているような状態が続く場合は、身体のどこかに不調があるサインかもしれません。

 

そうしたときは、早めにかかりつけの医師に相談することが推奨されます

 

 

まとめ

・睡眠不足も睡眠過多も、どちらも死亡リスクの増加と関連があるが、睡眠過多は原因というよりも健康悪化の「結果」である可能性が高い

・成人の理想的な睡眠時間は1晩7〜9時間で、質と安定性も同じくらい重要

・「眠りすぎている」と感じるときは、他の健康問題の兆候である可能性もある

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