乳製品は栄養価が高く、多くの人々の食生活に欠かせないものですが、一方で乳製品を控えることで得られるメリットもあります。
乳製品を摂らないことで、アレルギーや乳糖不耐症の管理、膨満感の軽減、体重管理、肌の健康維持など、さまざまな利点が期待できます。(Effects of Diet on Acne and Its Response to Treatmentより)
特に炎症性腸疾患(IBD)や乳糖不耐症を持つ人にとっては、乳製品が消化器系に負担をかけ、炎症を引き起こす可能性があります。
そのため、すべての乳製品または特定の乳製品を除去することで、症状の改善が見込めます。
しかし、乳製品にはカルシウム、タンパク質、ビタミンB12、ビタミンDが豊富に含まれているため、これらの栄養素を他の食品から補うことが大切です。
本記事では、乳製品を口にしないことによる8つのメリットについて詳しく解説します。
1. 母乳育児でのリスク軽減

母乳育児は牛乳タンパク質不耐症(CMPI)のリスクを低減する可能性があります。(There is an association between gastro-oesophageal reflux and cow’s milk protein intoleranceより)
CMPIは、免疫系が牛乳に含まれるタンパク質に過剰反応することで発生し、特に乳児に多く見られます。
CMPIが発症すると、消化器系の発達に悪影響を及ぼす可能性があり、腹痛、下痢、吐き気、嘔吐などの症状を引き起こします。
母乳を与える母親が乳製品を摂取すると、その成分が母乳を通じて赤ちゃんに届くことがあります。
そのため、赤ちゃんがCMPIの疑いがある場合は、母親が乳製品を除去することで症状を軽減できる可能性があります。
ただし、母乳育児中の食生活の変更については、小児科医に相談することが推奨されます。
2. 体重管理に役立つ

乳製品を控えることで、体重の増加を防ぎ、適切な体重管理がしやすくなる可能性があります。
全脂肪乳製品には糖分や飽和脂肪が多く含まれており、これらを過剰に摂取すると体重増加につながることがあります。(Facts about saturated fatsより)
飽和脂肪は特に脂肪蓄積の原因となりやすく、1gあたり約9カロリーと、炭水化物やタンパク質の2倍のカロリーを持っています。
特に、ダイエットを意識している人や、健康的な体重を維持したい人にとって、乳製品の摂取を減らすことは効果的な方法の一つといえるでしょう。
3. 消化器の問題を改善する

炎症性腸疾患(IBD)のある人は、乳製品に含まれる乳糖を消化しにくいことがあります。(What Should I Eat?およびInflammatory Bowel Diseaseより)
IBDには、クローン病や潰瘍性大腸炎が含まれ、消化管に慢性的な炎症を引き起こします。
このような疾患を持つ人にとって、乳糖を含まない食品を選ぶことは、以下のような症状を軽減するのに役立つ可能性があります。
• 下痢
• 吐き気・嘔吐
• 直腸出血
• 腹痛
IBDの症状は個人差があるため、乳製品を除去することで症状が改善されるかどうかを確認するのは有効な手段といえます。
言わずもがな、症状が改善しない場合や悪化する場合には、医師に相談しながら自分に合った食生活を見つけることが重要です。
4. アレルギーや不耐症を管理する

乳製品を除去することは、乳アレルギーや乳糖不耐症を持つ人にとって特に有効です。
乳アレルギーは子供から大人まで幅広く見られ、免疫系が乳製品に含まれるタンパク質に対して異常反応を起こします。 (Epidemiology of Cow’s Milk Allergyより)
症状としては、以下のようなものが挙げられます。
• アナフィラキシー(呼吸困難や血圧低下を伴う重篤なアレルギー反応)
• ガスの発生
• 蕁麻疹(じんましん)
• 吐き気・嘔吐
• 腹痛
乳糖不耐症の場合も、同様の症状が現れる可能性があります。
特に、乳糖を消化する酵素「ラクターゼ」が不足していると、乳製品の摂取後に膨満感や腹痛が起こることがあります。
5. 肌の健康を改善する

乳製品を摂取すると、ニキビや肌荒れが悪化する可能性があるといわれていますが、その正確なメカニズムはまだ明確になっていません。
一部の研究では、牛乳がインスリン様成長因子1(IGF-1)というホルモンの分泌を促進することが指摘されています。(Effects of Diet on Acne and Its Response to Treatmentより)
IGF-1は皮脂の分泌を増やし、毛穴が詰まりやすくなるため、ニキビができやすくなる可能性があります。(ただし、ヨーグルトやチーズなどの乳製品が直接ニキビの原因になるという明確な証拠はありません。)
乳製品を減らすことで肌の状態が改善するかどうかは個人差があるため、試験的に乳製品を控え、自分の肌の変化を観察することが有効です。
6. ホルモンバランスを整える

乳製品には、エストロゲン、プロゲステロン、アンドロゲンといったホルモンが含まれています。(Hormones in Dairy Foods and Their Impact on Public Health – A Narrative Review Articleより)
さらに、牛乳にはインスリン様成長因子1(IGF-1)も含まれており、これがホルモンバランスに影響を与える可能性があると考えられています。
ある研究では、IGF-1が大腸がん、乳がん、前立腺がん、肺がんなどの成長に関与する可能性が示唆されています。(IGF-1 and Risk of Morbidity and Mortality From Cancer, Cardiovascular Diseases, and All Causes in EPIC-Heidelbergより)
ただし、乳製品ががんの発生を直接引き起こすかどうかは明確ではなく、乳製品を含めた食生活全体ががんのリスクに関係していると考えられています。
しかし、ホルモンバランスの乱れは生理不順や更年期症状の悪化につながる可能性があるため、乳製品の摂取を調整することで改善が見込める場合もあります。
7. 膨満感を軽減する

乳製品に含まれる乳糖(ラクトース)は、一部の人にとって消化しにくい成分であり、ガスの発生や膨満感、腹痛の原因になることがあります。
乳糖不耐症は、乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)が不足し、消化器症状を引き起こす病気です。(Definition & Facts for Lactose Intoleranceより)
分解されず高濃度になった乳糖が小腸に水分を引き寄せ、水様性下痢を起こすことが主な特徴です。
その後乳糖は小腸を通過して大腸に入り、細菌によって発酵されてガスが生じ、ガスによる鼓腸(腸内にガスがたまり、腹部が膨隆した状態)、腹部膨満、差し込むような腹痛が起こります
歴史的に乳製品を摂取する文化がなかった日本人には特に多いとされています。
乳製品の摂取量を減らし、腸内環境を改善することで、消化不良や膨満感を軽減できる可能性があります。
また、食物繊維を豊富に含む食品(豆類、果物、野菜、全粒穀物)を適量摂取し、水分をしっかり補給することで腸内の働きを整えることも大切です。(Eating, Diet, & Nutrition for Lactose Intoleranceより)
8. 「ブレインフォグ」を軽減する可能性がある

「ブレインフォグ」とは、集中力の低下や記憶力の減退、思考の鈍化などの状態を指します。 (Brain “fog,” inflammation and obesity: key aspects of neuropsychiatric disorders improved by luteolinより)
新型コロナウィルス(COVID-19)の症状の一つとしても知られているため、耳にした方も多いかと思います。
一部の研究では、慢性的な炎症がブレインフォグの原因の一つである可能性が示唆されています。
乳製品が直接的にブレインフォグを引き起こすわけではありませんが、炎症性腸疾患(IBD)を持つ人が乳製品を避けることで、ブレインフォグが改善することもあるようです。
一方で、乳製品の摂取量が多い人ほど認知機能が向上するという研究結果もあり、乳製品が脳に与える影響についてはまだ議論の余地があります。 (Association between Dairy Consumption and Psychological Symptoms: Evidence from a Cross-Sectional Study of College Students in the Yangtze River Delta Region of Chinaより)
そのため、個人の体調に応じて乳製品を摂取するかどうかを決めるのがよいでしょう。
乳製品を控える方法
乳製品を除去する方法として、「エリミネーションダイエット(特定の食品を一定期間避けて体の反応を見る食事法)」が役立ちます。(Food allergies: Learn More – Food allergies: Diagnosis and treatmentより)
乳製品を控えるステップ
1. 食事記録をつける(摂取した食品と体の反応を記録する)
2. 1~4週間、乳製品を控える(アレルギーや不耐症がある場合は医師の指導のもとで実施)
3. 少しずつ乳製品を再導入する(反応を確認しながら)
4. 体調が良くなる場合は完全に除去することも検討する
また、市販の食品には乳製品が含まれていることが多いため、食品ラベルの「乳成分を含む」「牛乳」などの表示を確認することも重要です。
乳製品の代替食品
乳製品にはカルシウムやタンパク質、ビタミンB12、ビタミンDなどの重要な栄養素が含まれています。
乳製品を控える場合は、これらの栄養素を他の食品から補う必要があります。
【カルシウムの代替食品】
• サーモンやイワシの缶詰
• 葉物野菜(チンゲン菜、ケール、ほうれん草など)
• 豆腐などの大豆製品
【タンパク質の代替食品】
• ナッツ・種子類
• テンペや豆腐
• 豆類(レンズ豆、ひよこ豆、黒豆など)
• 魚、卵、鶏肉、赤身肉
【ビタミンB12の代替食品】
• 卵
• 肉類(特にレバー)
• 貝類(アサリ、ホタテなど)
【ビタミンDの代替食品】
• 卵黄
• サーモン、マグロなど
• 強化シリアルやオレンジジュース
• 日光浴(体内で自然にビタミンDを生成)
まとめ
・乳製品を控えることで、消化器の健康や肌の状態の改善など多くのメリットがある
・カルシウムやビタミンB12などの乳製品で足りない分の栄養素は、代替食品を取り入れることで十分に補うことができる
・エリミネーションダイエットを試すことで、自分にとって乳製品が適しているかどうかを判断できる
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