「健康的」と広く認識されてきた人工甘味料エリスリトールが、脳血管の機能に影響を及ぼし、脳卒中リスクを高める可能性があることが、新たな研究によって示唆されました。
アメリカのコロラド大学ボルダー校の研究チームは、細胞レベルの実験において、この甘味料が血管の収縮や血栓分解機能に関与する重要な仕組みに変化をもたらすことを確認しています。
これらの変化は、血流の悪化や血栓形成の促進につながり、結果として脳卒中のリスクを高める可能性があると考えられます。
以下に研究の内容をまとめます。
参考記事)
・Popular sugar substitute linked to brain damage and stroke risk(2026/03/28)
参考研究)
・The non-nutritive sweetener erythritol adversely affects brain microvascular endothelial cell function(2025/06/03)
・The artificial sweetener erythritol and cardiovascular event risk(2024/02/27)
エリスリトールとは

エリスリトールは、2001年にアメリカ食品医薬品局(FDA)により承認された糖アルコールの一種です。
主にトウモロコシを発酵させて製造され、現在では多くの低カロリー食品や飲料に使用されています。
この甘味料の特徴として、以下の点が挙げられます。
・ほぼゼロカロリーであること
・砂糖の約80%の甘さを持つこと
・インスリンや血糖値への影響が小さいこと
これらの特性から、体重管理や糖尿病対策、あるいは低炭水化物ダイエットを行う人々に広く利用されてきました。
しかし近年、この「安全」とされてきた甘味料に対して、徐々に懸念が高まりつつあります。
先行研究が示したリスク
本研究の背景には、アメリカおよびヨーロッパの約4,000人を対象とした大規模研究があります。
この研究では、血中エリスリトール濃度が高い人ほど、3年以内に心筋梗塞や脳卒中を発症するリスクが高いことが報告されました。
ただし、この段階では関連性が示されたに過ぎず、因果関係やそのメカニズムについては明らかになっていませんでした。
研究の概要

この先行研究を踏まえ、コロラド大学はヒトの脳血管内皮細胞を用い、エリスリトールが血管機能に与える影響を調べました。
細胞には、一般的なシュガーフリー飲料1本分に相当する濃度のエリスリトールが、3時間にわたって曝露されました
観察された主な変化は以下の3点でした。
1. 血管拡張機能の低下
実験の結果、一酸化窒素(NO)の産生が大きく低下していることが確認されました。
一酸化窒素は血管を拡張させ、血流を改善する重要な物質です。
一方で、エンドセリン-1の増加も観察されました。これは血管を収縮させる作用を持つ物質です。
この2つの変化により、血管は拡張しにくく、収縮しやすい状態になります。
2. 血栓分解能力の低下
血液凝固を促す物質であるトロンビンに曝露した際、細胞は通常、血栓を分解するt-PA(組織プラスミノーゲン活性化因子)を産生します。
しかし、エリスリトール処理後の細胞では、t-PAの産生能力が低下していました。
これは、血栓ができやすく、かつ分解されにくい状態を意味します。
3. 酸化ストレスの増加
さらに、活性酸素種(ROS)の増加も確認されました。
これらはいわゆる「フリーラジカル」であり、細胞損傷、老化の促進、炎症の誘発といった影響を及ぼします。
これにより、血管の機能低下がさらに進行する可能性があります。
たった1回分でもリスク増

今回の研究は、単に関連性を示すだけでなく、エリスリトールがどのようにして脳卒中リスクを高め得るかという“メカニズム”の一端を示した点に意義があります。
研究者は、本研究で使用されたエリスリトールの量がヒトが使用する「たった1回分」に過ぎないことを強調しています。
そのため、日常的に複数回摂取している場合には、影響がさらに大きくなる可能性も否定できません。
消費者への提言
研究チームは、この結果があくまで細胞実験に基づくものであり、ヒトでの直接的な影響を証明したものではないとしています。
しかしながら、以下の点について注意を促しています。
• 食品ラベルを確認すること
• 「糖アルコール」や「エリスリトール」の表記に注意すること
• 過剰摂取を避けること
現時点では「危険」と断定するには証拠が不十分ですが、慎重な摂取が望ましい段階にあるといえます。
また、本研究には以下のようないくつかの重要な制限もあります。
• 細胞実験であり、ヒトでの影響は未確認
• 短時間(3時間)の曝露であり、長期影響は不明
• 実際の摂取状況(代謝や排出)を完全には再現していない
したがって、今回の結果はあくまで「可能性」を示すものであり、現時点でエリスリトールが直接的に脳卒中を引き起こすと断定することはできません。
まとめ
・エリスリトールは血管拡張機能を低下させ、収縮を促す可能性がある
・血栓分解能力の低下や酸化ストレス増加により、脳卒中リスク上昇が示唆された
・ただし、細胞実験段階であり、ヒトでの影響は今後の研究が必要

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