長時間のゲームプレイやデスクワークでは、集中力を保つためにコーヒーやエナジードリンクを飲む人が多くいます。
しかし、カフェインや糖分を多く含む飲料は、過剰摂取によって健康リスクが高まる可能性があります。
こうした背景のもと、茨城県・筑波大学の研究チームは、炭酸水が長時間の認知活動に伴う疲労を軽減できるのかを検証しました。
研究の結果、炭酸水を飲みながら3時間のゲームプレイを行った場合、通常の水を飲んだ場合と比べて主観的疲労の増加が抑えられ、実行機能(意思決定や抑制などの認知機能)の低下が防がれる可能性が示されました。
また、炭酸水を飲んだプレイヤーは瞳孔の収縮が抑えられ、これは認知疲労の指標と関連することが示唆されています。
ただし、この研究は参加者数が少なく、炭酸水が実際にどのような生理的メカニズムで作用するのかは直接検証されていませんが、「炭酸水が集中力維持に役立つ可能性を示した研究」として報告されています。
以下に研究の内容をまとめます。
参考研究)
・Sparkling water consumption mitigates cognitive fatigue during prolonged esports play(2026/01/21)
eスポーツにおける「認知疲労」

eスポーツや長時間のゲームプレイでは、プレイヤーは数時間にわたって集中し続ける必要があります。
このような状況では、認知疲労(cognitive fatigue)と呼ばれる状態が生じることがあります。
認知疲労とは、長時間の精神的活動によって、判断速度の低下、注意力の低下、実行機能の低下などが起こる現象を指します。
研究では、eスポーツのような活動では意思決定や抑制制御などの実行機能が重要であり、認知疲労がパフォーマンス低下につながることが指摘されています。
そのため多くのプレイヤーは、疲労対策として、カフェイン飲料、エナジードリンク、その他糖分の多い飲料を利用することが多いです。
しかし、これらの飲料を頻繁に摂取すると、肥満や糖尿病などの健康リスクが高まる可能性があるため、より健康的な代替手段の探索が研究の目的となりました。
研究の方法
研究では一人の被験者が複数の介入条件によって効果を比較するランダム化クロスオーバー試験という方法が用いられました。
参加者は若年成人のゲーマー14人です。
各参加者は、次の2つの条件をそれぞれ体験しました。
Sparkling water consumption mitigates cognitive fatigue during prolonged esports playより 1. 通常の水を飲むセッション
2. 炭酸水を飲むセッション
両セッションでは、参加者は3時間にわたって仮想サッカーゲームをプレイしました。
研究では、以下の指標が測定されました。
【認知機能】
• フランカー課題(Flanker task)
→ 注意制御や実行機能を評価する心理学テスト
【生理指標】
• 瞳孔径
• 心拍数
【生化学指標】
• 血糖値
• 唾液コルチゾール
【主観評価】
• 疲労感
• ゲームの楽しさ
これらを開始前および1時間ごとに測定し、炭酸水と通常の水の違いを比較しました。
炭酸水は認知疲労の進行を抑えた
実験の結果、炭酸水を飲んだ条件では次のような傾向が確認されました。

①主観的疲労の増加が抑えられた
通常の水では、ゲーム開始から2時間以上経過すると疲労感が大きく増加しました。
しかし炭酸水の条件では、疲労感の増加が比較的抑えられたと報告されています。
②実行機能の低下が見られなかった
フランカー課題の結果では、以下の違いが確認されました。
• 通常の水:認知疲労によるパフォーマンス低下
• 炭酸水:低下が見られない
この結果は、炭酸水が長時間の精神活動による認知機能低下を抑える可能性を示唆しています。
③瞳孔収縮が抑えられた
瞳孔径は覚醒状態や認知負荷と関連する生理指標です。
研究では、炭酸水を飲んだ条件で、瞳孔収縮(疲労の指標)が抑えられる傾向が確認されました。
さらに、瞳孔が小さくなるほどフランカー課題の反応時間が遅くなる傾向も確認され、瞳孔径が認知疲労の客観指標となる可能性が示されました。
ゲームプレイと生理指標への影響
ゲーム内のパフォーマンスも分析されました。
その結果、炭酸水を飲んだ場合、ゲーム内のファウルが少なかったという興味深い結果が得られました。
これは抑制制御(衝動的行動の抑制)が改善された可能性を指摘しています。
また、興味深いことに、以下の指標には差が見られませんでした。
• 心拍数
• 血糖値
• コルチゾール
つまり、炭酸水の効果は糖分や刺激物による代謝変化ではなく、神経系の覚醒に関連している可能性があります。
炭酸水が脳に作用する可能性

研究者は、炭酸水の効果の背景としてTRPチャネル(Transient Receptor Potential channels)という感覚受容体の関与を仮説として挙げています。
炭酸による刺激が喉の感覚受容体を刺激し、脳幹、前頭前野を含む神経回路を活性化する可能性があると考えられています。
ただし、この研究ではこのメカニズムは直接検証されていません。そのため、これはあくまで推測的説明にとどまります。
研究の限界
この研究にはいくつかの重要な制限も指摘されています。
まず、参加者が14人と少ないことです。
このため、結果を一般集団にそのまま当てはめることは難しい可能性があります。
また、研究では炭酸水は、コーヒー、エナジードリンクなどの飲料とは比較されていません。
さらに、飲み物の違いは味や感覚で分かるため、完全な盲検試験が難しいという問題もあります。
このため、期待効果(プラセボ効果)が結果に影響している可能性も否定できません。
現代社会への応用可能性
今回の研究はeスポーツを対象としていますが、研究者はその応用範囲は広い可能性があると述べています。
例えば、長距離運転、夜間の仕事、長時間の学習など、現代社会では長時間の認知活動が求められる場面が多く存在します。
炭酸水が認知疲労を軽減する可能性があるならば、カフェインや糖分に依存しない疲労対策として利用できる可能性があります。
ただし、この点については今後の研究による検証が必要とされています。
まとめ
・筑波大学の研究により、炭酸水は長時間のeスポーツプレイ中の認知疲労を軽減する可能性が示された
・炭酸水は主観的疲労の増加を抑え、実行機能の低下や瞳孔収縮を防ぐ傾向が確認された
・ただし参加者数が少なくメカニズムも未検証であるため、結果の解釈には慎重さが必要である


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