神経痛に効くと期待された大麻治療、その効果は十分とは言えないことが明らかに

科学
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慢性的な神経痛に対して、大麻由来の医薬品が新たな治療選択肢として注目を集めてきました。

 

しかし、最新の大規模レビュー研究によって、大麻ベースの治療はプラセボと比べて有意な鎮痛効果を示さない可能性が高いことが明らかになりました。

 

期待が高まる一方で、科学的根拠はまだ十分とは言えず、副作用の問題も無視できない状況です。

 

以下に研究の内容をまとめます。

参考記事)

Cannabis was touted for nerve pain. The evidence falls short(2026/01/20)

参考研究)

Cannabis‐based medicines for chronic neuropathic pain in adults(2026/01/19)

   

 

医療薬としての大麻

  

慢性神経障害性疼痛(chronic neuropathic pain)は、神経が損傷を受けることで生じる痛みであり、焼けるような感覚、刺すような痛み、しびれなどが長期間持続するのが特徴です。

 

この種の痛みは治療が難しく、現在用いられている標準的な鎮痛薬や抗うつ薬、抗てんかん薬などでも、十分な痛みの軽減が得られる患者は一部に限られるとされています。

 

こうした背景から、既存治療の限界を補う可能性のある代替療法として、大麻由来の医薬品に注目が集まってきました。

 

大麻ベースの治療薬にはさまざまな種類があります。植物そのものを使用した医療用大麻に加え、大麻に含まれる特定の化学成分を抽出・精製した製剤も存在します。

 

代表的な成分としては、精神活性作用をもつテトラヒドロカンナビノール(THC)と、酩酊作用を引き起こさないカンナビジオール(CBD)が挙げられます。

 

これらは吸入製品、口腔スプレー、錠剤、クリーム、皮膚パッチなど、多様な投与形態で使用されてきました。

  

  

エビデンスはどのように評価されたのか

今回の結論は、21件の臨床試験を統合的に分析した包括的レビューに基づくものです。

 

これらの試験には、慢性神経障害性疼痛を抱える2,100人以上の成人が参加していました。

 

研究期間は最短で2週間、最長で26週間と幅があり、大麻ベースの医薬品とプラセボ(偽薬)を比較する形で効果が検証されました。

 

解析対象となった製品は、大きく3つのカテゴリーに分類されました。

 

第一はTHCを主成分とする製品、第二はCBDを主成分とする製品、そして第三はTHCとCBDをほぼ同量含むバランス型の製品です。

 

研究者たちは、これらの異なるタイプの製品が神経痛の軽減にどの程度寄与するのかを慎重に評価しました。

   

  

プラセボを上回る効果は確認されず

  

レビューの結果、いずれのカテゴリーにおいても、大麻ベースの医薬品がプラセボより明確に優れた鎮痛効果を示すという高品質な証拠は見つかりませんでした

 

THCとCBDを併せ持つ製品を使用した一部の参加者では、痛みがわずかに軽減したと報告されましたが、その変化は臨床的に意味があると判断できる水準には達していませんでした。

 

つまり、統計的には差が見られる場合があったとしても、患者の日常生活の質を明確に改善するほどの効果ではなかったということです。

 

この点は、治療としての実用性を考えるうえで極めて重要な視点です。

  

 

副作用に関するデータは不十分で、不安要素も残る

安全性についても、明確な結論を出すのは難しい状況です。

 

副作用に関する情報は試験ごとに報告の仕方が異なり、一貫性に欠けていました

 

そのため、研究者が副作用の頻度や重症度を正確に比較・評価することは困難だったとされています。

 

副作用データに対する全体的な信頼度は「低い」から「非常に低い」と評価されました。

 

ただし、傾向としては、THCを含む製品でめまいや眠気が多く報告されることが示されています。

 

また、こうした副作用のために治療を途中で中止した参加者が、プラセボ群より多かった可能性も指摘されています。

 

この点は、長期的な治療を必要とする慢性疼痛患者にとって、無視できない問題です。

 

  

研究者が指摘する現在の限界

本レビュー研究の主導的立場にあったのは、テクニッシェ・ウニヴェルジテート・ミュンヘンおよびザールブリュッケン痛み医学・メンタルヘルス医療センターに所属する臨床医、Winfried Häuser氏です。

 

Häuserは次のように述べています。

 

少なくとも12週間以上の治療期間を設け、身体疾患や精神疾患を併存する人々も含めた、大規模で質の高い研究が必要。現時点では、ほとんどの試験の質が十分とは言えず、確固たる結論を導くことはできない。

  

この発言が示すように、現在存在する研究の多くは、参加者数が少ない、追跡期間が短い、評価方法が統一されていないといった問題を抱えています。

 

そのため、大麻ベースの医薬品が本当に有効なのか、あるいはどの患者層に適しているのかを判断するには、さらなる研究が不可欠です。

  

  

現時点で言えることと、残された不確実性

  

著者らは最終的に、慢性神経障害性疼痛に対する大麻ベース医薬品の有効性を支持する証拠は、現段階では弱く不確実であると結論づけています。

 

社会的な関心や利用の広がりに反して、科学的根拠はまだ追いついていないというのが実情です。

 

なお、本レビューでは、特定の製品や投与量、使用期間ごとの詳細な比較が十分に行えなかった点も指摘されています。

 

そのため、「すべての大麻製品が無効である」と断定できるわけではなく、一部の条件下では異なる結果が得られる可能性も否定できません

 

この点は、現時点では事実として曖昧さが残る部分であり、今後の研究によって明らかにされる必要があります。

 

 

まとめ

・大麻ベースの医薬品は、慢性神経障害性疼痛に対してプラセボを明確に上回る効果を示していない

・THCを含む製品では、めまいや眠気などの副作用が比較的多く報告されている

・有効性と安全性を判断するには、質の高い長期研究が今後も必要

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