ごく低用量のアスパルテームであっても、長期的には健康に深刻な影響を及ぼす可能性がある──そのような懸念を示す研究結果が、スペインのバイオマテリアル協同研究センター(Center for Cooperative Research in Biomaterials)の研究チームによって新たに報告されました。
動物実験の範囲ではありますが、人工甘味料“アスパルテーム”が心臓および脳機能に対する予想外の悪影響が確認されたのです。
今回のテーマとして、以下に研究の内容をまとめます。
参考記事)
・Even Low Doses of Aspartame Could Have Alarming Health Effects, Study Finds(2025/12/31)
参考研究)
・Aspartame decreases fat deposits in mice at a cost of mild cardiac hypertrophy and reduced cognitive performance(2025/12/12)
低用量・断続的な摂取という「現実的条件」での実験

研究チームは、成熟した雄マウスを対象に、約1年間にわたる長期実験を行いました。
マウスの食事には、2週間ごとに数日間のみ、少量のアスパルテームが添加されました。
この摂取量は、人間に換算すると、世界保健機関(WHO)が定める1日の許容摂取量のおよそ6分の1に相当する水準です。
つまり本研究は、極端な大量摂取ではなく、「安全とされている基準よりもかなり低い量」かつ「継続的ではない摂取」という、現実の食生活に近い条件を想定して設計されていました。
体脂肪は減少したが、臓器には異変が生じた
実験終了時、アスパルテームを摂取していたマウスは、対照群と比べて体重がより減少し、体脂肪率も平均で10〜20%低いという結果を示しました。
一見すると、これは「代謝に良い影響があった」とも受け取れる変化です。
しかし研究者たちは、その裏で進行していた心臓と脳の機能低下に注目しました。
詳細な検査の結果、アスパルテームを摂取していたマウスでは、心臓の拍出効率が低下し、さらに心筋の構造や機能に軽度ながら明確な変化が認められたのです。

研究チームはこれらの所見について、心臓に余分な負荷がかかり、慢性的なストレス状態に陥っている可能性を示唆しています。
脳のエネルギー利用にも変化が生じていた
脳機能に関しても、重要な変化が観察されました。
アスパルテームを摂取していたマウスでは、脳へのグルコース(ブドウ糖)取り込み量が一時的に増加した後、実験終了時には大きく低下していたのです。
グルコースは脳にとって不可欠なエネルギー源であり、その供給が低下することは、神経活動の効率低下や認知機能障害につながる可能性があります。
こうした生理学的変化は、行動レベルでも反映されていました。
アスパルテームを摂取したマウスは、記憶や学習能力を評価する課題において成績が低下し、迷路実験では動きが遅く、脱出までに要する時間も長くなる傾向が見られました。

これらの結果は、軽度ながらも認知機能の低下が起きている可能性を示唆するものです。
研究者たちは論文の中で、次のように述べています。
「本研究で用いた非常に穏やかな摂取条件であっても、心臓および脳の機能、さらには心臓構造に変化が生じたことは懸念すべきである」
影響は「軽度」だが、無視できない理由
一方で研究チームは、今回観察された認知機能の変化が、過去に報告された、毎日アスパルテームを摂取させたマウス実験と比べると「比較的軽度」であった点も強調しています。
その理由として研究者たちは、
・アスパルテームを摂取しない期間を設けたこと
・成熟マウスの方が若齢マウスより耐性が高い可能性
・長期摂取による生理的適応
といった複数の仮説を挙げています。
しかし、それでもなお、安全基準を大きく下回る摂取量で臓器機能に変化が生じたという事実は、軽視できないと研究者たちは警告しています。
子どもへの影響についての慎重な提言
研究論文では特に、神経系への長期的影響が十分に解明されていない現状を踏まえ、次のような注意喚起がなされています。
「アスパルテームによる神経学的後遺症が十分に理解されるまでは、子どもや思春期の若者は、可能な限りアスパルテームを避けることが望ましい」
この点については、今回の研究が雄マウスのみを対象としていること、そして人間を直接調べた研究ではないことから、あくまで慎重な解釈が必要であることも併せて示されています。
しかし、本研究には、いくつかの重要な制限があります。
まず、動物実験であること、そして雌マウスや若齢個体が含まれていないこと、さらに摂取量・期間・食事内容といった条件が限定的であることです。
また、これまでの疫学研究では、人工甘味料の摂取と認知症関連の生物学的変化、動脈硬化、肝がんなどとの関連が指摘されていますが、直接的な因果関係は現時点では証明されていません。
したがって、今回の結果をもって「アスパルテームが必ず人間に同様の害を及ぼす」と断定することはできません。
それでも研究者たちは、今回の知見が示す意味は大きいと結論づけています。
アスパルテームは、肥満や二型糖尿病のリスク低減に役立つ側面を持つ一方で、許容摂取量内であっても主要臓器の機能を損なう可能性が示唆されたからです。
研究チームは最終的に、次のように述べています。
「これらの結果は、現在許可されている摂取量であっても、アスパルテームが重要な臓器機能を損なう可能性を示しており、人間における安全基準を再評価することが望ましい」
いずれにしろ、必要がないなら避けるべき物質であると言えるでしょう。
まとめ
・WHOの許容摂取量を大きく下回る低用量でも、マウスでは心臓と脳に機能変化が認められた
・認知機能低下は軽度でしたが、長期的・断続的摂取でも影響が生じた点は重要
・人間への影響は未確定であるものの、安全基準の再検討が必要である可能性が示唆されている


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