痩せすぎは「過体重」よりも危険?大規模デンマーク研究が示す新たな知見

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肥満は様々な病気に関係することが知られており、多くの人はそういった過体重の状態を良いものとは考えないでしょう。

 

では逆に、痩せすぎていることはどうでしょう。

 

一般的に「痩せていることは健康的である」と考えられがちですが、デンマークで実施された大規模研究によると、適度に太っていることは必ずしも寿命を縮めない一方で、痩せすぎはむしろ早死のリスクを高める可能性があると報告されています。

 

この研究は8万5,000人以上の成人を追跡した結果に基づいており、体格指数(BMI)が18.5未満の人々は、いわゆる「健康的」とされる中間〜上限のBMI範囲にある人々に比べて、早期に死亡するリスクが約3倍に達することが明らかになりました。

 

さらに、18.5から19.9といった「正常範囲より下」に分類される人々でも、死亡リスクは2倍に増加するという結果が示されています。

 

この知見は、従来広く受け入れられてきた「BMI18.5〜24.9が最も健康的」という考え方に疑問を投げかけるものです。

 

以下に研究の内容をまとめます。

 

参考記事)

Being Too Thin May Be Riskier Than Extra Weight, Major Study Reveals(2025/09/19)

 

参考研究)

Overweight and obesity don’t always increase the risk of an early death, Danish study finds(2025/09/14)

 

 

デンマーク研究の概要と結果

この研究は、ヨーロッパ糖尿病学会(European Association for the Study of Diabetes)の年次総会で発表されたもので、デンマーク国内の大規模データを用いた解析結果です。

  

参加者は全員が健康診断や医療的理由で体のスキャンを受けており、その背景から「健康上の問題を抱えている可能性が高い層」も含まれていたと考えられます。

  

【主な結果】

• BMI18.5未満(痩せすぎ)の人は、死亡リスクが約3倍に上昇

• BMI18.5〜19.9でも、リスクは約2倍

• BMI20〜22.4でも、基準群(22.5〜24.9)に比べて27%高いリスク

• 一方で、BMI25〜35(過体重〜肥満)の範囲では、死亡リスクは有意に増加しなかった

• ただし、BMI40以上になるとリスクは大きく上昇し、2.1倍に達した

 

この結果を図にすると「U字カーブ」を描き、痩せすぎと極端な肥満が死亡リスクを押し上げることが確認されました。

 

 

痩せすぎが危険である理由

 

痩せすぎの危険性は、いくつかの生理的要因に関連しています。

  

第一に、脂肪の備蓄が少ないことが病気時の回復力を弱めるという点です。

  

たとえば、がんの化学療法を受ける患者は食欲不振や味覚の変化により体重減少が起こりやすいですが、脂肪の備蓄が多い人はそこからエネルギーを引き出すことができます。

  

逆に、痩せすぎの人は早期に蓄えを失い、身体機能の維持が難しくなります。

  

第二に、体重減少そのものが病気の兆候である可能性です。がんや一型糖尿病などの疾患では、診断前に体重減少が見られることが少なくありません。

  

そのため、低いBMIは健康そのものではなく、背景に隠れた疾患の表れである可能性もあるのです。

  

第三に、極度の栄養不足が免疫機能を抑制するという点です。

  

食物が不足すると、身体はエネルギーを脳に優先的に供給するため、免疫やその他の機能は後回しになります。

  

この「分解代謝状態(カタボリック状態)」が続けば、感染症や他の病気に対する抵抗力が著しく低下してしまいます。

  

  

過体重が必ずしも悪ではない理由

一方で、この研究は「過体重=悪」という一般的な認識に一石を投ずるものでもあります。

  

BMI25〜35に分類される人々については、死亡リスクの上昇は確認されませんでした。

  

これは、近年注目される「Fat but fit(太っていても健康)」という考え方を支持する結果と言えます。

   

また、現代の医療技術は、糖尿病や心血管疾患といった肥満関連疾患を管理する能力が向上しているため、多少の余分な体重はむしろ死亡リスクを下げる可能性があるという見方も研究者は示しています。

  

研究チームは、「現在の医学的環境下では、最も死亡リスクが低いBMIは22.5〜30の範囲にある可能性がある」と提案しています。

 

 

BMIの限界と社会的課題

 

しかし、BMIという指標自体に多くの限界があることも指摘されています。

 

• 体脂肪の分布や筋肉量を考慮しない

• 食生活や運動習慣といった生活要因を反映しない

• 人種・民族間の違いを無視している

  

BMIは19世紀に白人男性を中心に開発された指標であり、多様な人種・文化を十分に反映していません。

  

たとえば、アジア系や黒人の人々では、糖尿病リスクが高まるBMIの閾値が異なることが知られています。

 

そのため、「標準的なBMI基準が必ずしも普遍的ではない」ことは医療界で広く認識されています。

  

医療現場では、BMIに基づいて手術や不妊治療へのアクセスが制限されることもあります。

  

しかし、こうした制度設計は必ずしも公平ではなく、真に健康を反映する指標にはなり得ません。

  

理想的には、血液検査や詳細な画像診断、生活習慣の評価などが組み合わされるべきですが、それらはコストや時間の制約が大きいという課題があります。

  

  

研究の限界と今後の展望 

今回のデンマーク研究にはいくつかの限界も存在します。

  

まず、査読前の学会発表データであることから、結論を早急に一般化するのは時期尚早です。

  

また、研究参加者は「健康上の理由で体のスキャンを受けた人々」であり、一般集団を代表していない可能性があります。

  

つまり、観察されたリスクは「BMIそのものの影響」ではなく、背後にある病気による体重減少の影響である可能性があるのです。

  

しかしながら、既存の研究とも整合する結果が得られており、「痩せすぎが健康にとって必ずしも望ましくない」ことを改めて裏付ける重要なデータといえます。

 

 

まとめ

・痩せすぎ(BMI18.5未満)は、死亡リスクを約3倍に高める

・過体重(BMI25〜35)は必ずしも寿命を縮めない

・BMIは単純な指標に過ぎず、健康評価には限界がある

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