「ランナーズフェイス(runner’s face)」という言葉をご存じでしょうか。
これは、長期間にわたってランニングを続けている人に見られる顔の変化を指す、俗称です。
具体的には、顔がこけて見えたり、皮膚がたるんだり、シワが増えたりといった外見の変化が挙げられます。
しかし、「ランナーズフェイス」は医学的に正式な診断名ではなく、その正体についての科学的な研究も限られているのが現状です。
実際に、ランニングという運動そのものが肌の老化を引き起こすという証拠はなく、それ以外の要因が影響している可能性が高いとされています。
とはいえ、ランナーの中には年齢より老けて見られることに悩む人も少なくありません。
本記事では、ランナーズフェイスの実態と、それを引き起こすと考えられる原因について解説します。
以下に研究の内容をまとめます。
参考記事)
・How Is Runner’s Face Linked to Premature Skin Aging?(2024/05/21)
参考研究)
・Sun Protective Behaviors and Attitudes of Runners(2021/12/21)
・The effect of regular running on body weight and fat tissue of individuals aged 18 to 65(2023/11/30)
ランナーズフェイスの特徴とは?

まず、「ランナーズフェイス」と呼ばれる外見の特徴について確認しておきましょう。
これは主にランナーたちの体験談に基づいているもので、個人差があることを前提とする必要がありますが、よく挙げられる特徴には次のようなものがあります。
• 顔全体が痩せこけて見える
• 皮膚が革のように厚く、たるんでいる
• 疲れた印象を与える表情
• 目の周囲がくぼんでいる
• シワや色ムラが目立つ
一見すると、これらは「加齢による自然な変化」とも見なされがちですが、長距離ランナーに特有の現象として話題になることがあります。
ランニングは本当に顔を老けさせるのか?
この疑問に対して、オハイオ州立大学の皮膚科専門医、Susan Massick医師は「いいえ」と明言しています。
「ランニングが皮膚のたるみや質感の変化を直接引き起こすという証拠はない。皮膚が老化するのは、運動そのものが原因ではない」と彼女は述べています。
つまり、「走ること自体が顔の皮膚を老化させる」というのは都市伝説に過ぎないというのが専門家の見解です。
では、なぜランナーに肌の老化が見られる場合があるのでしょうか?
それは運動に関連する別の要因に理由があると考えられています。
ランニングが顔の老化に「見える」原因とは?

ランニングそのものが肌を老化させるわけではありませんが、長時間の運動に伴う体重減少や脂肪の減少は、顔の外見に大きな影響を及ぼすことがあります。
特に、長距離ランナーの多くは体脂肪率が低く、それによって顔のふくらみ(ボリューム)が減少し、頬がこけた印象を与えるようになるのです。
この変化が、「老けて見える」要因のひとつとされています。
さらに、ランニングを屋外で行う習慣がある人は、紫外線(UV)に長時間さらされることになります。
この点が、肌の老化にとって大きなリスクとなるのです。
紫外線による影響としては、次のようなものがあります。
・シワやたるみの形成
・日焼けや色素沈着(シミ)
・皮膚のごわつきや厚みの増加
これらはすべて「光老化」と呼ばれる現象であり、日常的に紫外線を浴びる生活を送っている人ほど顕著に現れるとされています。
ランナーズフェイスを防ぐための実践的な対策

ランニングを健康のために続けつつ、肌の老化を最小限に抑えるためには、紫外線対策とスキンケアを徹底することが最も重要です。
以下に、参考記事内で紹介されている具体的な方法を紹介します。
1. 毎日の「日焼け止め」使用を習慣に
外でランニングをする際は、SPF30以上の広範囲紫外線カット効果のある日焼け止めを使用することが推奨されています。
また、汗や水に強いタイプを選び、2時間おきに塗り直すのが理想です。
2. 太陽が強い時間帯の運動を避ける
午前10時から午後4時の間は紫外線が最も強い時間帯です。
この時間帯のランニングは極力避け、早朝や夕方に行うのがベストです。
また、木陰や建物の影になるコースを選ぶことも効果的です。
3. 保湿ケアを徹底する
朝と夜に保湿剤を使用することで、肌の水分保持能力や弾力を保つことができます。
特に運動後は汗で肌の水分が失われているため、速やかな保湿が重要です。
4. 紫外線防止グッズを活用する
日焼け止めに加えて、つばの広い帽子やUVカットのサングラス、ネックガードなどを併用することで、より広範囲の皮膚を保護することが可能です。
5. 禁煙または喫煙習慣の見直し
喫煙は肌の血流を悪化させ、肌の弾力を保つコラーゲンの生成を妨げるため、老化を早める要因となります。
ランナーでなくても、肌の健康を保つためには禁煙が強く推奨されます。
6. 栄養バランスの取れた食事を心がける
抗酸化物質を多く含む野菜や果物(ほうれん草、ビーツ、ブロッコリー、ベリー類など)を積極的に摂取することで、細胞の再生を助け、肌の修復力を高める効果が期待されます。
7. 水分補給を十分に行う
運動によって失われる水分をしっかり補うことで、肌の乾燥やたるみを予防することができます。
特に夏場や湿度が高い時期には、運動前後の水分補給が欠かせません。
「ランナーズフェイス」と呼ばれる現象に対する科学的研究はまだ限られています。
そのため、誰にでも起こるものではなく、個人差が大きいと考えられます。
また、今後は運動の種類、時間、気候、年齢、遺伝的要因などと肌の変化との関係について、より詳細な研究が求められています。
ランナーであることは健康に多くのメリットをもたらす一方で、紫外線や栄養・水分不足などを軽視すると、肌に望ましくない変化が現れることがあるのです。
まとめ
・ランナーズフェイスは医学的な診断名ではなく、運動による肌老化の直接的な原因とは言えない
・紫外線や脂肪の減少、スキンケア不足といった要因が外見に影響を与える可能性がある
・日焼け対策や保湿、食生活の見直しによって、肌の健康を維持しながら安全にランニングを楽しむことができるとされている


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