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世界的な調査が明らかになった、スーパーマーケットの利便性と健康への影響

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ここ十数年、多くの国でスーパーマーケットやコンビニエンスストア、オンラインショッピングを利用することが当たり前になりつつあり、食品購入のスタイルは大きく変化してきました。

 

普通に生活していると、こうした利便性の裏で、私たちの健康にどのような影響を及ぼしているのか考える機会は少ないかと思います。

 

ディーキン大学の研究によると、コンビニやスーパーマーケットの増加が肥満率の高さなど健康に関わる指標にも関係していることが示されました。

 

今回のテーマ、そんな利便性と健康リスクに関する研究についてです。

 

以下の記事と研究を参考にまとめていきます。

 

参考記事)

Global Study Reveals How Supermarket Convenience Is Costing Us Our Health(2025/03/08)

参考研究)

Global food retail environments are increasingly dominated by large chains and linked to the rising prevalence of obesity(2025/03/03)

 

 

利便性が健康に与える影響 

ディーキン大学の研究チームはUNICEFの研究者とともに、97か国における15年間(2009年〜2023年)の食品購入の傾向を調査しました。

 

その結果、スーパーマーケットやコンビニエンスストア(以下、「チェーン系食品小売店」と表記)の数が世界的に急増していることが判明しました。

 

加えて、人々がこれらの店舗やオンラインプラットフォームでの買い物により多くの支出をしていることも明らかになりました。

 

しかし、この便利さは私たちの健康に大きな代償をもたらしていることも判明しました。

 

また、チェーン系食品小売店の密度が高い国では、不健康な食品の購入量が多く、肥満率も高いことが分かりました。

Global food retail environments are increasingly dominated by large chains and linked to the rising prevalence of obesityより

・不健康な食品を販売した割合の推移 (e)

・チェーン店から不健康な食品を販売した割合の推移(f)

 

  

スーパーマーケットの増加とオンライン購入の急成長

本調査では、食品業界のデータをもとに、世界の食品小売業界の変化を分析しました。

 

特に、店舗の種類、消費額、そして不健康な加工食品の販売量が注目されました。

 

また、これらの傾向を肥満率の変化と関連付けて分析されました。

 

その結果、チェーン系食品小売店の密度(人口1万人あたりの店舗数)は、2009年から2023年の15年間で23.6%増加していることが分かりました。

 

この増加は高所得国で顕著ですが、低・中所得国では特に急速に増加しています。

 

これは、都市化の進展や所得の向上、消費者の需要の高まりによって、大手小売業者がこれらの国々を新たな市場として注目しているためです。

 

例えば、ミャンマーでは年間約21%増加、ベトナムでは約18%増加、カンボジアでは約12%増加というように、アジア諸国では急速なスーパーマーケットの増加が見られます。

 

さらに、オンライン食品ショッピングの利用も劇的に増加しています。

 

世界全体のオンライン食品購入額は2014年から2023年の間に325%増加しました。

 

特に、アラブ首長国連邦(UAE)とアメリカがオンライン食品購入のトップでした。

 

2023年の1人当たりの年間支出額は、UAE:617米ドル(2014年比570%増)アメリカ:387米ドル(同125%増)と大幅に増加しました。

 

この背景には、COVID-19パンデミックの影響でオンラインショッピングの習慣が定着したことが挙げられます。

 

 

チェーン系食品小売店の増加がもたらす健康への影響

 

チェーン系食品小売店の増加とオンライン販売の普及は、私たちの食習慣を大きく変えています。

 

特に、不健康な加工食品の販売増加が挙げられます。

  

ここでいう不健康な食品は、保存料を使用したハムやソーセージ、ドーナツやポテトチップス、ハンバーガーなどの超加工食品、甘味料入りの飲料水等を指します。

 

本調査によると、15年間でチェーン系食品小売店を通じた不健康な加工食品の販売量は10.9%増加しました。

 

中でも、パキスタンでは毎年5%増加、インドでは4%増加、バングラデシュでは3%増加といったように、南アジアでは急激な増加が見られます。

 

 

肥満率の急上昇

また、肥満率も急上昇しています。

 

調査期間中、肥満人口の割合は18.2%から23.7%に増加しました。

 

この傾向はチェーン系食品小売店の増加が最も顕著な国ほど強く見られることが分かりました。

 

例)

ラオスでは2009年以降、チェーン系食品小売店の密度が年間15%増加

同時に、肥満率は2倍に上昇

  

また、オーストラリアでは、過体重および肥満が喫煙を上回り、国民の健康に最大の負担を与える要因になっています。(Living with overweight or obesity overtakes tobacco as new leading burden of disease risk factorより

 

 

なぜスーパーマーケットが問題なのか?

スーパーマーケットは果物や野菜などの健康的な食品も販売していますが、私たちの食環境に悪影響を与える要因が多数存在します。

 

特に注意すべきは、高度に加工された食品の販売です。

 

チェーン系食品小売店では、砂糖・脂肪・塩分を多く含む加工食品が大量に販売されています。

 

調査によると、12か国のスーパーマーケットで販売されている食品・飲料の大半が不健康であり、特にインド、中国、チリなどの低・中所得国でより不健康な商品が多いことが判明しました。

 

 

積極的な販促活動

 

チェーン系食品小売店は、レジ周辺や棚の端に不健康な食品を配置、大幅な価格割引や広告キャンペーンを実施、オンラインストアでは不健康な食品を目立つ位置に表示する……などなど、健康的でない食品(超加工食品など)の販売促進にも積極的です。

 

例えば、オーストラリアのスーパーマーケットでは、表示される商品の3分の1以上が不健康な食品であることが判明しています。(Healthiness of food products promoted through placement strategies in Australian online supermarkets: a cross-sectional studyより

 

特に大手チェーン系食品小売店は、中小規模の独立系食品店よりも強い影響力を持ち、商品の品揃えや価格をコントロールできます。

 

記事においても、そういった関係から大手食品メーカーと協力し、不健康な食品の販売を拡大する傾向があることが指摘されています。

 

 

今後の対策

健康的な食品購入環境を整えるために、以下の対策が求められます。

  

・政府の規制強化:イギリスのように、不健康な食品の配置や価格プロモーションの制限

Restricting promotions of products high in fat, sugar or salt by location and by volume price: implementation guidanceより) 

   

・小売業者の取り組み:ノルウェーのように、健康食品の販促活動を強化

Can in-store interventions reduce the socioeconomic gap in fruit and vegetable purchases in grocery stores? A descriptive study of volume sales from 2012 to 2020 in Norway’s largest grocery store chainより

   

・消費者の意識向上:栄養表示の強化や健康的な食品選択を促すキャンペーンの実施

Australian supermarkets failing to improve our diets, scorecard showsより

 

法律で規制されていない以上、こういった意識た知識を取り入れて行動するのも消費者次第です。

もし、この知識が取り越し苦労であれば、それほど幸せなことはありません。

しかし、これが事実だとしたら……。

 

お金では買えない“健康”を得ようと考えると、生活の利便性をとるか健康のリスクをとるかは自ずと答えが出るかと思います。

 

   

まとめ

・スーパーマーケットやオンライン食品購入の増加により、不健康な加工食品の消費が増え、肥満率が上昇している

・大手小売店は不健康な食品を積極的に販売・宣伝し、消費者の食習慣に大きな影響を与えている

・政府の規制強化や小売業者の健康的な食品販売促進が、食環境改善と肥満抑制の鍵となる

 

 

参考にした記事では、スーパーマーケットやコンビニにヘイトが集まるような内容ですが、“買う人がいるから売る人いる”というのが本質ではないかと考えています。

 

そういった食品が健康に良いかどうかを思考するのは、消費者個人の頭によるものです。

    

本記事をどう捉えるかも個人次第ですし、この考えを押し付ける気もありませんが、知っておくことで後に納得して行動するきっかけになるはずです。

  

自分は、「病気になって余命宣告されたけど、今まで美味しいもの食べられたからいっか!」というような強いメンタルを持ち合わせていないですし、まだまだやりたいことも沢山あるので、こういった記事は引き続きまとめていくでしょう。

  

多少なりとも参考になれば幸いです。

  

生きてさえいれば、あらゆる可能性が生まれるものです。

 

 

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