科学

スムージーや野菜ジュース……たった3日間の「ジュースファスティング」が健康に悪影響を及ぼす可能性あり

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オレンジ、セロリ、ビーツ、リンゴなどの果物や野菜をミキサーにかけ、ジュース(スムージー)にすることは、手軽に栄養を摂取しながら「体を浄化(デトックス)」する方法として広く知られています。

 

しかし、こうしたジュースに食事を置き換える「ジュースファスティング(ジュース断食)」は健康的でない可能性があります。

 

ノースウェスタン大学らが行った新たな研究によると、この食事方をわずか3日間行っただけで、健康に重要な食物繊維が不足する傾向があり、体内の細菌バランスが乱れる可能性があることが分かりました。

 

今回のテーマはそんなジュース(スムージー)を食事にした際の、体への影響について調べた研究についてです。

 

参考研究)

Effects of Vegetable and Fruit Juicing on Gut and Oral Microbiome Composition(2025/03/02)

 

 

ジュースファスティングが腸内・口腔内の細菌バランスに与える影響

この研究は、ノースウェスタン大学イリノイ大学の研究チームによって行われました。

 

研究者たちは14人の被験者を3つのグループに分け、それぞれ3日間にわたり異なる食事を摂取するよう指示しました。

 

1. ジュースのみを摂取するグループ(ジュースファスティング)

2. 植物由来の食品のみを摂取するグループ(食物繊維を含む通常の食事)

3. ジュースと通常の食品を組み合わせたグループ

 

その結果、ジュースのみを摂取したグループでは、口腔内の細菌バランスに顕著な変化が見られました。

 

Effects of Vegetable and Fruit Juicing on Gut and Oral Microbiome Compositionより

  

特に、糖分の摂取増加と関連する細菌が急激に増加し、炎症と関連するプロテオバクテリアの数が増えていたことが確認されました。

  

また、腸内細菌の変化は口腔内ほど顕著ではなかったものの、わずか3日間のジュースファスティングでも腸内の細菌バランスに影響が出ていたことが判明しました。

  

この結果の注意すべき点として、炎症を引き起こす細菌や認知機能の低下と関連する細菌が増加していたことが挙げられています。

 

 

ジュースファスティングのリスクと注意点

ジュースファスティングは、短期間で体をリフレッシュできると考えられがちですが、今回の研究結果は、それが必ずしも健康に良いとは限らないことを示唆しています。

 

ノースウェスタン大学の統合・料理医学の専門家であるMelinda Ring氏は、次のように警鐘を鳴らしています。

 

「多くの人はジュースを健康的なデトックス手段と考えているが、この研究はその考えに疑問を投げかけている。食物繊維をほとんど含まない大量のジュースを摂取すると、腸内細菌のバランスが崩れ、炎症や腸の健康悪化といった負の影響を及ぼす可能性がある。」

 

こういった負の効果が現れる要因として、研究では以下のようなものが指摘されています。

 

1. 食物繊維の不足

果物や野菜には豊富な食物繊維が含まれているが、ジュースにするとその多くが取り除かれてしまうため、血糖値の急上昇を招きやすくなる

通常、食物繊維は糖分の吸収を緩やかにし、腸内で善玉菌のエサとなることで腸内環境を整える重要な役割を果たしている。

しかし、ジュースにするとこうした効果が失われるため、腸内の細菌バランスが乱れやすくなりる。

  

2. 炎症を促進する細菌の増加

ジュースのみを摂取したグループで、炎症を引き起こす細菌の割合が増加していた。

これは、糖分の過剰摂取と食物繊維の不足が組み合わさることで、体内の炎症レベルが上昇する可能性を示唆している。

 

3. 口腔内細菌の急速な変化

ジュースファスティングを行った人の口腔内では、糖分を好む細菌が急増し、炎症や虫歯のリスクが高まる可能性がある。

特に、口の中は消化の第一段階であるため、食事の影響を最も早く受ける部位となる。

そのため、ジュースファスティングによる影響が、口腔内の健康にも大きな影響を与える可能性が考えられる。

 

 

ジュースを飲むならどうするべきか?

今回の研究では、ジュースファスティングをやめた後、2週間程度で口腔内および腸内細菌のバランスが元に戻ったことも確認されています。

 

したがって、短期間のジュースファスティングによる影響は一時的なものと考えられますが、それでも健康に良い影響があるとは言い切れません

 

ノースウェスタン大学の食品微生物学者であるMaria Luisa Savo Sardaro氏は、次のように指摘しています。

 

「ジュースダイエットの栄養組成、特に糖質や炭水化物の含有量は、腸内および口腔内の細菌バランスに大きな影響を与える。そのため、ジュースを摂取する際は、その影響を慎重に考慮する必要があry。」

  

このことから、ジュースを飲む場合は、以下のような対策を取ることが推奨されます。

1. ジュースではなくスムージーを選ぶ(食物繊維を残したまま摂取できる)

2. ジュースと一緒に固形食品を摂る(バランスの取れた栄養補給が可能になる)

3. ジュースの量を適度に調整する(過剰な糖分摂取を防ぐ)

4. ジュースを飲まない(糖分を追加する習慣をなくす)

  

ジュースファスティングは一見健康的な選択肢のように思えますが、今回の研究結果を踏まえると、必ずしも体に良いとは限らないことが分かります。

 

ジュースを摂取する際は、食物繊維を意識しながらバランスの良い食事を心がけることが重要です。

 

 

まとめ

・ジュース(スムージー)のみの食事を3日間行うだけで、口腔内および腸内の細菌バランスに悪影響を及ぼす可能性がある

・食物繊維が不足すると、炎症を促進する細菌が増加し、腸や認知機能への悪影響が懸念される

・ジュースを飲む場合は、スムージーにするか固形食品と組み合わせることで、健康へのリスクを軽減できる

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