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科学者たちが警告「真夜中に目覚めているべきではない」

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深夜に目が覚めると不安や孤独感が増し、普段は抑えている欲求が強まることはありませんか?

  

特に子どもの頃は、夜中に起きることへの不安を強く感じていた人も多いかと思います。

  

実は、こうした現象には科学的な根拠があります。

  

Frontierに掲載された最新の研究によると、夜間に目覚めているときの脳は日中とは異なる働きを見せ、ネガティブな感情や健康的でない行動を取るリスクが高まる

  

本記事では、深夜に起こる脳の変化とその背景に迫り、夜の時間帯に潜む危険性について探っていきます。

  

参考記事)

The Human Mind Isn’t Meant to Be Awake After Midnight, Scientists Warn(2024/10/22)

  

参考研究)

The Mind After Midnight: Nocturnal Wakefulness, Behavioral Dysreg  

  

夜中に活動することのネガティブな影響

 

夜に目覚めているときの人間の脳は、感情や行動の変化など日中とは異なる働きを見せます。

 

研究者たちは、この変化が人間の概日リズムに強く関係していると考えています。

  

2022年にアリゾナ大学によって発表された論文では、暗闇の中での脳のシステムがどのように異なるかについて報告されています。

 

彼らは、人間の身体と心が24時間の自然なサイクルに従って活動するという「Mind After Midnight」という仮説を立てており、これが感情や行動に影響を与えると考えています。

  

昼間は分子レベルや脳の活動が覚醒状態に合わせて調整されていますが、夜は通常、眠ることが基本とされるため、そうでない行動をとることで何らかの変化がもたらされるというものです。

  

  

進化と夜間のリスク

  

進化や行動の習慣という観点からも、人間は昼間の方が狩りや採集に向いており、夜は休息に最適な行動をとってきました。

  

かつて人間は夜に捕食者に襲われるリスクが高かったため、このリスクに対処するために、ネガティブな刺激に対する注意が夜間に特に高まると研究者たちは指摘しています。

  

この注意力の向上が、目に見えない脅威に迅速に反応するのに役立つ反面、ネガティブな思考にとらわれやすくなり、結果としてリスクの高い行動に走りやすくなることがあるというのです。

  

そこに睡眠不足が加わると、その意識状態はさらに問題を引き起こす可能性があります。

  

ハーバード大学の神経学者エリザベス・クレーマン氏は、「真夜中に目覚めている人は何百万人もいるが、彼らの脳は日中と同じようには機能していない」と述べています。

  
  

リスク行動とその背景

  

研究者たちは、真夜中の行動のリスクを2つの例を挙げて説明しています。

  

1つ目は、日中はヘロインの欲求をうまく管理できている人が、夜になるとその欲求に負けてしまうケース。

  

2つ目は、不眠に悩む大学生が、絶望感や孤独感を感じるようになるケースです。

  

これらの例は、自殺や自傷行為など命に関わる事態を引き起こす可能性があります。

  

事実、真夜中から朝6時までの間では、自殺のリスクが他の時間帯に比べて3倍高いという研究もあります。(Nocturnal Wakefulness as a Previously Unrecognized Risk Factor for Suicideより

  

この研究では、夜間に目が覚めていることが自殺のリスク要因であり、「概日リズムのずれが関与している可能性がある」と結論づけられています。

  
  

夜間の保護策が求められる

違法薬物や危険な物質も夜間に使用されることが多いです。

 

2020年にブラジルの薬物使用センターで行われた研究では、夜間のオピオイドの過剰摂取リスクが4.7倍高いことが明らかになっています。(Impact of 24-hour schedule of a drug consumption room on service use and number of non-fatal overdoses. A quasiexperimental study in Barcelonaより)

  

これらの行動の一部は、睡眠負債や暗闇の隠れ場所としての特性で説明できるかもしれません。

  

おそらく夜間における脳の神経学的な変化も影響していると考えられます。

  

クレーマン氏を含む研究者たちは、夜間の覚醒によるリスクから最も脆弱な人々を守るために、これらの要因をさらに調査する必要があると考えています。

  

現在、睡眠不足と概日リズムのタイミングがどのように人の報酬処理に影響するかについての研究は進んでおらず、パイロットや医師のように通常の睡眠サイクルが取れない人々が、どのように対処しているのかについて詳しく判明していません。

  

人間の脳がどのように働くかについて、私たちにはまだ驚くほど分かっていないことが多いため、今後の研究課題として挙げられています。

  

いずれにしろ、真夜中での活動は睡眠不足による健康被害だけでなく、精神的なリスクを伴うものとして考えておいた方がいいでしょう。

 

  

まとめ

・真夜中に活動していると、ネガティブな感情が強まり心身に対するリスクの高い行動をとる傾向がある

・夜間に注意力がネガティブな刺激に向かいやすくなり、さらに睡眠不足が加わると危険な行動や自殺のリスクが増える

・シフトワーカーなど、夜間に活動する人々の健康と安全を確保するために、さらなる調査が必要

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