科学

研究者が提唱、運動が二日酔いの治療法となる(トレント大学)

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飲み会やひとり酒など、楽しい夜を過ごした翌朝に頭痛や吐き気、疲労感に悩まされることは誰しも経験があるでしょう。

 

迎え酒や水分補給など様々な二日酔い対策が知られていますが、最近の研究によると、定期的な運動がこれら二日酔いの症状を和らげる鍵になるかもしれないことが示されています。

 

今回のテーマとして取り上げていきます。

  

参考記事)

New Study Reveals Exercise May Be The Ultimate Hangover Cure(2024/10/19)

 

参考研究)

Physical activity as a moderator of the association between alcohol consumption and hangovers(2024/08/30)

  

  

研究の概要

学術誌『Addictive Behaviours』に掲載されたノッティンガム・トレント大学による研究から、適度な運動は二日酔いの症状を改善する効果があることが示唆されました。

  

研究は過去3か月間に一度以上の二日酔いを経験した1,676人の大学生を対象に行われました。

   

すべての参加者は、週に最低一日は30分以上の中程度の運動をし、アルコール消費のパターン、運動レベル、二日酔いの頻度と重症度についてのオンラインアンケートに回答しました。

  

活動レベルは運動の強度と時間をもとに評価されました。

 

その結果、運動と二日酔い症状には有意な関連があることが明らかになりました。

  

予想通り、アルコールを多く摂取する人ほど二日酔いを経験する頻度が高く、症状も重くなる傾向がありました。

  

しかし、ランニングなどの心拍数が高くなる運動を行う人ほど。二日酔いの症状が軽減されることが示唆されました。

 

 

運動が二日酔いを軽減するメカニズム

  

この研究は、運動と二日酔いの軽減との関連を明らかにしたものの、そのメカニズムはまだ完全には解明されていません。

   

しかし、この相関性についてはいくつかの理由が考えられます。

  

  

・痛みの緩和 

二日酔いは頭痛や筋肉痛などの身体的な痛みを引き起こしますが、これはアルコールが脱水症状を引き起こし、血管の機能を低下させるためです。

  

また、アルコールは体内の炎症を促進し、サイトカインと呼ばれる免疫系の分子を放出させ、筋肉痛の原因となります。

  

さらに、アルコールは睡眠を妨げるため、翌日の痛みの感受性を高めることもあります。

  

一方で、運動はエンドルフィンという脳内のホルモンを分泌させ、これが自然な鎮痛剤として働きます。

  

定期的に運動をしていると、エンドルフィンの基礎レベルが上昇し、二日酔い時の痛みの感覚を軽減する可能性があります。

  

  

・睡眠の質の向上 

二日酔いは睡眠の質を悪化させます。

  

アルコールはREM睡眠(脳が休息し回復する睡眠サイクルの一部)を減少させ、頻繁に目が覚める原因となります。

 

しかし、定期的な運動は体内時計(サーカディアンリズム)の調整を助け、睡眠の質や持続時間を向上させることが知られています。

  

これにより、飲酒後の夜でもより良い睡眠を得られ、二日酔いからの回復を助ける可能性があります。

  

 

・代謝の改善 

定期的な運動は代謝の健康を向上させ、アルコールの効率的な処理を促進する可能性があります。

 

アルコールの代謝は主に肝臓で行われますが、代謝率が良ければアルコールとその副産物の体外への排出がスムーズになります。

  

また、運動は血行を改善し、アセトアルデヒドというアルコールの分解で生じる有害物質の排出を助ける可能性も考えられています。

 

このアセトアルデヒド極めて毒性が強く、顔面や体の紅潮、頭痛、吐き気、頻脈などの不快な症状を引き起こします。

  

  

・炎症の軽減 

アルコールは体の炎症反応を引き起こし、サイトカインと呼ばれる化学物質が放出されます。

 

これが二日酔いの症状を悪化させる要因となりますが、運動は抗炎症作用を持つサイトカインの生成を促し、炎症関連の不快感を軽減する可能性があります。

  

  

運動は二日酔いの特効薬か

 

運動が二日酔いを和らげるかもしれないということは分かりましたが、これが「治療法」ではないことに注意が必要です。

  

二日酔いを防ぐ最も効果的な方法は、適度な飲酒をする、もしくは飲まないことです。

 

しかし、付き合いなどでお酒を楽しむ際、二日酔いに苦しむことが多い人は、普段から30分程度の運動を定期的に取り入れることで、翌朝の辛さを少しでも軽減する手助けになるかもしれません。

  

  

研究の注意点

また、研究のいくつかの不明点も指摘されています。

  

例えば、飲酒のどのくらい前に運動をすることで二日酔いの軽減効果が得られるのかは明らかではありません。

 

また、研究は大学生を対象にしたもので、年齢層の異なる成人にも同様の効果が見られるかどうかについても、さらなる研究が必要です。

  

重要なのは、二日酔いのときに無理して運動するのではなく、体がすでに脱水状態でストレスを受けているため、むしろ逆効果になる可能性があることです。

  

二日酔いの際は、散歩やヨガなどの軽い運動を試すと気分が良くなるかもしれません。

  

この研究の結果を理由にお酒を飲みすぎることは推奨できませんが、運動が身体を鍛え、飲酒後の体調管理に役立つ可能性があることを示唆しています。

  

つまり、二日酔いのつらい朝を少しでも快適に過ごすための一助になるかもしれません。

  

 

まとめ

・定期的な運動が、頭痛や疲労感などの二日酔い症状を軽減する可能性が示された

・運動は痛みを和らげ、睡眠の質を向上させ、代謝や炎症の改善にも効果がある

・二日酔い時の無理な運動は避け、軽い運動が推奨される

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