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【チャールズ・ダーウィンの歴史⑦】ガラパゴス諸島とウミイグアナ

歴史
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【前回記事】

 

 

1835年9月半ば、ビーグル号はガラパゴス諸島へ到着します。

 

 

ダーウィンと言えばガラパゴス諸島という人もいるのではないでしょうか。

 

彼が進化論を導く重要な島であるため、“赤道直下にある生き物の楽園”というイメージがありますが、彼が感じたのは「島全体が不毛で、生命の気配がない」というパラダイスとは全く異なるものでした。

 

南アメリカ西岸部にある熱帯雨林を見てきたダーウィンにとっては、この地がなんとも味気ないものに見えたのでしょう。

 

ガラパゴス諸島は確かに熱帯の気候に当たりますが、南極から南アメリカ大陸の西岸を通る寒流(フンボルト寒流)の影響から、赤道直下とは思えないほど涼しく感じます。

 

乾燥した海岸沿いにはサボテンが生えている一方、ペンギンの姿も見えるという不思議な島でもあります。

 

そんな島を分析していくと、一部の例外を除いてほとんどの鳥は小さく地味で、植物は雑草のようなものばかりで、豪華できらびやかなものは見当たりませんでした。

 

そのためからか昆虫も少なく、山の一部の限られた環境で数種類を採取できただけでした。

 

誕生以来一度も陸地と接することがない島を海洋島と言いますが、ガラバゴス諸島はまさしくこの類になります。

 

ハワイ島や小笠原諸島も同じく海洋島であり、持ち込まれた外来種を除くと大きくて派手な種は見当たらず、どちらかいえば地味で小さな固有種が生息しています。

 

なぜ海洋島の動植物は地味なものが多くなるのかというのも、ダーウィンの観察以来解明されていない謎のひとつです。

 

 

ウミイグアナの実験

そんなガラパゴス島ですが、ダーウィンはここでウミイグアナに遭遇します。

 

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ウミイグアナはその名の通り、陸上ではなく海中で活動を行うイグアナです。

 

ダーウィンは、このイグアナに対してある実験を行いました。

 

この動物は、陸上での発見が多いことから、肺呼吸をして生活していたことが知られていました。

 

彼は重りをウミイグアナに装着し、海の中へと放り投げました。

 

そのうち呼吸ができずに死んでしまうだろうと思われましたが、一時間後に引き上げてみるとピンピンしていました。

 

次に、ウミイグアナの体を解剖し、胃の内容物を調べました。

 

そのほとんどが海の浅瀬では見られないアオサの仲間の海藻でした。

 

それまでこの動物は、海の中の魚などを食べていたと考えられていたため、ダーウィンの発見によってこの定説が覆されました。

 

陸上ではのっそりしているこのウミイグアナも、海の中となれば深い場所へ潜り、泳ぎも上手なダイバーだったのです。

 

ではなぜ海を得意とするこの地味なトカゲは、陸上であんなに鈍重なのだろう……。

 

ダーウィンはおどかしても海へ逃げようとしないウミイグアナを抱え、あえて海へ放り込みました。

 

しかし、何度やっても彼らは再び足元へ戻ってきます。

 

一体この習性は何なのか……。

 

ダーウィンはこう推測しました。

 

「海にはサメをはじめとした大型の捕食者がいるため、天敵から逃れるために陸に上がる。

 

一方、海洋島には大型の捕食者が渡ってこず、天敵がいないのだ。」

 

確かにこの考えはウミイグアナの習性にピッタリです。

 

現在では、海岸付近を泳ぐサメの胃の中からウミイグアナの肉が見つかっており、点滴となる捕食者がいることが分かっています。

 

また、陸上のサボテンなどを餌としない理由も、陸にはリクイグアナ(ガラパゴスリクイグアナ)が存在するため、生息環境を分けていると考えられています。

 

リクイグアナ Haplochromisより

 

この二種類のイグアナは、ガラパゴス諸島にのみ生息する生物です。

 

どうして二種類の似た生物がいて、どこからやってきたのでしょうか。

 

ダーウィンは、この二種類の生物は偶然別々の場所から来たのではなく、遥か昔に同じ種類だったものが、時を経てふたつに別れたのではないかと気づきました。

 

このイグアナとの出会いは、進化論のピースを埋める大きなきっかけとなりました。

 

 

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