哲学

【韓非子⑰】口は硬く、主体性を持ち、めんどくさがらない

哲学


【前回記事】

 

この記事では、中華戦国時代末期(紀元前403~紀元前222年頃)の法家である“韓非”の著書韓非子についてまとめていきます。

     

韓非自身も彼の書も、法家思想を大成させたとして評価され、現代においても上に立つ者の教訓として学ぶことが多くあります。

       

そんな韓非子から本文を抜粋し、ためになるであろう考え方を解釈とともに記していきます。

     

【本文】と【解釈】に分けていますが、基本的に解釈を読めば内容を把握できるようにしています。

     

今回のテーマは“人主(じんしゅ)に三守(さんしゅ)有り”です。

    

     

    

人主に三守有り

【本文】

人主に三守有り。

 

三守完(まった)きときは則(すなわ)ち国安(やす)くして身栄え、三守完からざるときは則ち国危うくして身殆(あやう)し。

 

何をか三守と謂(い)う。

 

人臣の途(みち)に当たるうるものの過ちと、誉臣(よしん)の情とを議すること有るとき、人主心に蔵(おさ)めずして、之(これ)を近習(きんじゅう)・能人(のうじん)に漏(もら)さば、人臣の言う有らんと欲する者をして、敢(あえ)て下近習・能人の心に適(かな)いて、而(しこう)して乃(すなわ)ち上以て人主に聞せずんばあらざらしむ。

 

然(しか)らば則ち端言直道(たんげんちょくどう)の人、見ゆるを得ずして、忠直日々に疎(うと)んぜられん。

 

人を愛するも独り利せざるなり、誉(ほま)れを待ちて後之(これ)を利す。

 

人を憎むも独り害せざるなり、非(そし)りを待ちて後之を害す。

 

然らば則ち人主に威無くして、重は左右に在り。

 

自ら治むるの労鄲(ろうたん)を悪(にく)み、群臣をして事を用うるものに輻湊(ふくそう)せしめ、因(よ)りて柄(へい)を伝へ藉(しゃ)を移し、殺生の機・奪与の要をして大臣在らしむ、是(かく)の如き者は侵される。

 

此を三守完(まった)からずと謂う。

 

三守完からざることは、則ち劫殺(きょうし)せらるるの徴なり。

 

【解釈】

君主には三つの守るべきことがある。

 

この三つが守られていれば国は栄え、身は安らかになり、完全でないと国は危うく、身は苦しむであろう。

 

一つ目は、君主が臣下の評判をあれこれ話さないことである。

 

臣下の一人が君主に対して執政の失敗や、重要なことを扱う高官の過失や、評判の良い名士の生活実情などを話してくれたとき、君主がそれを自分の心に留めておくのではなく、それを近しい者やお気に入りの臣などに漏らすと、臣下のうちで君主に意見を申し出たい者は、まず君主が贔屓にしている者たちに取り入ってから意見を伝えてくる。

 

こうなると、正直にきっぱりと者を言う人は目通りもできず、忠誠正義の臣は日に日に君主から遠ざかってしまう。

 

二つ目は、君主が主体的に意見を述べることである。

 

君主が臣下のあるものを好んだとして、自分の一存で臣に利を与えることをせず、周りの者がそのものを褒めたり謗ったりしてから賞罰を与えていては、君主に威厳がなく、周りの者が実権を握っているに等しい。

三つ目は、自らの権限は自ら行使することである。

 

群臣の復命や報告など、苦労がともない仕事を君主が自分で直接行うことを避け、執政の大臣に権利を渡すと、遂には臣民の生殺や賞罰の権利まで奪われる。

 

そのような君主は自らの地位も奪われるだろう。

 

君主が守る三つの事が完全に守られていないということは、いずれ姦臣に脅かされたり、殺されたりする前の兆候である。

 

 

口は硬く、主体性を持ち、めんどくさがらない

トップに忖度せず意見ができる環境とは中々貴重なものです。

 

組織が大きくなるにつれて、そういった場面も減り、トップも隅々まで目が行き届かなくなります。

 

しかし、他人から聞いた話を他の誰かにベラベラ話していると、組織運営での悩みごとや報告しにくいことまで広まってしまうと思われます。

 

そうなると重大なミスは隠され、報告されたとしても脚色された本質とかけ離れた報告しかされません。

 

もしそういった相談があったときでも、その内容を他人に軽々しく話すことはやってっはいけないと記されています。

 

ましてや、ミスの報告を聞いたからといって、他の仲間の前でその勇気ある部下を叱責したり、晒し者にするなどあってはなりません。

 

賞罰を淡々と与え、ミスをしない工夫を考え次に活かせばいいだけです。

 

もし組織のトップがそういった心構えを忘れ、臭いものに蓋をして人任せにするような仕組みがある場合、早めに環境を変えた方が良いのかもしれませんね。

 

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