雑記

【国富論⑫】必要以上の税をとってはならない〜租税の一般原則~

雑記

【前回記事】

アダム・スミス(1723~1790年)

       

この記事ではアダム・スミス国富論を読み解いていきます。

         

見えざる手、自由放任主義……、どこかで聞いたことがこれらの言葉はここから生まれてきました。

         

経済学の始まりともいえる彼の著書を通して、世の中の仕組みについて理解を深めていただけたら幸いです。

           

前の記事から第五編に突入し、主権者や国家の経費についての内容をまとめていきます。

    

前回は、“公共の経費”についてまとめていきました。 

    

主権者の第三の義務として、公共土木所業と公共施設を建設、維持する義務があると述べたスミス。

  

国がやるべき公共事業としてインフラや教育を軸に、経費の必要性を説いていました。

    

今回のテーマは“租税”についてです。

  

国富論の第五編 第二章 第二節では、国の経費となる税をどのような形で国民に負担させるべきかについて記されています。

  

税のあるべき姿とは一体何なのか、国富論からまとめていきます。

  

国家の経費の源泉

18th Century Taxes より

〜引用 第五篇 第二章冒頭または第一節~

  

社会を防衛し、厳守の威厳を維持する経費ばかりではなく、国家の基本制度上特定の収入が全然あてがわれない他のすべての政府の必要経費を賄うべき収入は、第一に、主権者または国家に固有なものとして属し、人民の収入からは独立している、何らかの元資または、第二に、人民の収入か、そのいずれかからこれを引き出すことができる。

  

主権者または国家に固有のものとして属しうる元資または諸収入の源泉は、資財または土地のいずれかに存するに違いない。

 

主権者は、他のどのような資財の所有者とも同じように、それを自分で使用するか、またはそれを貸し付けるかのいずれかすることによって、それから収入を引き出すことができる、彼の収入は、前者の場合には利潤であり、後者の場合には利子である。

  

〜引用ここまで~

  

公的収入は、主権者がもつ財産か、人民の収入から生じるということを言っています。

  

主権者が持つ財産としては、資材または土地であり、資材からの収入はそれを売ったりして得られる利潤か、貸し付けて得られる利子があります。

  

資財と土地のは以下に続きます。

  

  

資財からの利潤より土地収入

Money in Colonial Times より

〜引用 第五篇 第二章 第一節~

 

とはいえ、資財や信用は不安定で消失しやすいから、この性質故にそれらは政府に安全性と威厳とを与える唯一のものとしての、確実で強固で永続的な収入の主要な元資として信頼するには不適当なものになる。

  

土地はこれよりもいっそう安定的で永続的な性質を持つ元資であり、それだけに、公有地の地代は、既に牧畜国の域を超えてはるかに前進した数多くの大国民の公共的収入の主要な源泉であった。

 

ギリシャやイタリーの古代共和国は長い間国家の必要諸経費を賄う収入の大部分を、公共の土地の生産物または地代から引き出していた。

 

王領地の地代は、長い間、ヨーロッパの昔の主権者の収入の大部分を成していたのである。

 

ヨーロッパの文明化された君主国の大部分のものの現状においては、もしその国の土地全部がひとりの所有者に属している場合、多分そうされるであろうようにして管理されるならば、この全ての土地の地代をもってしても、平時においてさえ、人民から徴収される経常収入の学はおそらく及ばぬであろう。

  

〜引用ここまで~

 

スミスは、君主が資材を動かして成功した試しがないという例を引き合いに、商人ではない者がモノや財産を動かす不安定さを指摘しています。

  

それに対して土地からの収入は、作物などの生産者とそれを消費する者、まさに需要と供給が自然に噛み合うため、安定した収入源であるとしています。

  

しかしこれだけでは拡大していく国家の経費には十分ではないため、“租税”で賄う必要があると述べ、次の節に繋がっていきます。

 

  

租税についての一般原則

18th Century Taxes より

〜引用 第五篇 第二章 第二節~

 

個々人の私的な収入は究極的には三つの異なる源泉から、即ち地代、利潤及び賃金から、生じるものである。

  

あらゆる租税も、結局これらの異なる部類の収入のいずれかから、または無差別にそれらのすべてから支払われるに違いないのである。

  

私は第一に、地代にかけることを目的とする租税について、第二に、利潤にかけることを目的とする租税について、第三に、賃金にかけることを目的とする、租税について、そして第四に、私的な収入のこれら三つの源泉の全てに無差別にかけることを目的とする租税について、できるだけ十分に説明するよう努力するであろう。

  

ここの租税の吟味に入る前に、租税一般についての次の四つの一般原則を前提として述べておく必要がある。

  

一、あらゆる国家の臣民は、各人の能力にできるだけ比例して、言い換えれば、彼らがそれぞれ国家の保護のもとに享受する収入に比例して、政府を維持するために貢納するべきものである。

  

一大国民の個々人に対する政府の経費は、大所有地の共同借地人に対する経費のようなものであって、これらの全ての共同借地人はこの所有地における彼らのそれぞれの利害関係に比例して貢納することを義務付けられているのである。

  

二、各個人が支払う義務を負う租税は確実でなければならない、つまり恣意的であってはならない。

 

支払い時期、支払方法、支払金額のすべては貢納者にも他のあらゆる人にも明白で、平易なものでなければならない。

 

三、あらゆる租税は、貢納者がそれを支払うのに、おそらくは最も多くの便宜がある時期と方法とにおいて徴収されなければならない。

  

土地の地代または家屋の賃料に対する租税が、こういう地代や賃料がふつう支払われるのと同一時期に支払いうるものであれば、貢納者が支払うのに、恐らくは最も便宜の多い時期に、即ち、彼が支払うための手段を恐らくは最も多く持っている時期に、徴収されることになる。

  

贅沢品のような消費財貨に対する諸々の租税は、結局のところ、全て消費者によってしかも普通その人にとってきわめて便利な方法によって支払われる。

  

彼はこの財貨を買う必要がある度に、少しずつ租税を支払うわけである。

  

しかも彼が好むままに買おうが買うまいが、それは自分の勝手なのであるから、万が一彼がこういう租税のおかげで何か大変な不便を被ることがあっても、それは自業自得というほかはないだろう。

(四、あらゆる租税は……に続く↓)

  

〜引用ここまで~

  

個人の稼ぎによって税金を変えること、税金の支払うタイミングを明白にすること、支払うための手段が柔軟であることの必要性を説いています。

  

また、嗜好品に対する課税や現代で言う消費税の概念もここであらわになっていますね。

  

租税がどこから来るのかを説明した文章ですが、ここでは優先して知っておくべき一般原則のみを紹介していきます。

 

  

必要以上の税をとってはならない

18th Century Taxes より

〜引用 第五篇 第二章 第二節~

  

四、あらゆる租税は、それが人民のポケットから取り出すにしても、ポケットの外にとどめておくにしても、その分が国庫に納入される分以上になることをできるだけ少なくするように考案されなければならない。

 

租税が人民のポケットから取り出すにしても、ポケットの外にとどめておくにしても、その分が国庫に納入される分より非常に高くになり得るのは、次の四つの仕方においてである。

  

第一に、租税の徴収に多数の官吏を必要とし、彼らの補給が租税のあがりだかを食い尽くし、しかも彼らの約束がもう一つの別の追加的な租税を人民に貸すようなことがあり得る。

  

第二に、租税が人民の産業活動を妨害し、非常に大勢の人々に生活資料や職業を与えるかもしれぬような事業の一定の所部門に人民が従事するのを阻止することがあり得る。

 

つまり、租税は一方では人民に納税を義務付けておきながら、他方では人民がそのおかげでいっそうたやすく納税し得る元資のあるものをこのようにして減少させ、否おそらく台無しにしてしまうことがあり得る。

  

第三に、租税を企てて失敗する不幸な人々に没収、その他の刑罰を科すことによって、租税はしばしば彼らを破滅させ、引いては社会が彼等の資本の運用を通じて受け取れたはずの利益を無にしてしまうことがあり得る。

  

第四に、人民は徴税人の度重なる臨検や、嫌な検査に服さなければならないから、租税は彼らにしなくてもいい手数をかけさせ、迷惑を及ぼし、圧制を加えることが少なくなかろう。

  

そして、迷惑というものは厳密に言えば費用ではないにしても、あらゆる人は喜んで、それを支払って迷惑を免れたいと思うその費用と等価であることは確かである。

  

諸々の租税が、主権者にとって利益になるというよりも、しばしば人面にとってのはるかに大きな耐え難い負担になるのは、これらの四つのこ異なる仕方のいずれかによってである。

 

〜引用ここまで~

  

必要以上に税金を払わせることや、そのきっかけを作ることの悪さをまとめています。

 

不要な役人、役所を置いて税が使われること、新しい事業や試みに必要以上の罰則を設けることなど、上手くコントロールできない場合は生産活動が妨害されてしまうことを指摘しています。

  

  

まとめ

・国家を維持するための経費は国民の収入や公的な土地収入など

・頼りは国民の収入によるものの方が大きい

・国民の収入は4つの租税によって回収される

・租税には4つの一般原則がある

①個人の能力に比例すること

②支払いの方法や条件が明確なこと

③支払いは柔軟に対応できるようにすること

④必要以上に税をかけないこと

  

スミスはこの話題を通して、“国民を貧乏にする税金は拒否しなければならない”ことを主張しています。

  

富の再分配についてもここで触れており、貧者には最低限の税を、富者には彼らが持っている資材に比例した税を徴収し、国全体として富む仕組みが理想とされています。

  

一方、富裕層への税金を重くしても、本来国に納めるはずの富者たちが国外出ていっては元も子もないため、どこかでバランスを取る必要があることも課題ですね。

  

現代でも様々な国家で大きな課題となっている点でもあります。

【次回記事】

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