宗教芸術

時代を反映する福音書の絵〜東方三賢者の礼拝〜

宗教

東方三賢者

 

東方三賢者の礼拝はマタイの福音書の一部に書かれている3人の人物です。

(マタイの福音書はキリスト教における聖典、いわゆる新約聖書に納められた4つの福音書のひとつです。

 

東方三賢王や東方三博士とも訳されることもあります。

 

東方の地から星に導かれて進み、イエスとイエスの母マリアに出会ったとされています。

 

福音書には彼らの見た目など詳細なことは記されていません。

 

イエスらに対し黄金、乳香、没薬を捧げたと記されていることから、3人だと考えられています。

 

今回はそんな彼らを描いた絵画についての話です。

 

多く記されていないことが逆に多くの解釈を生み、様々な表現がなされています。

 

 

ビザンティン美術

サンタポリナーレ・ヌオヴォ教会のモザイク画「東方三賢者の礼拝」

 

イタリアのサンタポリナーレ・ヌオヴォ聖堂に描かれたモザイク画に、三人の男性が捧げ物をしている姿として描かれています。

 

青年、成人、老人と区別されています。

 

この絵が描かれたのはビザンツ帝国が繁栄した時代ですが、それ以前のローマ時代では異教の司祭の姿で描かれることが多くありました。

 

このモザイク画では豪華な衣装を身に纏い、バルタザール、メルキオール、カスパールという名前が付けられています。

 

この頃から聖書において重要な人物として認知されていたようです。

 

サンタポリナーレ・ヌオヴォ聖堂の内部

 

 

ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ

ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ作「マギの礼拝」1423年

 

ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノは、金と宝石をふんだんに使った豪華なテンペラ画を描きました。

 

星に導かれ東方からやってきた賢者たちが、キリスト(新生児)と出会った場面を描いています。

 

 

教義の通りにキリストやマリアは質素な装い、それに対し三賢者たちルネサンス様式の豪華絢爛な衣装が印象的です。

 

賢者たちが辿ってきた道には彼らの一行や共に旅をした動物が所狭しと配置され、絵の依頼者やその関係者なども描かれています。

 

また絵の下段にはキリストの降誕、エジプトへの逃避、神殿奉献が表現されています。

 

 

アルブレヒト・デューラー

アルブレヒト・デューラー作「東方三賢者の礼拝」1504年

 

アルブレヒト・デューラーはフリードリヒ3世の依頼にて、教会の祭壇に飾るための絵を描きました。

 

この頃に交流が盛んだったヨーロッパ、アジア、アフリカの3つの大陸を象徴するため、肌の色や風貌を変えて描かれることが多くなります。

 

赤い服を着た老人、深緑の服に装飾を施した成人、紺の服を着た黒人の順で描いたこの作品。

 

デューラーは2番目の深緑の成人を自身の自画像として描いています。

 

この絵では北方美術とイタリア美術の特徴があると言われており、彼の画風に大きな影響を与えたとして重要な絵であるとされています。

 

 

ジェームズ・ティソ

ジェームズ・ティソ作「東方三賢者の礼拝」1886〜1894年頃

ティソは中東の衣装を纏い隊列を組んで進む3人の賢者とその一行を描いています。

 

内縁の妻を失ったティソが、教会の典礼に感銘をうけて描いた作品と言われています。

 

当時の移動手段であるラクダに跨る姿や荒野を舞台として表現していることから、その頃の時代背景を研究し、忠実に再現しようとする意思が感じられます。

 

  

最後に

それぞれの絵に時代背景や画家の意識が散りばめられていますね!

 

歴史的に貴重な作品であると同時に、文化的な解釈の違いも感じられて面白い題材だと思います。

 

他にもボッティチェリやブリューゲルなどの巨匠も作品を残していますが、また別の機会があれば紹介しようと思います。

  

そうそう、あとあのレオナルド・ダ・ヴィンチもこの三賢者をテーマに絵を描いたそうな……。

 

レオナルド・ダ・ヴィンチ作「東方三博士の礼拝」1481年

 

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