(↑前回記事)
前回の記事では、資本家による労働者のピンハネについてまとめていきました。
当時のイギリスの農耕労働者を例に古典経済学とマルクス経済学を比較すると、前者では約75%のピンハネが、後者では約300%のピンハネがあるとされています。
古典経済学で示された“剰余労働時間÷総労働時間”では、ピンハネ率が100%を超えることがありません。
そのためマルクスは正確な搾取の割合を測ることはできないと考え、労働者は不遇の中で働いていると主張しました。
今回はそんな労働者に与えられる賃金についての話です。
前回の記事で述べた、労働者が搾取される価値について、“給料”や“賃金”を軸にまとめていきます。
言葉がややこしいところもあるので、長くならないように書いていきます。
労働力の価値と労働の価値
資本主義社会では、労働者が受け取る賃金が“労働の価格”として現れるとマルクスは考えました。(価格=価値を貨幣で表した量)
すると労働の価格は労働の価値を表していることになりますが、一般的にそれを不思議に思う人は誰もいません。
しかし彼はこの労働の価格や価値について、労働者自身が正しく認識する必要があると主張しています。
労働者は資本家に労働力を売っています。
1日8時間の労働をすると仮定し、その内5時間を自分の給料を生み出す仕事の時間と考えて話を進めます。
この5時間が、今までで言うところの“必要労働時間”ですね。
残りの3時間は、資本家の利益に直結する剰余価値を生み出すための“剰余労働時間”になります。
労働者に支払われる一日の給料が8,000円だとすると、資本家は8,000円で労働者の労働力を一日分買っていることになります。
当たり前のことを言っているように聞こえますが、マルクスによるとこれは“労働力の価値に対する対価”ではなく、“労働の価値に対する対価”であると主張しています。
一体どういう違いがあるのでしょうか?
次の項にてお伝えします。
労働力の価値と労働の価値
まず労働力の価値と労働の価値の違いについて整理します。
【労働力の価値】
労働者が身につけている技能や体力など、働くこと自体のこと
【労働の価値】
それら技能や体力を使い、労働者が働いたことによって生み出される価値
先ほどの例でいくと、資本家は8,000円で労働力を買っています。
資本家は労働力に目をつけて対価を払っているように見えます。
しかし実際資本家が関心を持つのは、商品を作ったという結果、つまり“労働”の部分のみです。
労働者が売っているのは“労働力”、資本家が実際にお金を払うのは“労働”……。
もし労働者が労働力ではなく労働に対して対価をもらうとした場合、8時間の労働12,800円が妥当となります。
実際には機械の維持費などの経費がかかるので、12,800円満額は貰うことはできませんが、8,000円を超える対価をもらうことができると考えられます。
この労働と労働力の微妙な違いは、必要労働や剰余労働、不変資本や可変資本の違いさえも隠してしまうとマルクスは述べています。
まとめ
・労働者は労働力を売り、資本家はその労働力を買っている
・しかし実際に資本家がお金を払うのは労働力ではなく労働の価値
・この微妙な差によって搾取の実態が見えにくくなる
以上、資本論から労働力の価値と労働の価値についてのまとめでした。
前回記事の主題である資本家によるピンハネの正体も、この話によって明らかになってきましたね。
今回は内容がややこしいのもあり、長すぎないようにまとめました。
次回の資本論は、日給や時給など現在でも多く取り入れられている給料制についての話になります。
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