(↑前回記事)
前回の記事では資本家と労働者の関係についてまとめていきました。
資本家は+αの利益を追求し、その利益を出すのは労働者になる……。
労働者がある一定以上働くと、その分が+α(剰余価値)として資本に変わっていく……。
だから資本家は労働者を長く働かせようとする……。
というのが前回の内容です。
今回は労働者が長く働いたときに現れる+αの価値に注目し、資本家と労働者の搾取の構造についてさらに踏み入っていきます。
ちなみにマルクスは「資本論はこの第8章から読むと良い。」とオススメしています。
これからまとめるのはその第8章に書かれている内容になります。
それではまずは、資本家が求める時間についての話です。
剰余労働時間を求める資本家
労働者の1日には、賃金分の価値を生み出す“必要労働時間”があります。
そしてもう一つ、剰余価値を生み出す“剰余労働時間”があります。
労働者目線で見るとこのふたつは、やることもやる場所も変わらないので労働しているという点に違いは感じられません。
一方資本家目線でみると、必要労働時間は労働に対する最低限対価を生産する時間になります。
(労働に対する最低限の対価=再び生産活動を行えるだけの生活費に充てられるもの=給料)
そして剰余労働時間は資本家が求める剰余価値を生み出す時間なのです。
例えば、必要労働時間が6時間だったとします。
労働者が6時間だけ働いたとしたら、資本家は労働者へ渡す賃金分の生産しかされていないことになります。
つまり何の得もないということです。
資本家が求めるのは剰余価値であり、6時間と1秒以上の剰余労働時間なのです。
労働者の抵抗
では労働者は死ぬまで資本家こき使われ、長時間の労働に耐え抜かなければいけないのでしょうか。
労働者には労働者の生活があります。
彼らは労働時間の限界を定めるなど待遇の改善を求めます。
マルクスが資本論を執筆している頃にはイギリスがいち早く工場法を制定し、労働時間短縮の動きを見せていました。
それまで12時間労働だったものが10時間労働に規制され、国は工場の監督者に報告書を提出するよう指示していました。
しかし労働者への負担が減ることはありません。
1分1秒が資本家の利益になるのであれば、休憩を無くす、昼休みを短縮する、挙句の果てには報告書に載らない時間外労働を強いる……。
など労働者に負荷を強いる方法はいくらでもあります。
資本家はあらゆる方法で労働者を働かせようとするのです。
この話は時代を超えた現在でも変わりませんね。
この構造が自分達の生活からイメージしやすいですね。
だからマルクスは「資本論はこの第8章から読むと良い。」とオススメしているのですね。
子どもの労働者
上で説明したように、イギリスで工場法が成立すると労働者の搾取に一定の制限が設けられましたが、目の届かない場所では野放しになっている状況がありました。
ある工場監督官の報告によると、子どもが過酷な環境で働かされていたことが分かります。
~とあるレース工場にて~
ここでは9歳から10歳ほどの子どもたちが厳しい環境で働かされていた。
不潔なベッドで寝ている彼らは、朝方2~3時に叩き起こされ夜の11まで働かされることがほとんどだ。
手足は痺れ、見た目はボロボロになり、人間性のかけらもない。
~また別の工場にて~
ここの工場では7歳10ヶ月になる子どもが働いていた。
毎朝6時に工場に入り、夜の9時まで働いていた。
徹夜をすることもあり、2日連続の徹夜もあったという。
昼休みは1時間ももらったことがない。
週末はいつも30分だ。
そんな子どもが工場に8、9人いた。
子どもは給料が安くてすみ、純粋で反抗しないことから労働力として重宝されていました。
工場労働者のおよそ20%が18歳未満の労働者である工場もあった程です。
資本家は徹底して必要労働時間の先にある剰余労働時間を確保しようとします。
これは単純に労働時間の延長だけではなく、休む時間を奪い取り、奴隷のような労働者を生み出す要因になっているとマルクスは主張しました。
資本家VS労働者
労働者は継続的に仕事ができればいい、教育の時間、家族や友人との時間、休日の礼拝の時間……、資本家にとってはそれらはの時間は全て無駄な時間でしかありません。
徹底的に時間を搾取する資本家に労働者たちは黙っていません。
奴隷のような日々を脱するために、“労働基準日”を決めるための戦いがはじまります。
デモやストライキで働く場所を失う労働者も続出し、正に命がけの反抗です。
彼らの行動の結果、1802年に労働法が制定されます。
しかしこの労働法もほとんど意味がありませんでした。
隠れて長時間労働を強いる資本かは後をたたず、たとえ労働法違反で資本家を裁こうとしても、その裁判の判事は決まって資本家だったからです。
その後1833年、1844年と改正に次ぐ改正によって、夜間労働の禁止や労働時間の大幅な短縮、そして公正な裁判の方法などが決まっていきました。
それでも資本家が工場法を無視して無罪を勝ち取るような判決が出たりと、いたちごっこが続いていました。
しかしこの後、労働者と資本家の争いは急激に減っていきます。
機械工業(いわゆる大工業)が発展してきたからです。
まとめ
・必要労働時間=労働者が生活できるだけの給料(労働者の価値)分の時間
・剰余労働時間=剰余価値を生み出す時間
・資本家は1分1秒でも剰余労働時間を欲する
・資本家による時間の搾取に労働者が反発し労働法が定まる
・労働法の下でも対立があったが、機械工業の発展で争いは減っていった
以上、資本家と労働者の対立についてが書かれた第8章はここで終わりです。
労働時間の際限なき延長も、今の社会では他人事ではありませんね。
労働者の弱みにつけこんだ、いわゆるブラック企業というものも存在します。
程度の差はあれど、マルクスは資本主義社会においてはこの構造は避けられないと考えていたことが分かりますね。
少し身近に感じる内容でした。
さて次回は、資本家と労働者の対立が下火になった要因である機械工業の発展についての話です。
資本論として第13章に飛びますが、話としてはコチラを先に紹介した方がスムーズなので、あまり気にせずに読んでください!
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