前回紹介したイムホテプ(↓記事参照)同様、ハトシェプストはエジプト史に残る類まれな生涯を歩みました。
ハトシェプストとは“最も高貴な女性”を意味する名です。
彼女は幼きトトメス3世に変わり、ファラオとしてエジプトを統治した人物です。
男しかファラオとして認められない古代エジプト時代に、唯一ファラオを名乗った人物でもあります。
ファラオ時の即位名は“マアトカーラー”。
マアト=真実
カー=魂
ラー=太陽神ラー
意味は、真実なるラーの魂orラーの魂は真実なり的なニュアンスですね。
はじめはトトメス3世の後見人とみなされていましたが、彼女は政治においてその手腕を遺憾なく発揮し、後にトトメス3世が築く帝国の基礎を創り上げました。
自ら男装をし壁画に描かせるなど、熱心に国政に関わりました。
実権を握った最初の頃は国外に遠征しましたが、基本的には平和主義を掲げ、特に貿易を重視しました。
地中海東岸のビブロスや東アフリカのプント国に向けて交易団を派遣し、象牙や乳香などの貴重品や資源を持ち帰らせていたと言われています。
これらの交易によって蓄えられた蓄財は、後のトトメス3世の時代に大いに役立つことになります。
また、カルナック神殿にそびえ立つ高さ30メートルにもなるオベリスクを建造するなど、歴代のファラオのように巨大建造物づくりにも貢献しました。
ハトシェプストの存在抹消
そんなハトシェプストは50歳程で亡くなることになります。
彼女のミイラには骨まで達する悪性腫瘍や糖尿病の跡などがあり、病死である可能性が高いことが分かっています。
政権がトトメス3世に移ると、壁画からハトシェプストの名前を削り取るなど、彼女の痕跡を抹消しようとした跡が残っています。
トトメス3世との不仲説や、女性がエジプトを統治した歴史を消すため説など、その理由は現在でも分かっていません。
コメント