1960年代、イェール大学の心理学者スタンレー・ミルグラムは、人は他人に対してどこまで残虐になるのかを試す実験をしました。
【実験】間違えたら電気ショック
まずスタンレーは、弁護士から建設労働者まであらゆる社会的な階層からなる成人男性40人を被験者に選び、報酬を与える約束をして実験を始めます。
①「教師」と「生徒」に分けられ、被験者は教師として実験に参加
②生徒に対してあらかじめ決められた問題を出題
③生徒が間違える度に教師役は、手元のボタンを押して生徒に電気ショックを与える
【ショックの強さ】
・15ボルト:軽度のショック
・75ボルト:中度のショック
・135ボルト:強いショック
・195ボルト:かなり強いショック
・255ボルト:激しいショック
・315ボルト:非常に激しいショック
・375ボルト:危険で苛烈な衝撃
・435ボルト:(但し書き無し)
・450ボルト:(但し書き無し)
④しかし実際は生徒たちは研究チームが用意したサクラ(役者)で、押された電気ショックの強さに応じて演技をする
【演技】
・75ボルト:不快感をつぶやく
・120ボルト:苦痛を訴える
・135ボルト:うめき声をあげる
・150ボルト:絶叫する
・80ボルト:「痛くてたまらない」と叫ぶ
・270ボルト:苦悶の金切声を上げる
・300ボルト:壁を叩いて実験中止を求める
・315ボルト:壁を叩いて実験を降りると叫ぶ
・330ボルト:無反応
・435ボルト:無反応
・450ボルト:無反応
⑤被験者が実験の中止を申し出た場合、白衣を着た権威者が顔色を一切変えずに実験の続行を促す
⑥権威者が4度実験の続行を通告しても被験者が実験の中止を申し出た場合、その時点で実験中止
【実験の結果】
実験前の予想としてイェール大学で調査をしたところ、450ボルトまで電流を流す人は1.2%程度であろうと考えられていました。
しかし実験の結果はスタンレーの予想に反するものでした。
被験者の約65%が最後の450ボルトまで罰を与え、生徒役には心臓病があることを聞いても変わりませんでした。
良心の呵責に耐えかね、実験の中止を申し出る人もいましたが、白衣を着た権威者が強く実験を促し、
「あなた(被験者)に責任はない、我々が全ての責任を負う」
ということを伝えると、300ボルトの罰を与えるまでは実験の中止をする者はいませんでした。
この研究によって、普通の人々は権威者がいるだけで、非人道的な行為を行うようになってしまうことが明らかになりました。
このことは、第二次世界大戦時のホロコーストや、ベトナム戦争時のソンミ村虐殺事件など、現代の残虐な事件を説明するのに活用されています。
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