先の流行病の際、ビタミンDが病気の予防につながるとして注目を浴びた時期がありました。
これまでの研究から、ビタミンDは筋肉や骨の構築に重要であり、不足すると筋肉の現象や転倒のリスクが増加することが分かっています。
人間が体内で生成できる数少ないビタミンですが、年齢とともに生成する量が減ってくるとされており、日光を浴びることで生成を促したり、食事などから追加で摂取することが望ましいと言われています。(成人 約15μg/日)
そんな老いとともに薄くなっていく体内のビタミンDですが、最近の研究では一般的に推奨されているサプリメントによる追加摂取の効果に疑問が持たれています。
今回は、そんなビタミンDを外部から摂取することについてと、その効果に言及した研究の紹介です。
参考記事)
・Could Vitamin D Be The Secret to Slowing Human Aging?(2024/04/19)
参考研究)
・Targeting the Hallmarks of Aging with Vitamin D: Starting to Decode the Myth(2024/03/21)
サプリ等で摂取するビタミンDと健康への効果
イタリアのペルージャ大学は、老化に対するビタミンDの効果について、証拠が不十分であるという旨の声明を出しています。
本研究では、テロメアの短縮、遺伝子の不安定さ、DNA上の分子、慢性炎症など生物的な老化に対するビタミンDの潜在的な影響を調べた観察研究と臨床試験をまとめ、その効果を分析しました。
臨床医は長い間、骨粗鬆症や骨折の予防にビタミンDサプリメントを推奨してきました。
これは、冒頭でも述べたように、ビタミンDにはカルシウムの吸収を助ける作用があることが知られているからです。
ビタミンDは、卵やシャケ、キクラゲなど特定の食品に含まれていますが、インスタントラーメンや菓子パンなど偏った食事が溢れている現代では、不足しがちとも言われています。
しかし、最近の臨床試験では、ビタミンDサプリメントが、健康な人の加齢に伴う骨量減少や骨折の予防に必ずしも役立つわけではないことが判明しました。
ペルージャ大学の老年医学専門家であるカルメリンダ・ルッジェーロ氏らは、「これまでの研究は主に前臨床[動物]に基づいており、人間でも同じこと言えるかどうかは証拠に乏しい」と述べています。
ビタミンDレベルが低い人はそうでない人よりも生物学的に年齢が高いため、ビタミンDがエピジェネティックな老化を遅らせる可能性があることを示唆する研究もあります。
しかし、ビタミンDの補給はDNA損傷の軽減に役立つ可能性がありますが、テロメアの長さには影響を与えないようです。
人体での研究は非常に少なく、結果はまちまちであるため、ビタミンDサプリメントがどのくらいの用量で、どの年齢で効果があるのかについての証拠はほとんどありません。
一部の研究では、特定の用量(50μg/日)のビタミン D を摂取することが一般人にとって安全であると示唆したものもありますが、それはすべての人にとって当てはまらない可能性があり、大量の摂取は重大な健康被害につながる可能性があります。
逆に、低レベルのビタミンDをサプリなどで補充するのが効果的であるように思えるかもしませんが、専門家は「サプリメントの形でより多くのビタミンを摂取することが必ずしも健康に良いとは限らない」と述べています。
理由の一つとして、特定の成分しか入っていないサプリに頼ることは、本来人が摂取するべきバランスのとれた食事や、外出して体を動かすことなど、健康を改善するためにとるべき行動を無視する可能性があるからです。
ルッジェーロ氏ら研究者たちは、「老化のコントロールにビタミンDが関係している可能性を理解しているにもかかわらず、私たちの身体における作用には謎が多い」と結論づけています。
この研究から学ぶことは、サプリなど特定の特効薬に頼ろうとするより、食事を見直したり、太陽の光を浴びて運動したりと、普段の習慣から見直す方が良いということでしょう。
この論文のレビューはNutrientsにて確認することができます。
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