【前回記事】
この記事では、山口謠司氏が著した“面白くて眠れなくなる日本語学”より、個人的に興味深かった内容を紹介していきます。
著書内で語りきれていない点などもの補足も踏まえて説明し、より雑学チックに読めるようにまとめていく積もりです。
今回のテーマは“明治頃の日本語の発音”です。
「てふてふ」は「蝶々(ちょうちょ う)」、「けふ」は「今日(きょう)」など、古い言葉を現在の日本語に当てはめるとどうなるかを学校で学んだことがある人も多いのではないでしょうか。
いわゆる歴史的仮名遣いと呼ばれるものですね。
実は明治時代中頃まで、東京の人達でも一部の言葉を歴史的仮名遣いで発音していたことが分かっています。
今回はそんな最近まで使われていた歴史的仮名遣いの記録について紹介します。
陳天麒が記録した明治頃の日本語の発音
「苦滑希潑阿痕」
この漢字は当て字ですが、何と読むでしょう。
これは、明治23年(1890年)陳天麒(チン テンキ)という清朝人が、東京で発音されていた日本語を中国語の発音に当てたものです。
正解「菓子パン」です。
「苦滑希」→「クヮシ」
「潑阿痕」→「パァン」
と発音されていたことが記録されています。
つまり、当時の日本人は「菓子パン(カシパン)」を「クヮシパァン」と言っていたのです。
では、これはどうでしょう。
「搿烏滑欲皮」
↓
↓
↓
↓
↓
これは、
「搿烏滑」→「グヮツ」
「欲皮」→「ヨウビ」
と発音し、月曜日を指します。
当時の人は「グヮツ曜日」と発音していたようです。
続いてこれはどうでしょう。
「苦滑欲皮」
↓
↓
↓
↓
↓
これは、
「苦滑」→「クヮ」
「欲皮」→「ヨウビ」
つまり火曜日のことです。
当時の人は「クヮ曜日」と発音していたようです。
明治33年(1900年)になると、政府は“小学校令施行規則(第二号表)”を発布し発音の統一を図ります。
これにより、「クヮ」を「カ」、「グヮ」を「ガ」と発音するようになっていくのです。
明治時代といえば、歴史的に見ると今からそう遠くない過去の話ですが、その頃と今では言葉の発音が異なっていたようですね。
江戸時代まで遡ると、地方と江戸では言葉がほとんど通じなかったと言われていますが、近代化につれて言語の統一化が図られたことで、意思疎通が容易になりました。
現在でも地方の方便で話されると意味が分からなかったりすることもありますが。
祖母がまだ存命だった頃、「うどん」を「うとん」と発音していて、なんのこっちゃと思っていましたが、それもこういった昔の日本語の発音からきていたのですね。
そんな地域独自の言葉も、もう少し時間が経てば言語の統一化によって消えていくのでしょう。
言語の最適化が図られていった未来の日本人はどのような発音をしているのでしょうかね……。
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