ワリセロプス
ワリセロプスは今からおよそ4億年前、デボン紀中期に反映した三葉虫の一種です。
ダンクレオステウスをはじめとする顎が発達した魚類が海を支配していた当時、いかに硬い殻をもつ三葉虫でも捕食される危険性が増します。
三葉虫たちは体にトゲのような突起を生やしたり、視覚センサーを強化したりとさらなる進化を余儀なくされていました。
その進化の一つとされたのが、頭に三つ又の槍を生やしたワリセロプスです。
一体この槍は何に使うのか……。
威嚇するための飾り、縄張り争いの道具、有機物を分解する器官、餌のある海底を掘り起こすショベル……。
様々な説が考えられましたが、結論は出ませんでした。
しかし、最近になって、その答えとなるかもしれない研究が発表されました。
今回は、2023年1月19日にScience Alartに掲載された、ワリセロプスの最新研究の解釈についてまとめていきます。
掲載記事)
This Ancient Creature Used a Trident to Joust For Sex 400 Million Years Ago
参考論文)
Trilobite tridents demonstrate sexual combat at 400 Mya
ワリセロプスの角は何に使う?
米国のペンシルベニア州立ブルームズバーグ大学と英国の自然史博物館の研究者は、ワリセロプスが持つ三つ又の槍は、生命にかかわる目的ではなく性的な目的を持っているという結論に達しました。
孔雀の羽根やカブトムシの角に代表されるように、オスとメスで様相が異なる生物は世界に数多く存在します。
時には自分の優美さをメスに知らしめ、時にはその武器を持って同種の競争相手に打ち勝ちメスを獲得し子孫を残す。
性選択と種内の闘争は、進化の過程で重要な側面であることが知られています。
保存状態の良い奇形のワリセロプス トリフルカトゥス(Walliserops trifurcatus)の成体化石には、三つ又ではなく四つ又の槍がついています。
もしこの角が自衛のためだったり、食料を探すための器官であるならば、摂食技術仮説と矛盾することになり、ワリセロプスは成体になるまで生きることはできなかっただろうと研究チームは考えました。
また、現在の生物と形態学的な比較したところ、カブトムシの角のような役割が最も近いことが分かりました。
雪かきをするように相手を下からすくい上げるような動作を得意とし、相手のワリセロプスをひっくり返していた可能性が高いことが示唆されています。
餌場の獲得や、メスへのアピールとして大いに活躍したでしょう。
しかし、この仮説を裏付ける大きな証拠が見つかっていません。
ワリセロプスのメスの固体が未だ確認できていないのです。
カブトムシのオスとメスが見た目から大きく違うように、彼らの外見がオスとメスで異なるのかどうかが明らかではありません。
もしかしたら、オスとメスの見た目がほとんど同じなのかもしれませんし、似た種類の他の三葉虫が、実はワリセロプスのメスなのかもしれません。
絶滅した動物、ましてや化石化した動物からその判断を下すのは非常に難しいことではありますが、今回の発見は、ワリセロプスの槍の謎を解決した可能性が高いとされています。
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