クロム(Cr)は非常に硬く腐食しにくい金属です。
光沢のあるメッキとして使われる事が多く、特にバナジウム合金などの工具によく使われています。
ステンレス鋼では特に金属の腐食を防ぐ役割を担っています。
これは含有するクロムが空気中の酸素や水と反応して錆び、金属の表面に膜を作ることによるものです。
この膜を不動態皮膜といい、金属などの皮膜の内部を酸化などから保護しています。
Stain(錆び、腐食)+less(より少ない)=Stainless(錆びにくい)
という名ではありますが、実はすでに錆びた膜が表面を覆っているため、それ以上錆びないようにな仕組みになっています。
クロム元素は1797年、フランスの科学者ルイ=ニコラ・ヴォークランによって発見されました。
彼はシベリアで採掘された鉱物クロコアイト(PbCrO4)から鉛(Pb)を取り除くと、未知の酸化物が生成されることを発見。
この酸化物を還元したことで得られた元素がクロムでした。
バナジウム同様、クロムを含む化合物は多彩な色合いを見せることから、ギリシャ語のchroma(色)に因んで“クロム”と名付けられました。
変色の例としては、
コランダムにクロムが混ざるとルビーに…
ガーネットにクロムが混ざるとデマントイド(デマントイドガーネット)に…
これは結晶中の原子が他の原子に置き換わる“同型置換”によるものです。
ルビーを例にした場合、上の図のようにアルミニウム原子がクロム原子に置き換わります。
ルビーのような発色の場合、0.5~1%のクロム(Cr3+)が置換されると言われています。
豆知識
単色で書かれたイラストなどをモノクロといいますが、これはギリシャ語の1を表す“モノ”と色を表す“クローム”が合わさったものです。
高校化学基礎では錯イオン辺りの単元で触れますね。
ちなみに基本的なギリシャ語の数は以下のように表されます。
1:モノ
2:ジ
3:トリ
4:テトラ
5:ペンタ
6:ヘキサ
7:ヘプタ
8:オクタ
9:ノナ
10:デカ
11:ウンデカ
12:ドデカ
…
倍数は
10倍:デカ
100倍:ヘクト
1000倍:キロ
1000000倍:ギガ
1000000000倍:テラ
0.1倍:デシ
0.01倍:センチ
0.0001倍:ミリ
0.000001倍:マイクロ
0.000000001倍:ナノ
馴染み深い単位もありますね。
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