早描きのルカ
17世紀後半に活躍したナポリ派の巨匠ルカ・ジョルダーノ。(ナポリ派=17世紀ごろにナポリ近郊で活躍した画家たちの総称。)
絵を異常なほど早く書き上げる様子から、“早描きのルカ”の異名を持つ人物です。
この素早く描く力は、画家の父アントニオ・ジョルダーノから「ルカ、もっと早く描け」と言われ続けたことによって身につけたと言われています。
どれだけスパルタ教育だったのかと言うと、食事の際には絵を描き続けるルカの口に父がパンを押し込んで食べさせていたというほど…。
過剰な期待を寄せられたルカですが、絵はを描く技術はその量と質によってメキメキ向上。
挙げ句の果てには、他人の絵を模倣した練習用の絵が本物と見間違えられるほどだっと言います。
大天使画
そんなルカが手掛けた作品の中で有名なもののひとつがこの“大天使ミカエルと叛逆天使たち”です。
まるで水戸黄門が悪代官を成敗するかの如く、善と悪がはっきりとした印象を受けます。
神の使徒である大天使ミカエルが、サタンやベリアルなど叛逆を起こした天使たちを退治する場面を描いています。
表向きは善が悪の打ち勝つ勧善懲悪を表していますが、その裏にはその時の情勢や宗教的な思惑が存在します。
赤と青はキリスト教において聖母マリアを表す色です。
大天使ミカエルが羽織っている織物や服も赤と青です。
さらに悪魔を踏みつける足は重さを感じさせないような表現がされています。
剣を持つたくましい右腕に対し、左腕は女性的なしなやかさと柔らかさも感じとれます。
優しく諭すような表情は、正に聖母の印象を受けます。
対してこれから地獄に堕ちる悪魔たちは、みな恐怖と絶望に悶える表情をしています。
彼ら悪魔たちはプロテスタントを表しているとされています。
この絵には教えに背いたプロテスタントをカトリック(大天使ミカエル)が退治するというプロパガンダが強く表れているのです。
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