フッ素といえば、多くの方が小学生の頃に実施されたフッ素塗布が耳に残っているのではないでしょうか。
フッ素には歯のエナメル質を強くする効果や、虫歯の病原菌が酸を放出することを抑制する効果があります。
また初期の虫歯に対しては、表面にカルシウムの結晶をつくることで再石灰化を促し、その結果虫歯を治す作用もあるそうです。
主に蛍石(CaF2:フッ化カルシウム)として産出されます。
フッ素は反応性の高い元素で、ヘリウムとネオン以外のあらゆる元素と反応します。
酸化力が強すぎるため分離後の安定化が困難で、分離を試みた研究者がフッ素を吸い込んで死んでしまうという事態も少なからず起こりました。
フッ素の単離に挑んだモアッサン
フッ素ガス(単体のフッ素)は、例外を除き自然界にはほとんど存在しません。
・強い酸化力による単体で安定性しない
・フッ素を保存できる容器がない(容器と反応してしまう)
・中毒や死の危険が高い
しかし、この壁を見事ぶち破り人類初のフッ素の分離と保存に成功した人物がいます。
アンリ・モアッサンです。
フランスの科学者アンリ・モアッサンは、電極の端から持続的に高温と閃光を伴う放電を行うアーク放電を利用し“モアッサン電気炉”を発明した人物でもあります。
この電気炉によって3500℃を達成し、金属中最高の融点(3422℃)を持つタングステンをも溶かすことができるようになりました。
アンリ・モアッサンはこの電気の性質を利用し、科学的にフッ素の単離を試みます。
まずは蛍石(フッ化カルシウム)と濃硫酸を混ぜて加熱し、フッ化水素を取り出します。
・CaF2+H2SO4→CaSO4+2HF
・フッ化カルシウム+硫酸→硫酸カルシウム+フッ化水素
得られたフッ化水素を-50℃の環境下(低温にしてフッ素の反応を遅らせる)で電気分解します。
その結果、フッ化水素は水素ガスとフッ素ガスに別れ、フッ素の単離と保管に成功しました。
保存する容器がないという問題は、容器を蛍石で作ることで克服しました。
モアッサンはこの実験の最中に、フッ素によって片目の視力を失うという不運にも見舞われました。
モアッサン電気炉とフッ素の単離の功績から、1906年にノーベル化学賞を授与されました。
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