“真珠の耳飾りの少女”は、ヤン・フェルメールが描いた数少ない上半身画のひとつです。
モデルが誰か明らかになっていないことから、フェルメールのトローニー(特定されない人物の胸から上を描いた作品)ではないかと言われています。
暗い背景の前で少女がわずかに口をあけてこちらを見ています。
誰も人生の中で目にしたことがあるであろう、不意に声をかけたときの一瞬の表情を切り取っているように思えます。
影とは対照的にきらめく真珠は、光の反射を表現するためか厚く塗られています。
舞台である17世紀オランダ、この頃の女性がターバンのようなサッシュを身につけることは一般的ではありません。
このサッシュによって異国、それも東洋風の雰囲気をかもし出しています。
しかし彼女が来ている衣服やサッシュは、フェルメールが布ひだを表現する能力に長けていたことがわかる一枚でもあります。
オランダ美術史研究科のルートヴィヒ・ゴールドシャイダーは、この絵のことを“北のモナリザ”と読んで称賛しました。
豆知識
この絵の存在が明らかになったのは1881年のことです。
収集家のアルノルドゥスが、オークションでわずか2ギルダー(1万円程度)で落札しまし。
彼の死後、アルノルドゥスの遺言によってハーグのマウリッツハイス美術館に遺贈され展示されています。
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