日々の健康維持に欠かせない「水分補給」ですが、最新の研究によると、単に水を飲むだけでなく、コーヒーや紅茶を組み合わせて摂取することが寿命の延長につながる可能性があることが明らかになりました。
この研究では、1日に合計でおよそ8杯分の水・コーヒー・紅茶を飲む人々が、そうでない人々に比べて最も死亡リスクが低いことが示されています。
特に、コーヒー2杯と紅茶3杯という比率が最も健康に良い影響をもたらす「黄金比」として注目されています。
以下に研究の内容をまとめます。
参考記事)
・A Daily Combination of Coffee, Tea, and Water May Help You Live Longer(2025/11/05)
参考研究)
英国の大規模追跡研究が示した「飲み物の組み合わせ効果」

この研究は、イギリスのU.K.バイオバンクのデータをもとに行われたもので、18万2770人の成人を対象におよそ13年間にわたって追跡調査が行われました。
研究チームは、参加者の水・コーヒー・紅茶の摂取量、生活習慣、既往歴などを詳細に調査。
その結果、1日7~8杯の飲料(水・コーヒー・紅茶を合わせて)を摂取する人々が、全死因死亡率において最も低いリスクを示したと報告しました
さらに興味深いことに、飲み物の種類別ではコーヒーと紅茶の摂取比率が2対3の人々が、他の組み合わせよりも高い健康効果を得ていたことが判明しました。
この“2:3の組み合わせ”は、死亡リスクを最大で45%低下させるという驚くべき結果を示しています。
ただし、研究者たちはこの結果について、「あくまで関連性を示すものであり、因果関係を証明するものではない」と注意を促しています。
また、コーヒーや紅茶の淹れ方や添加物(ミルクやハチミツなど)は分析対象に含まれていないため、これらが結果に影響を与えている可能性もあるとしています。
コーヒーと紅茶がもたらす細胞レベルの健康効果
登録栄養士のEmily LaBombard氏は、この研究には関与していないものの、「水分補給に加えて抗酸化作用のある飲料を組み合わせることは、細胞レベルでの健康維持をサポートする」と指摘しています。
彼女によれば、こうした飲み物は炎症や酸化ストレスを軽減し、老化の進行を緩やかにする可能性があるといいます。
この研究に直接関わっていないオーランド・ヘルス心血管研究所のDeepak Vivek医師は、コーヒーと紅茶に含まれるポリフェノールが重要な役割を果たすと説明しています。
ポリフェノールは、強力な抗酸化物質の一種で、血圧の安定化や心疾患リスクの低下に関連していることが多くの研究で示されています。
コーヒーには特にクロロゲン酸と呼ばれるポリフェノールが豊富に含まれています。
これには二型糖尿病や神経変性疾患(アルツハイマー病など)のリスク低下との関連が指摘されており、さらに腸内環境の改善にも寄与する可能性があると、カナダ・バンクーバーの栄養士Sarah Glinski氏は述べています。
一方、紅茶にはカテキン類と呼ばれる抗酸化物質が多く含まれており、抗炎症作用や抗がん作用を持つことが知られています。
これらの物質が体内で相乗的に作用することで、細胞の健康を守り、生活習慣病の予防に役立つ可能性があると考えられています。
水分補給がもたらす基本的な健康効果と、コーヒー・紅茶の補助的役割

水分を十分に摂取することは、体温調節、血液循環、血圧維持、脳機能の活性化、腎臓および消化器の正常な働きなど、生命維持に欠かせない要素です。
この基本的な水分補給に加え、コーヒーや紅茶を取り入れることで、単なる水分補給以上の健康効果が期待できると専門家は指摘しています。
つまり、「水で体を潤しつつ、コーヒーと紅茶の抗酸化成分で細胞を守る」という組み合わせが、体全体の健康を支える理想的な方法の一つだといえます。
飲み過ぎは逆効果? 適量の見極めがカギ
とはいえ、今回の研究結果は「飲めば飲むほど健康に良い」という意味ではありません。過剰な摂取はむしろ健康を害する可能性があります。
たとえば、水を過剰に摂取しすぎると、ナトリウムやカリウムなどの電解質が薄まり、心臓の働きを妨げる危険があります。
また、カフェインの摂り過ぎにも注意が必要です。
Vivek医師によると、過剰なカフェインは動悸、不整脈、不安感、睡眠障害を引き起こすおそれがあるといいます。
摂取量の目安としては、1日400mg以下(カフェイン入り飲料約4杯分)が推奨されています。
さらに、グリンスキー氏は「カフェイン耐性には個人差がある」と強調します。
体重、服用中の薬、持病、代謝の違いなどが影響するため、最適な摂取量は人それぞれ異なります。
そのため、専門の医師や栄養士に相談し、自分に合った水分とカフェイン摂取バランスを見つけることが重要です。
カフェインの摂取を控えたい場合は、デカフェ(カフェインレス)コーヒーやハーブティー(カモミール、ペパーミント、ジンジャーなど)を取り入れるのも良い方法です。
これらも抗酸化物質を多く含んでおり、同様の健康効果が期待できます。
研究結果の限界と今後の課題

今回の研究は大規模かつ長期的なもので信頼性が高い一方で、いくつかの限界もあります。
まず、この研究は観察研究であり、コーヒーや紅茶の摂取が寿命延長の原因であると断定できるわけではありません。
また、参加者がどのように飲み物を準備したのか(砂糖、ミルク、クリームなどの添加)に関するデータが不足しているため、結果に影響を及ぼしている可能性があります。
さらに、飲み物の温度や摂取時間帯など、ライフスタイル全般との関連も検討の余地があります。
このため、「健康的な生活習慣全体の一部としての飲み方」として捉えるのが現時点での最も妥当な理解といえるでしょう。
まとめ
・1日7~8杯の水、コーヒー、紅茶の組み合わせ(特に2:3の比率)が死亡リスクを最大45%低下
・コーヒーと紅茶に含まれるポリフェノールやカテキンが細胞の酸化ストレスを軽減し、老化を抑制する可能性
・飲み過ぎは逆効果であり、水・カフェイン摂取のバランスが重要


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