超加工食品は「健康的な謳い文句」があった食品でも減量効果を損なう

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超加工食品(Ultra-Processed Foods、以下UPF)は、これまでも健康への悪影響が多数指摘されてきました。

 

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)を中心とした英国と米国の研究チームによる新たな研究により、たとえ栄養成分が健康的に調整されていたとしても、減量効果を大きく妨げる可能性があることが示されました。

 

研究では、超加工食品は、栄養成分が同じでも減量効果を妨げる可能性が高いとされ、シリアルなどに記されている栄養素が体内で十分に代謝できるのかついて疑問視される結果となっています。

 

今回はそんな超加工食品と健康をテーマに研究をまとめていきます。

 

参考記事)

Ultra-Processed Foods Could Sabotage Weight Loss, Even on a ‘Healthy’ Diet(2025/08/13)

 

参考研究)

Ultraprocessed or minimally processed diets following healthy dietary guidelines on weight and cardiometabolic health: a randomized, crossover trial(2025/08/04)

 

 

研究概要

Ultraprocessed or minimally processed diets following healthy dietary guidelines on weight and cardiometabolic health: a randomized, crossover trialより

 

研究チームは、過体重の成人50人を対象に、二種類の異なる食事プログラムを別々の時期に実施しました。

 

両方の食事は脂質(飽和脂肪を含む)、炭水化物、食物繊維、塩分、果物や野菜の量が全く同じになるように栄養設計されていました。

 

唯一の違いは食品の加工度です。

・UPF中心の食事:市販のオートバーや冷凍ラザニアなど、工場で高度に加工された食品を多く含む

・MPF中心の食事(Minimally Processed Foods):加工度が低く、家庭的な調理を経た食品が中心

例)オーバーナイトオーツや手作りのスパゲティ・ボロネーゼなど

  

このように、栄養素の量は同じでも、「どのように加工された食品を食べるか」という点だけが異なる条件で比較が行われました。

 

 

主な結果

両方の食事プログラムで体重減少は見られましたが、MPF食はUPF食の約2倍の減量効果を示しました。

Ultraprocessed or minimally processed diets following healthy dietary guidelines on weight and cardiometabolic health: a randomized, crossover trialより

・減量効果:MPF食は平均で体重の2%減、UPF食は1%減

・体脂肪の減少:MPF食では不健康な内臓脂肪の減少が顕著

・食欲コントロール:MPF食の参加者はジャンクフードなど不健康な食品への欲求がより抑えられた

 

この結果について、UCLの臨床科学者のSamuel Dicken氏は次のように述べています。

 

過去の研究でもUPFは健康被害との関連が示されているが、栄養成分だけを見れば、すべてのUPFが不健康とは限らない。今回の研究の目的は、既存の食事ガイドラインの文脈において、食品加工度が体重や血圧、体組成、さらには食欲といった健康アウトカムにどう影響するのか、その知識の空白を埋めることである

 

今回の介入期間は、1つの食事プログラムにつき8週間で、間に4週間の休止期間を挟みました。

 

期間自体は短く、減量幅も2%や1%と数字だけ見ると小さく思えるかもしれません。

 

しかし研究者らは、この差が長期的に積み重なれば大きな効果になると指摘しています。

  

Dicken氏は次のように試算しています。

  

この結果を1年のスパンに拡大して考えると、MPF食では男性で13%、女性で9%の体重減少が期待できる。一方、UPF食では男性4%、女性5%程度にとどまると予測される。

 

つまり、食材の加工度を下げることは、減量効果の持続と加速につながる可能性が高いのです。

 

  

なぜ加工度が影響するのか 

 

今回の研究は栄養素の量を揃えているため、「カロリーや脂質の量が違うから結果が変わった」という単純な方程式は成り立ちません。

 

考えられる理由として、研究チームは次のような点を挙げています。

 

1. 食感や食べやすさの違い

UPFは柔らかく、噛む回数が少なく済む傾向があり、結果的に食べ過ぎやすくなる 

 

2. 消化吸収速度の差

UPFは急速に消化され血糖値を上げやすく、それが食欲のコントロールを難しくする

 

3. 満腹感の持続時間

加工度が低い食品は、食物繊維や水分が自然な形で残っているため、満腹感が長く続く

 

  

公衆衛生への示唆と研究の今後

UCLの研究員Chris van Tulleken氏は、この研究の社会的意義について次のように述べています。

 

現在の世界的な食品システムは、安価で不健康な食品が容易に手に入る環境を作り出し、それが肥満や生活習慣病の増加を招いている。この研究は、脂質や塩分、糖分といった栄養成分だけでなく、“超加工”という要素そのものが健康に影響を与えていることを強調している。

 

つまり、減量や健康維持のための食事指導においては、何をどれくらい食べるか」という栄養管理に加えて、「どの程度加工された食品を選ぶかという視点も欠かせないということです。

  

今回の試験は参加者数が50人と比較的小規模であり、さらに食事制限を必要とする人や特定の疾患を持つ人は除外されています。

 

そのため、この結果がすべての人に当てはまるとは限りません。

  

また、今回の期間は8週間という短期であり、長期的な健康影響や体重変化については今後の追跡研究が必要です。

 

それでも、本研究は加工度の低い食事を選ぶことが減量に効果的であるという重要な示唆を与えています。

 

 

まとめ

・超加工食品は、栄養成分が同じでも減量効果を妨げる可能性が高い

・加工度の低い食品は、体脂肪の減少や食欲コントロールにも有利

・肥満対策には栄養素だけでなく食品加工度の視点も必要

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