2024年12月10日、ロイター通信から「米国大手食品会社が子供たちに“依存性”のある食品を販売したとして訴訟を起こされた」という旨の報道が発表されました。
『Coca-Cola』をはじめとし、オレオやリッツでお馴染みの『Mondelez』や日本ではコーヒーで有名の『Nestlé』など、有名各社を相手どった訴訟であり、子供たちの健康に悪影響を与える「超加工食品」を設計・販売したと非難されています。
訴訟を担当するMorgan & Morgan法律事務所は、「このケースは前例のないものだ」と述べており、訴訟の行方に注目が集まっています。
参考記事)
・Lawsuit accuses major food companies of marketing ‘addictive’ food to kids(2024/12/11)
訴訟の背景
この訴訟はペンシルベニア州の住民、Bryce Martinez氏によって、フィラデルフィアの地方裁判所に提訴されました。
Martinez氏は16歳の時にニ型糖尿病と非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)と診断され、その原因がこれらの企業の製品にあると主張しています。
訴えの対象となった他の企業には、Post Holdings、PepsiCo、General Mills、Nestlé(米国法人)、WK Kellogg、Mars、Kellanova、Conagraが含まれます。
これに対し、食品業界を代表するConsumer Brands Associationの製品政策担当シニアバイスプレジデントSarah Gallo氏は次のように述べています。
「現在、“超加工食品”という食品に科学的な定義は存在しない。加工食品を理由に不健康と分類したり、栄養全体の内容を無視して食品を悪者扱いするのは、消費者を誤解させ、健康格差を悪化させるだけだ。」
超加工食品と健康への影響
近年、超加工食品と慢性疾患との関連を示す証拠が増えています。
研究者が「超加工食品」と呼ぶものには、スナック菓子、甘味料を加えた食品、砂糖入りの炭酸飲料などが含まれ、これらは全食品から抽出された物質や人工的に合成された成分で作られています。
米食品医薬品局(FDA)の現職コミッショナーであるRobert Califf氏も、「超加工食品が依存性を持つ可能性が高い」と指摘しています。
また、Robert F. Kennedy Jr.氏(次期厚生省長官)は、食品業界やFDAがその規制を怠っていると批判しています。
さらに、トランプ政権における厚生省長官Robert F. Kennedy Jr.氏も、「食品業界やFDAがこれらの食品の規制を怠っている」と非難しており、食品業界全体に厳しい目が向けられています。
タバコ・プレイブック(tobacco playbook)
Martinez氏の訴訟では、食品会社が自社製品の有害性を長年認識しながら、それを意図的に依存性の高いものとして設計したと主張。
この手法は、タバコ産業が使用していた「タバコ・プレイブック(tobacco playbook)」を引き継いだものだとしています。
※タバコ・プレイブック(tobacco playbook)
【特徴】
1. 製品の依存性を利用
タバコ産業は、ニコチンの依存性を強化するための製品設計を行い、消費者が使用をやめにくい状態を作り出す
2. 科学的証拠の否定・混乱の助長
喫煙と健康被害(肺がんや心疾患)の関連性を示す科学的証拠を否定し、科学的議論に混乱をもたらすための研究への資金提供
3. ターゲット層へのマーケティング
若者や女性を特にターゲットとした広告キャンペーンを展開
4. 規制への抵抗
喫煙に関する規制を回避・遅延させるために、ロビー活動や法的手段を活用
このため「tobacco playbook」という言葉は、企業が倫理的な責任を果たさず、短期的な利益を優先して消費者の健康や福祉を犠牲にする戦略を用いる場合に使われます。
これと類似して、食品業界は糖分、脂肪、塩分を組み合わせ、食品を依存性が高くなるよう設計していると批判されています。
科学的に加工されたお菓子や砂糖入りの飲料などを軸とし、子ども向けに魅力的な広告を展開したり、自制の効かない子どものうちに依存させることで、将来的な顧客を育てる戦略も非常に悪質だと指摘されることも多いです。
また、本訴訟では以下の内容を争点として損害賠償および懲罰的賠償が求められています。
1. 共謀(企業間の不正な連携)
2. 過失(消費者への健康リスクを認識しながら放置したこと)
3. 詐欺的な虚偽表示(製品の安全性を誤解させる宣伝やラベル)
4. 不公正な事業慣行(意図的に依存性のある食品を設計したこと)
裁判結果によっては食品業界全体に大きな影響を与える可能性があり、日本においても規制や国民への啓蒙のきかっけとなることが予想されます。
まとめ
・訴訟は「超加工食品」が子どもの健康に与える影響に焦点を当て、食品業界の責任を問う
・食品業界は「超加工食品」の科学的定義がないと反論し、消費者への誤解を主張している
・本裁判は、食品業界と消費者健康問題の新たな知見をもたらす可能性のある重要なケース
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