科学

脳炎や肺炎などのウイルス感染がアルツハイマー病のリスクを数倍から数十倍に増やす

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最新の研究によると、脳炎や肺炎などの重度のウイルス感染は、パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患のリスクを高める可能性があることが明らかになりました。

 

今回紹介する研究は約50万件の医療記録を分析し、ウイルス感染と神経変性疾患の間に深い関連があることを示唆しています。 

 

特に、ウイルス性脳炎やインフルエンザに関連する感染症が、これらの疾患の発症リスクを大幅に増加させることが確認されました。

 

以下に記事をまとめていきます。

 

参考記事)

Study of 500,000 Medical Records Links Viruses With Alzheimer’s Again And Again(2024/10/06)

 

参考研究)

Virus exposure and neurodegenerative disease risk across national biobanks(2024/04/05)

 
 

ウィルス感染とアルツハイマー

 

メリーランド国立衛生研究所ら複数の研究機関のは、約50万件の医療記録を基に、ウィルス感染と神経変性疾患との関係を分析しました。

 

調査によると、脳炎や肺炎などの重度のウイルス感染がパーキンソン病やアルツハイマー病といった神経変性疾患のリスクを高める可能性があることを示唆されました。

 

研究者は、約45万人を対象とした研究で、ウイルス感染と神経変性疾患の間に22の関連性を発見しました。

 

特に、ウイルス性脳炎と呼ばれる脳の炎症で治療を受けた人は、アルツハイマー病を発症するリスクが31倍高いことが分かりました(ウイルス性脳炎の406例のうち24例、約6%がアルツハイマー病を発症)。

 

インフルエンザに罹った後に肺炎で入院した人々は、アルツハイマー病、認知症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹りやすい傾向がありました。

 

腸の感染症や髄膜炎(どちらもウイルスによることが多い)、および帯状疱疹を引き起こす水痘帯状疱疹ウイルスも、いくつかの神経変性疾患の発症に関与していました。

 

ウイルス感染が脳に与える影響は、場合によっては最大15年間持続することが示されており、ウイルスへの曝露が保護的であった例は見られませんでした。

 

脳に影響を及ぼすウイルスの約80%は、血液と脳組織間で物質のやりとりを制限する役割を担う血液脳関門を通過できるとされています。

 

インフルエンザや帯状疱疹(水痘帯状疱疹)、肺炎などのウイルスに対するワクチンは現在利用可能である」と、研究者は昨年発表された論文に書いています。

 

また、「ワクチンはすべての病気を予防するわけではないが、入院率を劇的に減少させることが知られている。これは、ワクチン接種が神経変性疾患のリスクを多少軽減する可能性を示唆している。」と、既に安全性が確保されているワクチン接種の重要性を述べています。

 

 

100,000件の医療記録の分析

2022年に行われた1000万人以上を対象とした研究では、エプスタイン・バーウイルスに感染すると、多発性硬化症のリスクが32倍に増加することが確認されました。

 

【エプスタイン・バーウィルス】
・症状:発熱、倦怠感、リンパ節腫脹、肝腫大や血中肝酵素の上昇、脾腫、皮疹
・無治療ないし対症療法で軽快することがある
・根本的な治療をしない限り再燃を繰り返す

 

 この研究結果を受け、米国国立老化研究所の神経遺伝学者であり、今回の研究の主著者であるマイケル・ナルス氏はこう述べています。

 

私たちは、データサイエンスに基づいた異なるアプローチを試みた。

医療記録を使用することで、あらゆる関連性を一度に体系的に検索することができた

 

研究者たちはまず、神経変性疾患を持つ約35,000人のフィンランド人の医療記録を分析し、脳疾患を持たない310,000人の対照群と比較しました。

 

この分析により、ウイルス曝露神経変性疾患の間に45の関連性が示されましたが、その後の英国バイオバンクからの100,000件の医療記録の分析で22に絞り込まれました。

 

この観察研究は因果関係を示すものではありませんが、パーキンソン病やアルツハイマー病におけるウイルスの役割を示唆する証拠として参照可能だとしています。

 

共同著者であるアンドリュー・シングルトン氏は、「神経変性障害は、効果的な治療法が非常に少なく、多くの危険因子が複雑に関係し合っている。

 

今回の結果は、ウイルス感染とそれに関連する神経系の炎症はこれらの疾患に共通していることであり、しかも予防可能なリスク要因である可能性を支持している。」と述べています。

 
まとめ

・約50万件の医療記録を分析した研究から、重度のウィルス感染(脳炎や肺炎など)は、パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患のリスクを大幅に高めることが示唆された

・特定のウィルス感染(ウイルス性脳炎やインフルエンザ後の肺炎など)は、アルツハイマー病やパーキンソン病、認知症などの発症リスクを数倍から数十倍に増加させる可能性がある

・ウィルス感染と神経変性疾患の関連を示す証拠が増えつつあり、ワクチン接種が神経変性疾患のリスクを軽減する可能性があると研究者は指摘している

 

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