世界保健機関(WHO)によると、うつ病患者は世界で推計2億8,000万人に達しているとされています。(2023年時点の統計)
また、同機関による2017 年に発表したうつ病などの精神疾患のデータをもとにすると、アジア地域の患者数は、
1位:中国 約5,482万人(人口比率4%)
2位:日本 約506万人(人口比率4%)
3位:フィリピン 約330万人
と、日本は二番目に精神疾患の罹患率が多い結果となっています。
また、うつ病などを他人に知られたくないという国民性などもあり、潜在的な精神疾患はさらに多いと予測されています。
世界各地で問題となっている精神疾患の一つうつ病ですが、最新の研究によると、軽度のうつ病が、生活習慣の改善によって治療につながる可能性が発見されました。
以下に研究についてまとめていきます。
参考記事)
・These 2 Key Lifestyle Changes Can Treat Mild Depression as Well as Therapy(2024/08/06)
参考研究)
食事と身体活動がうつ病に及ぼす影響
2024年7月にディーキン大学によって発表された研究報告では、食事を改善し、より多くの身体活動を行うことが、軽度のうつ病を治療するために有効な手段であることが発表されました。
また、カウンセラー(心理療法)による治療と同じくらい効果的であることが示されました。
過去の研究では、生活習慣の改善がうつ病に有効であることを発見しましたが、今まで心理療法と直接比較されたことはなかったため、世界初の研究事例となります。
本研究では、オーストラリアのビクトリア州のメンタルヘルスサービスと提携して182人の成人を募集、Zoomでグループベースのセッションを通して指導や報告を行いました。
すべての参加者は、医療従事者が促進する8週間にわたって最大6つのセッションに参加しました。
必ずしも診断されていない精神障害の典型的な症状(落ち込み、絶望、過敏)など軽度のうつ病を示す者たちも含まれていました。
半分は、認定された実践的な栄養士と運動生理学者によって共同進行するプログラムに参加するためにランダムに割り当てられました。
1つ目のグループは「ライフスタイルプログラム」と呼ばれる指導がされ、以下のような栄養と運動の目標が設定されました。
・多種多様な食べ物を摂取し、食物繊維の多い食品を選択する
・飽和脂肪(高品質の脂肪を含む)や添加糖分が多い食品などの食品を制限する
・楽しい身体活動をする
2つ目のグループは、2人の心理学者が招集した心理療法セッションに参加しました。
心理療法プログラムは、うつ病を治療するための基本的な認知行動療法(CBT)を使用して治療を行いました。
また、どちらのグループでも、抗うつ薬の服用など既存の治療も続けました。
両方とも同様の結果になった
研究の結果、両プログラムで同様の効果があることが分かりました。
試験の開始時に、私たちは各参加者に自己申告のメンタルヘルスに基づくスコアを与え、プログラムの最後にもう一度スコアを測定しました。
開始から8週間後に確認されたスコアでは、ライフスタイルプログラム(42%)、心理療法プログラム(37%)の参加者のうつ病の症状が減少したことを示しました。
これらの結果は、臨床統計的に見ると両方の治療法が同じくらい効果的であると結論付けることができました。
グループ間による行動をみると、やはりいくつかの違いがありました。
ライフスタイルプログラムの人々は食事が大きく改善し、心理療法プログラムの人々は、社会的支援が充実した(他の人とのつながりが増えた)と感じました。
また、両方のプログラムの参加者は身体活動を増やす傾向にありました。
これはライフスタイルプログラムの人には期待されていた効果ですが、心理療法プログラムの人も運動を行うようになったことは予想していませんでした。
それは、彼らがライフスタイルに関する意識調査があったことなどから、無意識のうちに活動パターンを変えた可能性もありますが、心理療法を行ったことによる副産物である可能性があります。
治療にかかるコストは、ライフスタイルプログラムだと参加者1人あたり482オーストラリアドル、心理療法は503ドルと、多少の違いはあれど大きな差異は見られませんでした。
これは、患者が治療選択の自由を与えるものにもなります。
この研究によって、メンタルヘルス以外にも、食事や運動指導によってうつ病の緩和、治療が期待できる可能性が出てきました。
この分野の発展によって、メンタルヘルスに従事する者の負担を減らしたり、精神疾患に対する新たな治療方針の発見につながるとし、今後の研究に期待がもたれます。
この研究は、LANCETにて詳細を確認することができます。
まとめ
・良い食事と定期的な運動が、軽度のうつ病を治療するために有効な手段となる
・食事は、食物繊維が多く、脂質や糖質を控えた食事が推奨される
・運動は筋力トレーニングなど負荷が高いものではなく、ウォーキングやストレッチなど楽しく続けられるものが望ましい
・運動と食事は、カウンセリングと同じくらいの効果がみられた
コメント