長年にわたる大量飲酒が直腸がんリスクを大幅に上昇させる──少量長期と大量長期の飲酒を比較した研究より

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長年にわたって大量のアルコールを飲酒することは、大腸がん全体のリスクと直腸がんリスクをそれぞれ大幅に高める可能性があるという研究結果が、米国の大規模疫学調査から報告されました。

  

本研究は 米国国立がん研究所が中心となって実施された PLCO(Cancer Screening Trialのデータを用い、「18 歳以降からの生涯アルコール摂取量」と「大腸がん/大腸腺腫(良性ポリープ)」の発症リスクとの関連性を解析したものです。

  

以下に研究の内容をまとめます。

 

参考研究)

Association of alcohol intake over the lifetime with colorectal adenoma and colorectal cancer risk in the Prostate, Lung, Colorectal, and Ovarian Cancer Screening Trial(2026/01/26)

  

 

飲酒量の評価方法と定義と結果

 

本研究では、参加者が報告した各年齢期(18–24 歳、25–39 歳、40–54 歳、55 歳以上)のアルコール摂取量を基に、「平均生涯飲酒量(平均週あたり飲酒回数)」が算出されました。

 

飲酒量の分類とその定義は以下の通りです。

• 軽度飲酒:平均週 1 杯未満

• 中等度飲酒:平均週 7~14 杯未満

• 大量(重度)飲酒:平均週 14 杯以上

 

生涯平均摂取量を基準に長期的な飲酒パターンを評価することで、一時的・短期的な飲酒習慣ではなく、一生を通じた飲酒の影響を精査しています。

    

その結果、重度飲酒と大腸がんリスクは以下のように示されました。

   

【大腸がん全般のリスク】

平均週 14 杯以上の大量飲酒者は、生涯平均で週 1 杯未満の軽度飲酒者と比べて、大腸がんリスクが 25%高い(ハザード比 HR = 1.25)という強い関連が認められました。

これは、単に「アルコールを飲むかどうか」よりも、「どれだけ長期にわたって大量に飲んできたか」が大腸がんリスクに大きく影響していることを示す結果です。

   

【直腸がんのリスク】

この関連性は特に直腸がんで顕著であり、

• 直腸がんのリスクでは 95%の増加(HR = 1.95)が観察されています。

大腸がんの中でも、直腸部において特にリスクが高まることが示された点は、 がん部位ごとの差異がある可能性 という重要な示唆を含んでいます。

  

Association of alcohol intake over the lifetime with colorectal adenoma and colorectal cancer risk in the Prostate, Lung, Colorectal, and Ovarian Cancer Screening Trialより

  

また、単に生涯の平均量だけでなく、「成人期を通じて大量の飲酒を続けた人」と「一貫して軽度の飲酒を続けた人」を比較したところ、一貫した重度飲酒者は大腸がんリスクが 91%高かった という大きな関連が見られました。

 

この数字は、飲酒パターンの「継続性」が生涯リスクを評価する上で重要な要素であることも示唆しています。

 

 

腺腫(良性ポリープ)と飲酒の関連性

大腸がんだけでなく、「大腸腺腫」(将来がん化する可能性のある良性ポリープ)についても解析が行われました。

 

解析対象の 12,327 人中 812 人が 2 回目の検査で腺腫を有していました。

 

その結果から、元飲酒者(飲酒歴あり・現在は飲まない人)は、非進行性腺腫が発生する確率が低かった(つまり、元飲酒者では腺腫のリスクが軽減していた可能性)ことが示されました。

  

しかし、腺腫に関する結果は統計的精度に限界があり、特に症例数が少ないカテゴリーについては 推測的・探索的評価に留まる可能性 があるため、慎重な解釈が必要だと研究者自身も述べています。

 

本研究の興味深い傾向として、中等度(週 7~14 杯未満)の平均飲酒者が(軽度飲酒者と比べて)大腸がんリスクが低い傾向にあったという結果も報告されています。

 

これは特に遠位結腸がんで顕著でした。

 

ただし、このような低リスク傾向は因果関係そのものが確立されたものではなく、交絡因子や生活習慣の違いによる可能性 も否定できません。

 

 この点は論文中でも注意として挙げられています。

 

  

生物学的背景とメカニズムの可能性

 

研究者らは、アルコールとがんリスクの関連の背景にある可能性として、以下のような生物学的プロセスを指摘しています。

 

1. アルコール代謝による発がん物質の生成

アルコールが体内で分解される過程で生成されるアセトアルデヒドなどの物質は、DNA損傷や細胞異常増殖のリスク因子として知られています。

 

2. 腸内細菌叢への影響

飲酒は腸内細菌叢のバランスに影響を与え、慢性的な炎症反応を促進する可能性があり、これががん発症に関与する可能性が指摘されています。

  

ただし、これらのプロセスが 直接的にがんを引き起こす因果関係であるかどうかは未解明であり、今後の研究が求められています

 

本研究は極めて大規模かつ長期にわたる観察研究であり多くの有益な示唆を提供していますが、以下のような制限もあります。

  

• 飲酒量は自己申告に基づくため、実際の摂取量とは誤差がある可能性がある

• 元飲酒者に関するデータ数が限られており、統計的な確実性が十分でない可能性がある

• 観察研究であるため、因果関係を断定することはできない

 

これらの点から、この研究の結果は「関連性」を示すものであり、「直接的な原因」であると断言することはできません。

 

 

まとめ

・生涯にわたる大量アルコール摂取は大腸がん全体のリスクを25%以上、特に直腸がんリスクをほぼ2倍に高める関連が示された

・成人期を通じて一貫した大量飲酒パターンは大腸がんリスクをさらに高めることが観察された

・飲酒をやめた人では大腸腺腫やがんリスクが低くなる傾向があり、飲酒習慣の変化がリスク低減に繋がることが示唆されている

・因果関係の証明にはさらなる研究が必要だが、飲酒をやめることでリスクが軽度飲酒者に近づく可能性がある

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