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100歳まで生きたいなら──研究が示す4つの重要な生活習慣

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Ethel Caterham氏 BBC「British woman, 115, becomes world’s oldest person」より

  

イングランド・サリー州に住むEthel Caterham氏は、現在115歳。

  

公式に「世界最高齢の生存者」として認定されました。

 

このニュースを知った多くの人が、「Caterhamさんの長寿の秘訣は何だろう?」と疑問に思ったのではないでしょうか。

 

もっとも、超高齢者(supercentenarians)と呼ばれる100歳を大きく超える人たちは、あまりに稀な存在であるため、その健康法や生活習慣をそのまま真似することは、一般的にはおすすめできません。

  

彼らは多くの場合「例外的存在」だからです。

 

しかし、長寿を全うする人々に共通する特定の生活習慣については、これまでの研究で一定の傾向が見出されています。

 

長生きを望む私たちにとって、これらの知見は十分に参考になるものです。

 

本記事では、ウェストミンスター大学の加齢生理学の研究者であるBradley Elliott氏がまとめた内容をもとに、より健康的で長生きできる可能性を高める4つの生活習慣についてご紹介します。

 

参考記事)

British woman, 115, becomes world’s oldest person(2025/05/02)

 

参考研究)

Too Little Exercise and Too Much Sitting: Inactivity Physiology and the Need for New Recommendations on Sedentary Behavior(2012/08/15)

 

 

1. 身体活動を日常に取り入れることの重要性

 

身体を動かすことは、健康のために良いとよく言われますが、近年の研究によって、毎日少しでも身体を動かすことが、寿命を延ばすことに寄与することが明らかになっています。

 

ある研究では、運動習慣のない人が、1週間に75分ほど速歩きを行うだけで、平均寿命が約2年延びるという結果が報告されました。(Leisure time physical activity of moderate to vigorous intensity and mortality: a large pooled cohort analysisより

 

わずかな活動でも、長期的な健康に好影響を与えるのです。

 

っと、得意気に「運動は健康に良い」と書いていますが、それは多くの人にとって周知の事実かと思います。

 

ここで重要なことは、「不活動(inactivity)」が健康に及ぼす悪影響の深刻さです。

  

仕事や学校での勉強など、座りがちな生活を強いられる現代、その悪影響についても研究が行われるようになりました。

 

ある研究では、たとえ1日30分の運動を行っていても、一日中座っている生活を続けていれば、早期死亡リスクが高まるという結果も出ています。(Prospective Associations of Accelerometer-Measured Machine-Learned Sedentary Behavior With Death Among Older Women: The OPACH Studyより

 

健康寿命を延ばすためには、「運動をする」だけでなく、「長時間座ることを避ける」工夫も同時に行う必要があるのです。

 

実践的な対策としては、以下のようなものが推奨されています。

• 30分ごとに立ち上がる

• 仕事(オフィス内)では、メールや電話の代わりに直接会いに行く

• 電車の中では立って過ごす

 

 

2. 野菜中心の食生活を心がける

 

幼い頃から「野菜を食べなさい」とよく言われた人も多いと思いますが、これは寿命を延ばすうえで、科学的にも正しいアドバイスです。

  

およそ30年にわたって約10万人を追跡調査した大規模研究によると、70歳を過ぎても慢性疾患のない健康な状態を保っていた人々は、果物や野菜、全粒穀物、ナッツ、豆類を多く摂取し、反対にトランス脂肪酸、赤身肉、加工肉、揚げ物、糖分の多い食品を少なく摂取していたことが明らかになりました。(Optimal dietary patterns for healthy agingより

 

ただし、これは「完全菜食主義になるべきだ」とするものではありません。

 

あくまで、「どのような食習慣が健康的な老化に結びつきやすいか」という傾向を示したものです。

 

また、食事の内容だけでなく、食事のタイミングや摂取量にも注目が集まっています

 

たとえば、動物実験では、カロリー制限や断続的断食(intermittent fasting)を行うことで寿命が延びるという結果が数多く報告されています。

 

人間における予備的な研究では、3週間にわたる断食的な食事法により、動物と同様の代謝改善がみられたとのことです。

 

ただし、長期的な健康維持や寿命延長にどう影響するかについては、さらなる研究が必要とされています。

 

 

3. 良質な睡眠を習慣にする

 

適切な睡眠もまた、健康的な長寿を目指すうえで極めて重要な要素です。

  

イギリス人約50万人を対象にした研究によれば、不規則な睡眠パターンを持つ人は、規則的な睡眠パターンを持つ人に比べて、早期死亡のリスクが50%も高くなることがわかりました。(Sleep regularity and mortality: a prospective analysis in the UK Biobankより

  

さらに、長期間交代勤務を続けてきた看護師たちは、勤務時間が安定していた看護師に比べて、退職後の健康状態が悪く、寿命も短かったというデータがあります。

 

このように、毎晩一定の時間に質の良い睡眠を取ることが、長寿に大きく寄与すると考えられます。

 

ただし、必要な睡眠時間や最適な就寝時間は個人差が大きいため、一律の推奨は難しいとされています。

 

英国の国民保健サービス(NHS)は、成人に対して1日7〜9時間の睡眠を目安とすることを推奨しています。(Sleep Myths vs. Sleep Factsより

 

自分にとって最適な睡眠サイクルを見つけることが、長寿への近道となるでしょう。

 

 

4. ストレス管理と社会的つながりの維持

 

ストレスは、心だけでなく体にもさまざまな影響を及ぼします。

 

たとえば、幼少期のストレス体験(親の死、虐待、ネグレクトなど)は、老年期の健康リスクや寿命にまで影響を及ぼす可能性があるとする研究があります。

 

これは、炎症反応を引き起こすことで、細胞レベルでの老化を早めることが原因とされています。(Inflammageing: chronic inflammation in ageing, cardiovascular disease, and frailtyより

 

一方で、高齢者でストレスへの心理的回復力(レジリエンス)が高い人は、あらゆる原因による死亡リスクが低いことも分かっています。

 

ある研究では、たった8週間のヨガによって、高齢者の心理的レジリエンスが有意に改善したと報告されています。(Association between social activity frequency and overall survival in older people: results from the Chinese Longitudinal Healthy Longevity Survey (CLHLS)より

 
 

また、社会的なつながりも長寿に大きく関与しているとされます。

 

たとえば、65歳以上で毎日社会的活動に参加している人は、ほとんど社交活動をしていない人に比べて、その後5年間生き延びる可能性が3倍高かったというデータがあります。(Stay social, stay young: a bioanthropological outlook on the processes linking sociality and ageingより

 

社会的つながりがストレス軽減に貢献することが、健康寿命を延ばす一因となっていると考えられています。

 

 

遺伝の影響と限界

 

生活習慣とは別に、寿命に関して私たちがコントロールできない要素として、「遺伝」の存在があります。

 

長寿に関する遺伝子の突然変異が自然に存在する人々は、そうでない人に比べて寿命が長い傾向があるとする研究もあります。(Genetic variation in insulin/IGF-1 signaling pathways and longevityより

 

とはいえ、寿命における遺伝の影響は20〜40%程度であると予測されており、残りの60〜80%は生活習慣によるものと考えられています。

 

実際、Ethel Caterhamさん自身は115歳という驚異的な年齢を迎えましたが、彼女の娘2人はそれぞれ71歳と83歳で亡くなっています。

 

たとえ良い遺伝子を持ち、優れた生活習慣を実践していたとしても、人生には運も影響するのです。

 

それでも、日々の生活の中で心がけるべきことは明らかです。

 

身体を動かし、バランスの良い食事を取り、良質な睡眠を確保し、ストレスをうまく管理することが、長く健康に生きるための最良の選択であることに変わりはありません。

 

 

まとめ

・1日30分の運動習慣と長時間の座りっぱなしを避ける生活が、長寿に効果的

・野菜・果物・豆類を中心とした食生活が健康寿命を支える

・良質な睡眠とストレス管理、そして社会的なつながりが、老後の健康に大きく寄与する

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