科学

「加糖」は老化を加速させる?細胞の“実年齢”に影響を及ぼすとの研究結果

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コンビニのお菓子やスイーツ、24時間稼働してる自動販売機……。

 

見渡せばいつでもどこでも安価に甘いものが目に入る昨今、甘いものが食事に含まれない日はない人がほとんどではないでしょうか。

 

そんな「加糖(Added Sugar)」が、私たちの体の老化スピードを加速させるかもしれません。

 

2024年7月にアメリカの研究チームが発表した研究によれば、砂糖の摂取量が多い人は、実際の年齢よりも「生物学的年齢(Biological Age)」が高くなる傾向があるといいます。

  

この研究では、見た目や暦年齢(Chronological Age)ではなく、「細胞そのものが何歳か」という観点から老化の進行を評価しています。

 

そしてその結果、1日に摂取する加糖量を抑えることが、老化の進行を抑制する鍵になる可能性があることが示されました。

  

JAMA Network Openに掲載された研究を参考に、以下に内容をまとめます。

 

参考記事)

This Popular Ingredient Might Make You  Age Faster, Study Shows(2024/09/24)

  

参考研究)

Essential Nutrients, Added Sugar Intake, and Epigenetic Age in Midlife Black and White WomenNIMHD Social Epigenomics Program(2024/07/29)

 

 

加糖摂取と生物学的老化の関係性

   

本研究は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のDorothy Chiu博士らの研究チームによって行われました。

 

研究チームは、生物学的年齢を評価するために「GrimAge2」と呼ばれるマーカーを使用しました。

 

これは、疾患のリスクや死亡率を予測するために開発されたエピジェネティック指標の一つで、個々人の細胞レベルでの老化進行度を測定することができるものです。

 

研究では、1987年から1997年に実施された全米心肺血液研究所(National Heart, Lung, and Blood Institute)による成長と健康の研究(NGHS)のデータを用いられました。

  

当時、白人および黒人の少女(9~19歳)の健康データが収集されており、そのうち約350人が2015年から2019年にかけて追跡調査の対象となりました。

 

対象者はカリフォルニア州北部に居住しており、唾液サンプルの提供と食生活に関するアンケートに回答しました。

 

 

平均摂取量は1日60g以上、最大316gの人も 

 

分析の結果、被験者の平均的な加糖摂取量は1日60g超であることが判明しました。

 

一部の被験者は1日に最大で316gもの加糖を摂取していたこともわかり、アメリカ人の過半数が推奨量(1日50g以下)を超過している現状が明らかになりました。

  

加糖の摂取源は、ソーダやスイーツだけではありません。加工食品、冷凍食品、ドレッシング、栄養補助食品にまで含まれていると、クリーブランドクリニックの栄養士であるJulia Zumpano氏は指摘しています。

 

加糖が体内に取り込まれると、酸化ストレスや炎症反応が引き起こされることがあります。

 

これは、活性酸素(フリーラジカル)が抗酸化物質の働きを上回ると細胞が損傷を受けるという現象です。

 

また、加糖によって「糖化反応(Glycation)」が促進されると、終末糖化産物(AGEs)と呼ばれる有害な物質が生成され、細胞の機能を低下させ老化を早める原因になります。

 

 

エピジェネティクスと砂糖の関係 

 

研究ではさらに、加糖の摂取がエピジェネティック(遺伝子発現の制御)にまで影響する可能性が示唆されました。

 

これは、生活習慣や環境因子がDNAに化学的な変化をもたらし、遺伝子の働きそのものに変化を引き起こすというメカニズムです。

  

砂糖は代謝に影響を及ぼし、それによって細胞の成長や修復プロセスも変わってしまいます」とZumpano氏は説明しています。

 

しかし、研究を主導したChiu博士は、このようなエピジェネティックな変化は可逆的である可能性が高いと述べています。

 

彼女らの推計では、加糖の摂取量を毎日10g減らすことで、生物学的年齢が平均して約2.4か月若返ることが示されています。

 

注)上記のニュアンスについて

「1日あたり10g多く添加糖を摂っているグループは、少ないグループより平均でエピジェネティック(生物学的)年齢が2.4か月高かった」と言う結果からの逆説的な推定

 

  

加糖を減らすための実践的なアドバイス 

Zumpano氏は、「加糖(精製された糖)」と「自然な糖」を区別することがまず重要であると指摘します。

 

果物や野菜に含まれる糖は自然なものであり、過剰でなければ老化への悪影響は少ないとされています。

 

ただし、極度に糖度が高く品種改良された果物においてはこの限りではありません。

 

加糖の摂取を減らすには、まず摂取源対策を始めることが有効です。

 

例として、彼女は次のように提案しています。

1. 甘味飲料を水に置き換える

2. スイーツや焼き菓子など明らかに加糖が多い食品を控える

3. パンやドレッシング、調味料、加工肉などの「隠れ加糖食品」に注意を払う

 

Zumpano氏は、「砂糖には栄養的な価値はなく、非常に依存性が高いため、摂取量を減らすのは簡単ではない」とも述べています。

 

一方で、Chiu博士は、加糖を控えるだけでなく、食物繊維や良質な脂質、ビタミン・ミネラルが豊富な食事を心がけることも重要であると強調しています。

 

彼女は、「健康的な食習慣とそうでない食習慣の“差し引き”が、エピジェネティック年齢に最も大きな影響を与える」と述べています。

 

  

砂糖を減らすことが、若さを保つ第一歩に 

この研究から、加糖の過剰摂取が細胞の老化に関わる重要な要因であることが明確になりました。

 

見た目の若さだけでなく、体の内側からの健康と長寿を目指すためにも、日常の食生活を見直すことが求められています。

 

  

まとめ

・過剰な加糖摂取は、炎症や酸化ストレスを引き起こし、生物学的年齢の加速に関係している

・加糖はエピジェネティクスにも影響を与え、代謝や細胞の成長を変化させる可能性がある

・1日10gの加糖削減で、平均して約2.4か月の「若返り」効果が期待できる

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