近年、多くの人が健康意識の高まりから、カロリーゼロの人工甘味料を取り入れるようになっています。
ダイエット飲料や糖質オフのお菓子、ガムなどに使われるスクラロース(英語での商品名:Splenda)は、砂糖の約600倍の甘さを持ちながらもカロリーを含まないため、体重管理や糖尿病予防に適していると考えられてきました。
しかし、南カリフォルニア大学による最新の研究によると、スクラロースは脳の食欲制御に影響を与え、むしろ空腹感を増加させる可能性があることが明らかになりました。
今回は、スクラロースがどのように脳に影響を及ぼすのか、詳しく見ていきます。
参考記事)
・Artificial Sweetener Can Trick Your Brain Into Feeling More Hungry(2025/04/04)
参考研究)
・Non-caloric sweetener effects on brain appetite regulation in individuals across varying body weights(2025/03/26)
研究の概要:スクラロースが脳に与える影響とは?

研究チームは、18~35歳の健康な成人75名を対象に、ランダム化クロスオーバー試験を実施しました。
この試験では、被験者が3種類の異なる飲料を摂取し、その後の血糖値や脳の反応が測定されました。
【実験の流れ】
1. スクラロース入り飲料を摂取
2. 砂糖(スクロース)入り飲料を摂取
3. 水を摂取(対照群)
各飲料には無糖のチェリー風味を加え、被験者がどの飲料を飲んでいるのかわからないように工夫されました。
また、各飲料の摂取前後に血液検査と脳のMRIスキャンを行い、視床下部(食欲を調整する脳の領域)への血流変化を測定しました。
その結果、以下のような反応の違いが確認されました。
【砂糖(スクロース)を摂取した場合】
• 視床下部の血流が減少(=空腹感が抑えられる)
• 血糖値が上昇
• インスリンやGLP-1(食欲を抑えるホルモン)の分泌が促進
• 2時間後に空腹感が低下
【スクラロースを摂取した場合】
• 視床下部の血流が増加(=空腹感が高まる)
• 血糖値の上昇なし
• インスリンやGLP-1の分泌なし
• 2時間後も空腹感が持続
つまり、砂糖を摂取すると食欲が抑えられるのに対し、スクラロースを摂取すると食欲が増してしまう可能性があるのです。
また、特に肥満の被験者では、スクラロース摂取後のホルモン応答の変化がさらに顕著だったことがわかりました。
これは、スクラロースと腸内細菌の相互作用が関係している可能性があります。
なぜスクラロースは空腹感を増すのか?

スクラロースは砂糖の約600倍の甘さを持ちながら、カロリーがゼロです。
研究者によると、この「カロリーの期待値と実際のエネルギー供給のギャップ」が脳の食欲制御に影響を与えている可能性があります。
南カリフォルニア大学の内分泌の専門医であるKathleen Alanna Page氏は次のように指摘しています。
「甘さを感じたとき、体は何らかのカロリーを摂取したと反応する。しかし、実際にカロリーが供給されないと、脳がそのギャップを埋めようとして甘いものをさらに欲しがるようになるのだろう」
さらに、スクラロースはインスリンやGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)の分泌を促さないため、体がカロリーを摂取したと認識せず、結果的に空腹感が持続するのです。
スクラロースの安全性に関する懸念
かつて、スクラロースは「生体に影響を与えない物質」と考えられていました。
しかし、最近の研究により、以下のような問題が指摘されています。
• DNA損傷のリスク
• 糖代謝の悪化(血糖コントロールの低下)
• 腸内細菌叢(マイクロバイオーム)の変化
(Personalized microbiome-driven effects of non-nutritive sweeteners on human glucose toleranceより)
特に、スクラロースが腸内細菌に与える影響は大きく、腸内フローラのバランスを崩すことで糖代謝の悪化や免疫機能の低下につながる可能性があります。
本研究から、スクラロースはダイエットや血糖管理に役立つと思われがちですが、実際には逆効果の可能性があることが示されました。
今後もさらなる研究が必要ですが、「ゼロカロリー=安全」とは限らないことを念頭に置き、自分の健康に合った選択をすることが大切です。
まとめ
・スクラロースは脳の視床下部に影響を与え、空腹感を増加させる可能性がある
・砂糖と異なり、スクラロースは血糖値や食欲抑制ホルモンを変化させない
・スクラロースの長期的な健康影響をさらに調査する必要がある
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