Weekend Warriors(週末の戦士)とは、週末のみ運動をする人々のことを指す造語として、近年使われるようになってきました。
これはトレーニングやウォーキングなどの運動だけでなく、アウトドア活動などを含めて週末に活動的になる人全般を指すようです。
杭州師範大学による最新の研究によると、週末だけ運動する人も、週の間に分散して運動する人と同じくらい脳の健康を向上させる効果があることが分かりました。
この研究では、週に150分の運動を行った人は、認知症、パーキンソン病、脳卒中、うつ病、不安症のリスクが低下したことが確認されました。
運動の頻度は問わず、1〜2日でまとめて行っても、1週間にわたって分散して行っても、効果はほぼ同じだったのです。
専門家によると、最も重要なのは定期的に運動することであり、自分のライフスタイルや体力に合った方法を選ぶのが望ましいとされています。
毎日運動する時間を確保することが難しい人がいるかもしれませんが、週末にまとめて運動するだけでも脳の健康に良い影響を与えるということは、そういった忙しい毎日を送る人にとって運動の動機を与えるものだと言えます。
今回のテーマとして以下に研究をまとめます。
参考研究)
・Accelerometer-derived ‘weekend warrior’ physical activity pattern and brain health(2024/08/21)
研究の方法と結果

2024年8月に『Nature Aging』に発表されたこの研究では、75,000人以上のデータが分析されました。
参加者は中等度から高強度の運動(早歩き、ダンス、ジョギング、サイクリングなど)を行い、その影響を追跡しました。
参加者は以下の3つのグループに分類されました。
1. 非活動的なグループ:週に150分未満の運動しかしていない人
2. 週末の戦士:150分以上の運動を1〜2日でまとめて行う人
3. 定期的な運動者:150分以上の運動を週に分散して行う人
研究チームは、平均8.4年間にわたって参加者の健康状態を追跡し、神経疾患や精神的健康への影響を分析しました。その結果、運動が脳の健康を守ることが確認されました。
具体的な健康効果
週末の戦士は、非活動的な人と比べて以下のリスクが低下していました。
• パーキンソン病のリスクが45%低下
• 脳卒中のリスクが21%低下
• 認知症のリスクが26%低下
• うつ病のリスクが40%低下
• 不安症のリスクが37%低下
これらの結果は、週末の戦士と定期的な運動者の間で大きな違いがないことを示しており、運動の頻度よりも継続することが重要であることが分かります。(Association of the “Weekend Warrior” and Other Leisure-time Physical Activity Patterns With All-Cause and Cause-Specific MortalityA Nationwide Cohort Studyより)
なぜ運動は脳の健康に良いのか?
この研究では、運動が脳に良い理由までは詳しく調査していませんが、専門家によると複数のメカニズムが関与していると考えられています。(Updated overview on interplay between physical exercise, neurotrophins, and cognitive function in humansより)
1. 神経栄養因子の分泌
• 運動は神経栄養因子(neurotrophic factors)を活性化し、神経細胞の成長や生存を促進する
• これにより、神経細胞同士のコミュニケーションがスムーズになり、認知機能が向上する
2. 脳のエネルギー代謝の改善
• 運動は脳細胞のエネルギー代謝を活発にし、必要なエネルギー供給をサポートする
•その結果、認知機能の低下を防ぐ可能性がある
3. 抗炎症・抗酸化作用
• 運動には抗炎症作用や抗酸化作用があり、脳を酸化ストレスや炎症から保護する
• さらに、脳の血流が促進され、酸素や栄養が適切に供給されることで脳機能が維持される
また、心血管の健康と脳の健康は密接に関係しているため、有酸素運動やマインドフルネス運動(太極拳やヨガなど)も、脳に良い影響を与える可能性があります。
その他参考研究)
脳の健康を守るためにできること
今回の研究では、週末にまとめて運動しても、毎日運動しても効果は同じであることが示されました。
そのため、毎日運動できないことを気にしすぎる必要はありません。
専門家によると、自分のライフスタイルや体力に合った方法を選ぶことが重要です。
• 平日は忙しい人 → 週末に集中的に運動する
• 継続が苦手な人 → 低強度の運動を毎日少しずつ行う
また、認知症などの神経疾患は加齢とともにリスクが高まるため、早い段階から運動習慣を身につけることが望ましいとされています。
さらに、運動以外にも脳の健康を守る方法があります。
例えば、地中海式食事法やMIND食(脳に良いとされる食事法)は、認知機能の低下を防ぐ可能性があるとされています。(What Do We Know About Diet and Prevention of Alzheimer’s Disease?より)
まとめ
・週末の運動によってパーキンソン病、脳卒中、認知症、うつ病、不安症のリスクが大幅に低下する
・この効果は、週末だけ運動した場合も週に分散して運動した場合も、脳の健康への効果はほぼ同じである可能性が示唆された
・自分のライフスタイルに合った運動習慣を選び、継続することが重要
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