科学

二型糖尿病が脳の萎縮を加速、研究が示す新たなリスク

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生活習慣が引き起こす代表的な病気といえばやはり「糖尿病」ではないでしょうか。

 

糖尿病には一型と二型があり、一型糖尿病は遺伝的要因や自己免疫疾患などによって膵臓機能に障害がある場合に起こるタイプです。

 

本来、膵臓から分泌されるインスリンの働きによって、血中の糖(ブドウ糖)が細胞に取り込まれ、その結果として血糖値が下がるようになっています。

 

一型糖尿病の多くは、遺伝をはじめとする何らかの要因で膵臓からインスリンが分泌されず、血中の糖分が細胞に取り込まれなくなることで血糖値が高いままになってしまいます。

 

高血糖の状態が続くと、それにともなって活性酸素が多くなり血管を傷つけたり、LDLコレステロールと酸素が結びついて血管壁に蓄積されることで動脈硬化の原因となっていきます。

 

対して二型糖尿病は、遺伝的な要因に加え、高糖質な食べ物を習慣的に摂取していたり、肥満や過食、運動不足などによって引き起こされるタイプです。

 

インスリンの分泌が正常に行われなくなったり、インスリンが分泌されていたとしても細胞が血中の糖を取り込みにくくなってしまうインスリン抵抗性が高い)状態が二型糖尿病の特徴です。

 

前置きが長くなってしまいましたが、今回のテーマはそんな二型糖尿病と認知機能の低下に関係する研究についてです。

 

参考記事)

Type 2 Diabetes Linked to Accelerated Brain Shrinkage, Study Reveals(2024/11/22)

 

参考研究)

Acceleration of Brain Atrophy and Progression From Normal Cognition to Mild Cognitive Impairment(2024/10/30)

 

 

研究の背景

 

近年の研究により、白質の減少速度には個人差があり、中年以降にその差が顕著になることが明らかになりました。

 

白質は脳内で神経繊維を覆う組織で、脳のさまざまな部分を結ぶ通信網の役割を果たします。

 

これが正常に機能することで、効率的な情報伝達が可能になります。

 

しかし、白質が減少すると、神経間の情報伝達が劣化し、結果として認知機能の低下や記憶障害が発生しやすくなります。

 

通常、加齢に伴って灰白質(神経細胞の本体を含む部分)や白質が徐々に減少しますが、特に白質の減少が急激に進む人々は、中年以降に認知機能の低下リスクが高まることも確認されています。

 

この現象は、特に二型糖尿病を患う人々ではさらに顕著であり、その影響が認知機能低下や認知症のリスクにどのように関連しているのかが注目されています。

 

 

二型糖尿病と軽度認知症の発症リスク

 

今回、ジョンズ・ホプキンス大学によって行われた研究では、1995年に開始された長期的な脳スキャン試験で得られたデータが調査されました。

 

調査の結果は、白質の減少が顕著な人々軽度認知障害(MCI)を発症するリスクが86%高いことが確認され、二型糖尿病を持つ人は、糖尿病を持たない人と比較して白質の減少が顕著であり、MCIを発症するリスクが41%高いことが分かりました。

 

さらに、アルツハイマー病の特徴的な病理であるアミロイド斑を示すバイオマーカーを持つ人々は、認知機能の低下リスクが50%近く上昇しました。

 

これらの要因が重なることで、認知機能低下リスクはさらに高まることが判明しています。

 

研究の中で注目されたもう一つの点は、糖尿病とアルツハイマー病の病理的要因であるアミロイド斑がどのように相互作用するかという点です。

 

過去の研究でもインスリン抵抗性アミロイド斑の形成に重要な役割を果たしていることが知られており、糖尿病アルツハイマー病の進行を加速する可能性があると考えられています。

 

また、185人の参加者を対象とした分析では、糖尿病を持つ人はわずか8人でしたが、この小さなサンプルサイズでも有意な結果が得られました。

 

糖尿病を持つ人々では、白質の減少が糖尿病を持たない人々と比較して著しく進行しており、この傾向がMCIの発症率の上昇に寄与していることが確認されました。

 

これは、糖尿病治療薬が認知症リスクを軽減する可能性があることを示した他の研究とも一致しています。

 

 

本研究の意義と限界 

この研究は、参加者の脳スキャンを最大27年間追跡した非常に長期的な試験でした。

 

通常、このような長期間のデータを得ることは難しく、多くのMRI研究が10年未満の期間で実施されています。

 

そのため、この試験のデータは極めて貴重です。

 

前項で紹介した実験をさらに詳しくまとめると、185人の参加者は20歳から76歳までの間でデータが収集され、5回以上にわたり脳スキャンを受けました。

 

最終的に、60人がMCIを発症し、そのうち8人が認知症に進行しました。

 

ただし、この研究には限界もあります

 

参加者の多くが高学歴の白人であり、その他の教育や民族的な違い、地域固有の食生活がある人々への適用性は明確ではありません

 

また、参加者の63%が女性であるため、性別が結果にどのように影響を与えるかを完全に評価することはできないことにも注意が必要です。

 

 

糖尿病管理と今後の可能性 

研究者たちは、糖尿病を適切に管理することで、将来的な認知機能低下のリスクを減らせる可能性があると述べています。

 

例えば、ある研究では二型糖尿病治療薬が認知症リスクを35%低減する効果があることが示されており、これらの結果は、糖尿病が認知機能に与える影響を軽減するための新しい治療法や予防戦略の開発に役立つ可能性があります。

 

また、この研究の結果を受け、神経科学者や臨床医がより効果的な介入策を構築するきっかけにもなります。

 

認知機能の低下防止として食生活の見直しが検討される際、有力な証拠としても活用されることが期待されます。

 

 

まとめ 

・二型糖尿病を患っている人は、白質の減少が加速し、軽度認知障害(MCI)や認知症のリスクが増加することが確認された

・27年間の追跡データに基づくこの研究は、糖尿病と認知機能低下の関連を明らかにし、今後の研究や治療法開発に貴重な知見を提供した

・糖尿病がアルツハイマー病の病理進行を早める可能性が示され、糖尿病管理が認知症予防の重要な鍵となる

 

 

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