低炭水化物・高脂肪(LCHF)食が心臓病のリスクを高める可能性があることが新たな研究で示されました。
このダイエット法は、近年、体重管理の方法として多くの支持を集めており、アメリカでも2022年には7%の人が高脂肪食を取り入れているとされています。
しかし、研究者たちは心臓血管系の健康に与える長期的な影響について疑念を持っており、特に悪玉コレステロール(LDL)や心血管イベントへの関与が注目されています。
以下の記事を参考にまとめていきます。
参考記事)
・Following a ‘Keto-Like’ Diet Linked to a Higher Risk of Heart Disease, Study Shows(2023/03/20)
・‘Keto-Like’ Diet May Be Linked to Higher Risk of Heart Disease, Cardiac Events(2023/03/05)
低炭水化物・高脂肪食と心臓病リスク増加
カナダのセントポール病院とブリティッシュ・コロンビア大学の研究チームは、American College of Cardiologyの年次学会で“低炭水化物・高脂質(LCHF)の食事”に関する研究を発表しました。
研究によると、LCHF食を習慣にしている人は、標準的な食事をしている人と比較して、心臓病や脳卒中などの病気を経験する確率が高いことがわかりました。
12年間の追跡期間中では2倍以上の差があることが判明したことで、低炭水化物・高脂質食についての疑念が強まる形となりました。
低炭水化物・高脂質(LCHF)食は、通常、1日のカロリーのうち25%以下を炭水化物から摂取し、45%以上を脂肪から摂ることが多いです。
これにより、標準的な食事と比べてエネルギーの供給源が脂肪に偏ることになり、体が脂肪を燃料源として優先的に使う「ケトーシス」と呼ばれる代謝状態が促進されます。
一方、ケトジェニックダイエットはさらに極端で、70%以上のカロリーを脂肪から摂取し、炭水化物を10%未満に抑えることが求められます。
このため、ケトジェニックダイエットは多くの人にとって継続が難しいとされ、比較的穏やかなLCHF食が人気を集めています。
研究の内容と結果
この研究では、イギリスのUKバイオバンクから提供された約70,000人のデータを分析対象としました。
研究チームは、自己申告された食事内容に基づき、305人がLCHF食を行っていると特定し、標準的なバランスの取れた食事をしている1,220人と比較しました。
この研究でのLCHF食の基準も前項と同様に、1日の摂取カロリーのうち25%以下を炭水化物から摂取し、45%以上を脂肪から摂取するというものでした。
研究の結果、LCHFダイエットを採用した人々は、LDLコレステロール値が上昇し、心血管イベント(狭心症、動脈閉塞、心臓発作、脳卒中など)のリスクが2倍に増加することが示されました。
また、アポリポタンパクBという、心血管リスクを示す重要な指標となるタンパク質のレベルも高まっていることがわかりました。
このアポリポタンパクBは、LDLコレステロールよりも正確に心血管リスクを予測する要素とされています。
飽和脂肪と動物性食品の影響
LCHF食が心血管リスクに与える影響は、すべての人に均等に現れるわけではありません。
研究によると、LCHFダイエットを採用した人々の中でも、特に高コレステロール血症を引き起こしやすい特定のグループが存在し、こうした人々が最も心血管リスクの増大を経験していることがわかりました。
このため、LCHFダイエットがすべての人に心臓病リスクをもたらすわけではありませんが、特定の集団においては高いリスクを伴う可能性があります。
この研究で注目されたもう一つのポイントは、LCHFダイエットを採用した人々の食事において、飽和脂肪(特に動物性脂肪)の摂取量が増加していたことです。
LCHFダイエットを採用したグループでは、動物性脂肪の割合が33.2%と、標準的な食事をしているグループ(16.8%)の2倍以上であり、これがLDLコレステロールやアポリポタンパクBの増加に寄与していると考えられます。
アメリカ心臓協会(AHA)はコレステロールを下げるために、総カロリーの6%未満に飽和脂肪を抑えることを推奨しています。
LCHFダイエットを採用する際には、動物性脂肪の摂取を減らし、アボカドや魚油、ナッツなどの不飽和脂肪を取り入れることが好ましいとしています。
まとめ
・すべての人が同じように低炭水化物・高脂肪食が適切なわけではなく、リスクを理解することが重要
・アボカドや魚油など健康的な脂肪(不飽和脂肪酸)を取り入れることで心臓病リスクを軽減することが可能
・減量や健康管理のためにLCHFダイエットを行う場合は、医師や栄養士に相談し、リスクと利点をよく検討する必要がある
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