地中海食といえば、世界中で知られている健康的な食事の一つです。
魚介に含まれる脂質やオリーブから得られる油、全粒穀物から得られるミネラルや炭水化物など、人が欲する三大栄養素以上のあらゆる栄養を摂取することが可能です。
今回紹介するのも、そんな地中海色から得られた良い研究結果です。
どうやら認知機能の低下を抑制する効果が期待できるようです。
参考記事)
・12-Year Study Reveals How The Mediterranean Diet Might Affect Your Brain(2023/11/28)
参考研究)
地中海食と認知機能低下抑制
65歳以上の840人を対象としたフランスの研究によると、地中海食を実践している人は認知機能の低下が起こりにくいことが示唆されました。
アルツハイマー病やその他の神経変性疾患などの認知症は多くの場合、ゆっくりとした認知機能の低下から始まります。
地中海食は、クレタ島、イタリア、スペイン南部などの地域で伝統的に食べられてきた食べ物を中心に、果物や野菜、全粒穀物、魚介類やチーズ、そしてオリーブオイルなどを使用することが特徴的です。
このような食品の組み合わせには、脳や身体の健康を保つ効果があったりと多くの利点があることが証拠で示されています。
今回の研究では、地中海食を食べる習慣がある人は、脳の認知機能の損失を防ぐのに役立つ可能性があることが主張されています。
しかし調査は自己申告制の食事アンケートを使用しているため、ときに矛盾した結果が得られていると指摘されています。
こういった不正確さを回避するために、国際的なグループの研究者らはバイオマーカーによって認知機能の測定を行うことを推奨しています。
本研究の第一人者であるAlba Tor-Roca氏は、 「食事バイオマーカーのパネルによって評価された地中海食の遵守は、高齢者の長期的な認知機能低下と逆相関していることが判明した」と述べています。
Tor-Roca氏らは、12年間にわたって収集した健康データと認知データを分析し、地中海食と高齢者の認知機能低下との関連性を詳しく調べました。
分析では、地中海食メタボロームスコア (MDMS) と呼ばれる評価基準が作成されました。
このスコアは、地中海食の 7 つの重要な部分(野菜、豆類、果物、穀物、乳製品、魚、脂肪)を基とした食事代謝バイオマーカーに基づいています。
科学者は、サンプル中の代謝産物のレベルを測定することで、私たちの病気の可能性のあるバイオマーカー(身体的な兆候)を見つけることができます。
Tor-Roca氏らは、「この指標が分かれば、認知障害との関連性が評価可能である」とし、研究の開始時に収集された参加者の血液サンプルからを基に、飽和および不飽和脂肪、腸内細菌が生成するポリフェノール、その他の植物化学物質を含む特定の物質の血清レベルなどを測定しました。
その後12年間にわたり、参加者の認知能力や認知障害を判定するための神経心理学的検査が実施されました。
その結果研究者らは、スコアと血清バイオマーカーに基づいて、地中海食と高齢者の認知機能低下との間に保護的な関連性があることを発見しました。
地中海食をより忠実に遵守している人は、遵守レベルが低い人に比べて、認知機能の低下が有意に遅いことが示されました。
「これらの結果によって、地中海食やその他の食事パターンに関連する健康上の利点を観察が可能になる。また、これらの長期追跡の評価は、高齢者の個別化されたカウンセリングの助けにもなる」と Tor-Roca 氏は述べています。
栄養が健康に及ぼす影響は複雑ですが、この研究結果は、食事ターンが脳の健康を維持し、認知機能障害のリスクを軽減するのに役割を果たす可能性があるという考えの裏付けになります。
著者らは、「食事パターンに基づいた食事代謝スコアの開発は、食事の評価基準をさらに改良するのに役立つ可能性がある。食事が高齢化人口の認知的健康に影響を与える生物学的メカニズムのより良い理解に貢献することが期待される」とまとめています。
研究の詳細はMolecular Nutrition and Food Researchにて確認できます。
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