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ソフィーとエミールの出会い~エミールより~

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この記事では、ジャン・ジャック・ルソーが著した“エミール”から、子育てや生活に役立つような言葉を抜粋して紹介していきます。

      

“子どもは子どもの教育が必要である”と考えたルソーの考えを、1記事に3つずつまとめていきます。

      

またそれらの言葉がこの本の要約にもなるようにまとめていきます!

  

ジャン=ジャック・ルソー(1712~1778年)

  

今回からエミール下巻の中盤に差し掛かります。

 

この辺のストーリーは、エミールとルソー(がイメージするエミールを導く師)がパリを出発し旅をする中での出来事が書かれています。

 

おそらく作中最もストーリー性の高い部分でもあります。

 

ただ、イリアスやオデュッセイアなどの叙事詩を知っている前提で話が進んだりします。

 

この記事では、今までのように教訓めいた文を紹介するというより、物語の内容を要約し、神話なども知らなくても話の内容が楽しめるようにまとめていきます。

 

まずは旅の始まりより抜粋した文からです。

   

 

旅の始まり

私達は絶えず前進していく。

 

私は私たちの第一の工程に遠く離れた目標を置いた。

 

その口実は容易に分かることだ。

 

パリを出て、遠くへ妻を探しに行かなければならないのだ。

 

いく日かたったある日のこと、道が全然見つからない谷間や山の中へいつもより深く迷い込んでしまい、私達は行くべき道が分からなくなる。

 

大したことではないた、どりつければいいのだ。

 

幸い、1人の農夫に出会う。

 

その農夫は、私たちをその家へ連れて行ってくれる

   

私たちは彼が出してくれた粗末な昼食を旺盛な食欲で食べる。

 

ひどく疲れ、ひどく腹を空かしている私たちを見て農夫は言う。

 

もし親切な神様があなた方を他の向こうへ連れて行ってくださったとしたら、あなた方はもっとよいもてなしを受けたでしょうに。

 

平和に暮らしている家、とても情け深い人たち、とても親切な人たちを見つけたでしょうに。

 

財産家だったその家が残したものによって、このあたりの者はみんな暮らせているのです。

 

「先生、その家へ行ってみましょう。」とエミールは私に言う。

 

私は農夫に家の場所をよく教えてもらい、出かけていくことにした。

 

途中で大雨が降ってきたが、雨は私たちの歩みを止めはしなかった。

 

 

善き家の家族

私たちは教えられた家にたどり着く。

 

周りの村落の中で、その家だけが簡素だが、いくらか人目を引くものも持っている

 

私達は自己紹介をして一夜の宿を乞う。

 

召し使いは主人に取り次ぎ、私達を家の中へと招き入れてた。

 

主人は私達に色々と、しかし丁寧な口調で聞く。

  

私達は旅行の理由は言わず、回り道をした訳を話す。

 

主人は昔の豊かな生活から得た、態度によって相手の身分を知る目を持っている。

 

華々しい社会に生活していた人は誰でも、その点について思い違いをすることはめったにない。

 

そういう旅券のおかげで、私達は宿を許された。

   

非常に狭い部屋だが、清潔感があり気持ちの良い部屋に案内される。

 

エミールはすっかり驚いて言う。

 

「何ということだろう。まるで私たちを待っていたようなもんだ。本当にあの農夫の言った通りだ。なんという心遣い、親切、用意、しかも知らない人のために。」

 

私はこう言う。

 

「こういうことに感心するのは良いことだ。しかし、驚くことではない。よそ者が滅多に来ないところでは、どこでも彼らは歓迎される。度々客をもてなす必要がないということが、よく客をもてなさせることになる。客が押しかけるから、客あしらいが悪くなるのだ。」

 

エミールは言った。

 

「客など来なくても構わない、しかし、来ればいつでも歓迎する、そういうことも、とにかく賞賛すべきことです。」

 

服を着直して、私達は家の主人のいる所へ行く。

 

主人は彼の妻に私を紹介する。

 

彼女は単に礼儀的ではなく、好意をたたえて私達に挨拶する。

 

光栄にも彼女の眼差しは時々エミールに向けられる。

 

エミールくらいの年齢の青年が自分の家やってきたのを見て、不安を感じずに、あるいはとにかく好奇心を持たずにいられることは滅多にない。

 

私たちのために急いで夕食が用意される。

 

食堂に入っていくと5人分の食器がある。

 

私たちは席に着いたが一つだけ席が空いている。

 

その席に1人の若い女性がついた。

 

エミールはその女性に会釈し、話をし、食べる。

 

話は道に迷った旅行者たちのことが中心になる。

 

若い女性はと見れば彼女は真っ赤になり、目を伏せて皿を見つめている。

 

母親は娘の当惑した様子に気がついて、父親に目配せをする。

 

そこで父親は話題を変える。

 

彼はその寂しい住居のことを話しているうちに、そこに彼を閉じ込めることになった事件の物語をいつと話にはじめている。

 

彼の生涯の不幸、妻の定説、彼らがその深い結びつきの中に見出した慰め、この隠れ家で送っている安らかで和やかな生活のことを。

 

しかし、そこにいる若い女性の事には一言も触れない。

 

エミールは父親の話に感動して食べるのを止めて、耳を傾けている。

 

食事の初めから絶えず娘に気をつけていた母親は、娘の困っている姿を見て、何か用事を言いつけてそこから解放してやる。

 

まもなく若い娘は戻ってくるが、まだ十分に落ち着けてないので、取り乱した様子が誰の目にもはっきりとわかる。

 

母親は優しい口調で言ってやる。

 

「ソフィー、おすわりなさい。」

  

 

“ソフィー”

ソフィーという名に、エミールがはっとした様子を、あなた方も見ることができたろう。

 

その懐かしい名前を聞いて、彼は突然目を覚まされ、あえてそういう奴を持っている人物をまじまじと見つめる。

 

※ソフィー=理想的な女性としてエミールが憧れている存在

 

ある種の恐れと不信の子が持って、彼女を見つめている。

 

彼には心に描いていた姿そのままのものは見えない

   

今見ているのはもっと値打ちのある人なのか、それほどでもない人なのか、彼にはわからない。

 

彼は一つ一つの先を考えてみる、一つ一つの動き、一つ一つの身振りに注意している。

 

彼は全ての点にさまざまな混乱した解釈を見出す。

 

彼は不安な混乱した面持ちで、私の顔を見る。

 

多くの質問、多くの非難を放った目を私に向けている。

 

彼の混乱した気持ちは、ソフィーの鋭い目を逃れられない。

 

彼女にはエミールの不安な気持ちがまだ恋ではないことが分かっている。

 

しかし、とにかく彼は彼女のことを考えている、それだけで十分なのだ。

 

ソフィーの母は私たちのもくろみの結果を見て微笑んでいる。

 

彼女は娘に話しかける。

 

娘は生まれながらの優しい味を込めながらも、おずおずした口調で母の問に答えるが、それは効果をさらに大きくするばかりだ。

 

その最初の声音を聞いただけで、エミールは屈服する。

 

ソフィーだ、彼はもうそれを疑わない。

 

ソフィーではないとしてももう遅い、それを否定することはもうできまい。

 

ソフィーの他には何も女はいらない。

 

ソフィーの言葉の他には何も聞こえない。

 

彼女が一言言えば、彼は口を開ける。

 

彼女が目を伏せれば、彼も目を伏せる。

 

彼女がため息をついているのを見れば、彼もため息をつく。

 

まるでソフィーの魂が彼を動かしているように見える。

 

エミールの中に自由は消え失せた。

 

混乱し、困惑し、臆病になった彼は、もう自分の周囲に目をやる勇気はない。

 

ソフィーの方は反対に臆病になったエミールを見て安心する。

 

彼女は自分が勝ったことを知り、その勝利を嬉しく思っている。

 

彼女は心の中では喜んでいるが、そういう様子は見せない。

 

彼女は態度を変えてはいない。

 

けれども慎ましい様子をしていても、目を伏せていても、彼女の感じやすい心は喜びに震えている。

 

 

しばしの別れ

ここで私は2人の純真な恋の、あまりにも素朴な、そしておそらくあまりにも単純な物語を始めることになるのだが、読者はその細々した話を子供じみた遊びと考えるだろう。

 

しかし、それは間違いだろう。

 

1人の男性と1人の女性との最初の結び付きが、両者の生活の流れの中に持つことになる影響を、人々は十分によく考えていない。

 

最初の印象というものは、恋愛あるいはそれに代わる好みの場合には、非常に強く長い好感を持つものであることが人々にはわからない。

 

人々は長い歳月に渡るその効果の持続が認めていないのだが、それは死に至るまで絶えず働いているのだ。

 

あくる朝、皆は十分に用意を整えて顔を合わせる。

 

若いふたりが初めて顔を合わせてからまだ12時間しか経っていない。

 

2人はまだ一言も口を聞いていないのだが、互いに了解しあっていることはもう分かっている。

 

あっても2人は親しげな様子は見せない。

 

彼は当惑し、おづおづしている。

 

私たちはその家から出発しなければならない。

 

しかし、それにあたり、家から持っていくものを私たち自身で返しに来ることを許していただきたいと頼んだ。

 

エミールの口はその許しを父親に、母親に求めているが、娘の方に向けられた彼の不安そうな目ははるかに切実にそれを求めている。

 

私達はまた訪ねてくることを許されるが、もっと長くいるようにとはすすめられない。

 

泊まるところがなくて困っている旅人はもてなさなければならないが、恋をしている男が愛している女の家に泊まるのは、品のいいことではない。

  

私達がその懐かしい家の外へ出たかと思うと、エミールはそのあたりに落ち着くことを考える。

 

彼は館の堀に寝たいのだ。

 

しかし、それはもてなしてくれた家の好意を無下にするものである。

 

私達に親切にしてくれた、家から出てきたものが辺りの堀で寝ているとなったら、彼らの名誉を傷つけることになる。

 

私は言う。

 

「エミールよ、自分勝手になってはならない。 

あの人にとって正しいと考えるようにするのだ。

男性の名誉になることを、女性の名誉になることと考えてはいけない。

両者には全く違った原則があるのだ。

それはどちらも同じように強固な、道理にかなった原則なのだ。

どちらも同じように自然に基づいているのだ。

そして、同じ美徳は何だったのことでは人々の噂を軽蔑させるが、あなたの愛人のことでは、それに敬意を払わせることになるのだ。」

 

私はそうした違いの理由を説明し、他人を考慮しないことは、どれほど正しくないことかを彼に悟らせた。

 

そもそもエミールがソフィーの夫になれると、誰が言っているのか。

 

あなたは、あの人の考えを知らないし、ソフィーの心には、それともあの人の両親にはもう決まった人があるのかもしれないではないか。

 

どんなことにしろ、あなたのことについて悪い噂が立てば、娘にとっては拭い去ることのできない汚点となり、その噂の元になった男と結婚しても、それは消えるものではない。

 

青年はどんな結果になるかを十分に考えさせられて、恐れをなし、相変わらず極端な考えに走った。

 

今度はどれほど遠いところへ行っても、ソフィーのいるところから十分遠くへ行ったことにはなるまいと考えるようになった。

 

彼は愛する人の名誉のためなら、自分の幸福などいくらでも犠牲にしたいと思う。

 

彼女に少しでも悲しみを与えるぐらいなら、今後再び彼女に会わなくてもいいとさえ思う。

 

これは、愛することを知っている心を彼に与えるために、彼の青年時代の初めからは私が払ってきた心遣いの最初の成果だ。

 

 

まとめ

今回はエミールが恋した女性の話でしたね。

 

まだ一夜しか過ごしていないのに、2人の心はお互いをしっかり捉えているようです。

 

少し微笑ましく、甘酸っぱい気持ちにさせてくれます。

 

終盤はこのような形でストーリー形式で話が進んでいきます。

 

今回登場したソフィーという女性がどのよう人物なのかはほとんど明らかになっていません。

 

今後の話の中で徐々に明らかになっていくことでしょう。

   

教訓めいたことは少し置いておいて、しばらくはストーリーを楽しんでいこうと思います。

 

それでは、エミール完結までしばしお付き合いください。

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