前回記事
この記事では以前概要をまとめた、【要約】行動経済学ってそういうことだったのか!【紹介】の内容をさらに深堀りながら復習していきます。
著書で紹介されている“プロスペクト理論”や“バイアス”などの用語を中心に1、2テーマずつまとめようと思います。
今回のテーマは“時間割引率”です。
前回までの記事にて、人が感じる印象の曖昧さや損失を避ける傾向などをまとめてきました。
人間の処理能力は目の前に起こる事象だけでなく、未来の自分に対しても認識の歪みを与えてしまいます。
ダイエット、筋トレ、ブログ、楽器……続けたら結果が出るはずの“何か”をやろうと思い立った経験は誰しも一度はあると思います。
そしてそれを継続できなかった経験も……。
一体なぜ続けることができなかったのか。
それを説明するツールが今回紹介する“時間割引率”と“現在バイアス”です。
時間割引率
時間割引率は将来得られる価値が時間によって割り引かれるという考え方のことです。
これを理解するべく質問を用意しましたので、試しに考えてみてください。
・質問
次の文章のうちどちらか好みの方を選んでみてください。
【文章】
A:今すぐに100万円をもらう
B:1年後に110万円をもらう
・Aを選んだ場合
ここでAを選んだ人は、“時間割引率が年率10%を超えている人”と言えます。
年率10%で割り引くと…。
↓
110万円÷1.1=100万円
つまりAの選択肢である100万円と同じ値になります。
だったら今すぐに100万円を獲得できるAを選びますよね。
・Bを選んだ場合
ここでBを選んだ人は、“時間割引率が年率10%未満の人”だと言えます。
もし時間割引率が10%未満だった場合には、その人にとっての110万円だったものの価値は109万円かもしれませんし100.1万円かもしれません。
少なくとも上の条件で選ぶ場合、Aよりも少しでも高いBを選択するは当然のことです。
どちらの選択が良いか悪いかはさておき、Bを選ぶような人は“時間割引率が低い傾向にある人”です。
この時間割引率が低い傾向にある人は、筋トレや勉強に関しても、未来の自分が持つであろう価値を割り引かない(割引率が少ない)ので、コツコツ続けることができるというわけです。
実際に2013年に提出されたM. Keith Chen氏らの研究では、時間割引率の低い人の、喫煙率、肥満度は低く、貯蓄率は高く、握力や肺活量など様々点で優位に立っていることが明らかになっています。
(The Effect of Language on Economic Behaviorより)
では次に時間割引率に関係したバイアス(心理的な偏り)についてまとめていきます。
現在バイアス
現在バイアスは未来に得られる大きな利益より、現在得られる小さな利益を優先してしまう傾向のことです
目の前にある事柄を過大に評価してしまうのもこれが原因とされています。
こちらも質問を用意したので、試しに考えてみてください。
・質問
次の二つの文章のうち、好みの方を一つずつ選んでみてください。
【文章①】
A:今日、100万円をもらう
B:1年後、110万円をもらう
【文章②】
C:10年後に100万円をもらう
D:11年後に110万円をもらう
この質問においてAとDを選んだ人は現在バイアスが強い人と言えます。
どちらも“1年後に10万円増加してもらえる”という条件は同じです。
違うのは10年という期間を経る点ですね。
果たしてAを選んだ人は10年経った後、そこから1年待つことができるでしょうか。
10年後に同じ質問をされたら、“やっぱり今日の100万!”と飛びつき、待っていた時間を無駄にしないでいられるでしょうか。
このように目の前のご褒美やコストを重視しすぎて、判断が歪んでしまうことが“現在バイアス”です。
何かを継続できなかった理由は、そんな未来の自分任せなこの心理状態が原因だったのですね。
まとめ
・時間割引率=かかる時間によって未来の価値を割り引いてしまう
・時間割引率が低い人=健康的な習慣を持つ傾向にある
・現在バイアス=目先の利益優先
子どもでいう夏休みの宿題を後回しにすることに始まり、大人でいうすぐ使わなくなる有料サブスクや通わないフィットネスジムへの登録、果てはクレジットカードのリボ払い……などなど
未来の自分は上手いことやっているだろうという思考の歪みは世の中にたくさん溢れています。
しかし結局は“今とりあえず頑張ること、我慢すること”が未来の利益に繋がるということがほとんどです。
「未来の自分がきっと何とかする」という考えは胸の奥にしまい込み、今やるべきことに目を向けることが大切ということですね。
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