哲学

ツァラトゥストラはこう言った(末人思想)~ニーチェ④~

哲学

の続き…。

前回まではニーチェの超人思想についてまとめていきました。

 

人間は超人になるべく、恐れに立ち向かっていくべきなのだと言っています。

  

それと同時に、“末人(終わりの人間)”という対極の存在もニーチェは示しています。

末人は、“超人”とは真逆のものです。(超人=強い意志を持ち、より高みを目指しながら自らの人生を肯定する存在)

  

今回はそんな末人について、“ツァラトゥストラはこう言った”から引用しながらまとめていきます。

  

  

  

末人とニヒリズム

(前回からの続き…。)

  

ツァラトゥストラがいくら人間が目指すべき存在(超人)について語っても、民衆は見向きもしません

   

超人についての理解が得られないと分かった彼は、今度は“末人”について語りはじめます。

 

ツァラ「見よ。わたしは諸君にこの末人(最後の人間)を示そう。」

  

ツァラ「彼らは生きるに苦しい土地を見捨てる。温もりが要るから。やはり隣人を愛し、その身をこすりつける。温もりがいるから・・・。」

  

末人とは、今の状況に甘んじて行動を起こさず、不平不満を口にしながらのらりくらりと生きている人間のことを言っています。

 

彼らは貧しくも富んでもいません

  

彼らは人を疑うことをしなくなり、健康に気を遣い長く命をつなぎ、他人との摩擦を起こさないように生きます

 

そのくせ時々の快楽を求め少量の毒を喰らうことはためらいません。

  

やがて彼らは口にします。

  

「どうせ何をやっても意味がない。」

  

目指すものを失い、

自分の存在も含めこの世に価値を見い出せなくなるニヒリズム(虚無主義)

に陥ります。

 

これは末人だからなるというだけでなく、今まで信仰していたもの(神など)が存在しないことに気づいたときや、自分という存在が何かの替わりに過ぎないということに気づいたときなどにも現れます。

  

ニーチェはツァラトゥストラの口を通して、

「ニヒリズムにとらわれてはいけない。超人になれ。」

と伝えているのです。

 

そんなことを話していると民衆の中から野次が飛ばされます。

   

民衆「綱渡りの前口上が終わったようだ、さてその超人技とやらを見せてもらおうじゃないか。」

  

すると待機していた綱渡り師がそれに気づいたのか、綱を渡りはじめます。

 

やっとはじまった大道芸に民衆から歓声が上がります。

  

考えることを放棄した民衆には、ツァラトゥストラの話など少しも入っていなかったのです。

 

  

生を貪る時代

この後、道化師姿の人物が邪魔をしたせいで、綱渡り師の芸が失敗したりと物語に続きがありますが、一旦ここで話は区切らせてもらいます。

 

ニーチェが末人思想に至ったのは、彼の境遇もさることながら、当時の時代背景も大きく影響しているよう感じます。

 

産業革命後の人々の生活は、人間が組織の歯車となって働く時代でした。

 

誰かがいなくなってもその替わりはいくらでもいる

 

短い期間とはいえ戦争を経験した彼にとって、人がいなくなったら誰かを補充するという人間が代替品になる姿は、目で見て肌で感じていたことでしょう。

  

 

だから、ただ命が尽きるまで生を貪るような生き方は駄目だと言っているのです。

 

では末人になったらもうお終いなのでしょうか?

  

答えはNoです。

  

彼は著書の中でこんなことも伝えています。

  

「君は、みずから自身の炎で、自分自身を焼こうとせざるを得なくなる。
一度でも灰になることなくして、どうやって新たに蘇ることができるというのか。」

  

いずれ自分自身と向かうときが来る。

  

そのときに、自分としっかり向き合えない人間が、今の自分を超えることなどできない。

 

…というメッセージ強く込められています。

  

たとえ今が末人であったとしても、今の自分の価値観を壊してでも前に進む意志があれば、それはもう末人ではないということですね。

 

  

この末人という考え方は今の時代でも変わりません。

 

やりたくもない仕事に追われ、やりたいこともやらずにダラダラと時間を潰す

 

何か悪いことがあったら他人や環境のせいにして愚痴を吐く。

  

お金持ちや有名人を見れば、人間としての粗が無いかと躍起になる。

 

休みの日となると、自分や他人を高めることもしなければ何の価値も創造しないで、スマホやテレビの画面とにらめっこ。



 

もちろん皆がそうではありませんが、ただ生を貪るだけの人間っていますよね。

  

まるでニーチェは今の時代を予見するかのように、超人や末人について語っていたのです。

 

  

人生は繰り返す?(次回予告)

もしあなたが末人だったとして、同じ人生を繰り返すとしたらどう思いますか…?

 

嫌なことも良いことも含めて同じ人生が巡ってくるとしたら…。

  

中にはも受け入れられない人もいるかもしれません。

  

ではどうしたら受け入れられるようになるのか…。

  

次回の記事にて、ニーチェの思想“永劫回帰”に触れていきます。

  

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