の続き…。
見えない使用人
山頂にいたプシュケを連れ去った西風の神ゼピュロス。
次に彼女が気を取り戻したとき、深い森の中にある豪華な屋敷を目の前にしていました。
屋敷に入ると、どこからか声がします。
「この屋敷はあなたとあなたの夫のものです。何なりとお申し付けください。」
姿の見えない給仕たちによって、食事から入浴まで身の回りの世話を済ませてくれます。
状況が分からないプシュケでしたが、山を登った疲れもありその晩は屋敷の寝室で寝ることにしました。
見えない夫
残してきた家族が心配…。
寝室で寝ていたプシュケですが、真っ暗な部屋に誰かが入ってきます。
誰かはこう言います。
「私はあなたの夫です。どうか怖がらずに私を愛してください。」
姿の見えない夫はそれから毎晩プシュケのもとに赴き、優しい言葉をかけてくれました。
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何一つ不自由の無い宮殿での生活にプシュケはとても居心地のいい思いでした。
しかし時おり家族のことを思い出します。
ある夜、彼女は夫にこう言いました。
「残してきた家族が心配です。一度家族と会わせてくれませんか?」
夫は少し考えたあと、妻であるプシュケの初めてのわがままを了解。
しかし、全員ではなく二人の姉とだけ会うこと許します。
姉のアドバイス
次の日になると、プシュケが屋敷に来たときのようにゼピュロスの風に乗って二人の姉がやってきました。
姉たちはプシュケが住む屋敷を見て驚きを隠せませんでした。
同時に、プシュケに対する嫉妬心も生まれてしまいます。
姉たちは聞きます。
「夫はどんな奴なんだい?」
プシュケは、夫は優しいけど一度も顔を見たことがないことを話します。
そんなプシュケに姉たちはこうアドバイスします。
「人間でないものと結婚しているんだ、夜に明かりで持って姿を確かめなさい。もし大蛇の怪物だったらその首を切ってしまいなさい。」
(大蛇=人を騙す悪魔の例え。)
そう言いながら彼女にランプとナイフを渡しました。
夫の正体
姉たちが帰ったあと、そんなはずはないと思いながらも、姉の言葉に不安を覚えたプシュケ。
その日の夜はランプとナイフを寝室に忍ばせ、夫が寝静まるのを待ちました。
そして遂に、ランプに明かりを灯し、夫の姿をみてしまいました。
そこには人を騙すような怪物とは程遠い、身体も容姿も美しい神(クピド)の姿がありました。
見られた事に気づいたクピドは初めて怒りをあらわにします。
「私を疑ったのか!!私との約束ではなく、姉の囁きを信じたのか!!」
そう言うとクピドは美しい羽を広げて飛び去ってしまいました。
続く…。
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