の続き…。
受け入れてもらえないヘラクレス
全ての試練を乗り越えたヘラクレス。
ヘラの策略ではありながらも、自らの子を殺した罪は償われ、自ら追放を決意した国テバイへ戻ります。
故郷に帰り一息ついたヘラクレス。
ヒュドラ退治やアマゾン遠征など、今までずっと試練をサポートしてくれたイオラオスに、自分の妻であるメガラを与えました。
しかし、子殺しとして知られているヘラクレスは、テバイの人々に受け入れてもらうことはできませんでした。
結局彼は町を離れ、あてのない旅に出ます。
ケンタウロス族のネッソス
そんな旅の途中、流れが強く渡ることができない川の前で立ち往生をしていたヘラクレス。
彼の横には、旅の途中で結ばれた妻ディアネイラもいます。
川をどう渡ろうかと考えていたところに、ケンタウロス族のネッソスが現れました。
「これはヘラクレスではないか!この川を渡るのであれば、私が手伝ってあげましょう。」
これは渡りに船だと、ヘラクレスもありがたくこの申し出を受け入れました。
先ずは妻のディアネイラから…、と彼女を背に乗せ簡単に川を渡っていきました。
しかしネッソスはそのまま全速力で走り去ろうとします。
ディアネイラに一目惚れをし、自分のものにしようとしたのです。
川を渡る準備をしていたヘラクレスは、妻の悲鳴に気づきました。
その瞬間、持っていた弓矢でネッソスを射ます。
いつも通り、その矢にはヒュドラの毒が塗ってあり、ネッソスは苦しみにのたうち回っています。
死の間際ネッソスは、
「信じてくれないだろうが、死ぬ前の罪滅ぼしだと思って聞いてくれ…」
「もしヘラクレスが君から心が離れそうになった時、私の傷口から出た血を飲ませると良い。彼の心を取り戻せるだろう…。」
っと良い息絶えていきました。
ディアネイラもこれを信じることはありませんでしたが、万が一のためにネッソスの傷口から出る血を布に染み込ませ懐に隠しました。
ヘラクレスを襲うヒュドラの毒
旅も終わり、何もかもが順風満帆に思えたヘラクレスとディアネイラ。
しかし、ヘラクレスがある国(オイカリア)の王女を手に入れようとしたことを不安に思ったディアネイラ。
ネッソスの血をヘラクレスの下着に染み込ませ、そのことを隠していしました。
…ある日、ヘラクレスの悲鳴が街中に響きます。
驚いたディアネイラや町の者たちが様子を見に来ると、ヘラクレスの下半身が溶け始めているのです。
ネッソスはヒュドラの毒で死にました。ネッソス傷口から出た血も、またヒュドラの毒が残っていました。
ディアネイラはそんな毒のある血が付着した下着を、ヘラクレスに身に付けさせてしまったのです。
神格されるヘラクレス
ヘラクレスは不死ですが、ヒュドラの毒は不治の猛毒。
かつてのケンタウロス族の賢者ケイロンのように、永遠に苦しみ続けることになります。
この地獄から逃れるためには、神々に死を捧げるしかありません。
かつての旅をした仲間や冒険で親しくなった者たちの手を借り、早急に火葬されることになります。
皆に見守られる中ヘラクレスは、この命を捧げると神に誓い、薪に火が着けられます。
その瞬間、ゼウスの雷鳴が世界中に轟き、彼の身体は魂ごと天へと召されていきました。
完全な神ではなく半神半人であるヘラクレスは、死後冥界に行く予定でした。
しかし、ヘラの策略から始まった十二の試練を乗り越えたヘラクレスは、最高神ゼウスによって神の座に座る事を許されました。
こうしてヘラクレス(アルケイデス)はその名の通り、神(ヘラ)の試練を乗り越え、栄光(クレス)を手にしたのです。
【完】
後日談
●神ヘラ
ヘラは今までの所業がゼウスにバレ、それを乗り越えたヘラクレスを認めざるを得なくなり和解しました。
●ディアネイラ
ヘラクレスの妻であったディアネイラは、自分がしてしまったことを悔いて自殺してしまいます。
●ヘラクレスの子どもたち
しかし、ヘラクレスとディアネイラの間に生まれた子どもたちはヘラクレダイと呼ばれ、新たな物語を紡いでいきます。
●エウリュステウス
ヘラクレスを恐れ嫌悪していたミュケナイ王のエウリュステウスは、ヘラクレダイたちの迫害を始め、後に敵として登場します。
●イオラオス
ヒュドラ退治でも活躍したヘラクレスの理解者であるイオラオスも、ヘラクレダイの物語で活躍します。
つまり、ヘラクレスの死によってまた新たな物語が始まっていきますが、それはまた別機会に紹介します。
それでは、またいつか別の神話でお会いしましょう。
コメント